[e176]ソフトウェア(プログラム)の侵害性

ところで,プログラムは,その性質上,表現する記号が制約され,言語体系が厳格であり,また,電子計算機を少しでも経済的,効率的に機能させようとすると,指令の組合せの選択が限定されるため,プログラムにおける具体的記述が相互に類似することが少なくない。仮に,プログラムの具体的記述が,誰が作成してもほぼ同一になるもの,簡単な内容をごく短い表記法によって記述したもの又は極くありふれたものである場合においても,これを著作権法上の保護の対象になるとすると,電子計算機の広範な利用等を妨げ,社会生活や経済活動に多大の支障を来す結果となる。また,著作権法は,プログラムの具体的表現を保護するものであって,機能やアイデアを保護するものではないところ,特定の機能を果たすプログラムの具体的記述が,極くありふれたものである場合に,これを保護の対象になるとすると,結果的には,機能やアイデアそのものを保護,独占させることになる。したがって,電子計算機に対する指令の組合せであるプログラムの具体的表記が,このような記述からなる場合は,作成者の個性が発揮されていないものとして,創作性がないというべきである。
さらに,プログラム相互の同一性等を検討する際にも,プログラム表現には上記のような特性が存在することを考慮するならば,プログラムの具体的記述の中で,創作性が認められる部分を対比することにより,実質的に同一であるか否か,あるいは,創作的な特徴部分を直接感得することができるか否かの観点から判断すべきであって,単にプログラムの全体の手順や構成が類似しているか否かという観点から判断すべきではない。
平成15年01月31日東京地方裁判所[平成13(ワ)17306]≫

著作権法が保護の対象とする「著作物」であるというためには,「思想又は感情を創作的に表現したもの」であることが必要である(同法2条1項1号)。思想又は感情や,思想又は感情を表現する際の手法やアイデア自体は,保護の対象とならない。例えば,プログラムにおいて,コンピュータにどのような処理をさせ,どのような指令(又はその組合せ)の方法を採用するかなどの工夫それ自体は,アイデアであり,著作権法における保護の対象とはならない。
また,思想又は感情を「創作的に」表現したというためには,当該表現が,厳密な意味で独創性のあることを要しないが,作成者の何らかの個性が発揮されたものであることが必要である。この理は,プログラムについても異なることはなく,プログラムにおける「創作性」が認められるためには,プログラムの具体的記述に作成者の何らかの個性が発揮されていることを要すると解すべきである。もっとも,プログラムは,「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」(同法2条1項10号の2)であり,コンピュータに対する指令の組合せという性質上,表現する記号や言語体系に制約があり,かつ,コンピュータを経済的,効率的に機能させようとすると,指令の組合せの選択が限定されるため,プログラムにおける具体的記述が相互に類似せざるを得ず,作成者の個性を発揮する選択の幅が制約される場合があり得る。プログラムの具体的表現がこのような記述からなる場合は,作成者の個性が発揮されていない,ありふれた表現として,創作性が否定される。また,著作物を作成するために用いるプログラム言語,規約,解法には,著作権法による保護は及ばず(同法10条3項),一般的でないプログラム言語を使用していることをもって,直ちに創作性を肯定することはできない。
さらに,後に作成されたプログラムが先に作成されたプログラムに係る複製権ないし翻案権侵害に当たるか否かを判断するに当たっては,プログラムに上記のような制約が存在することから,プログラムの具体的記述の中で,創作性が認められる部分を対比し,創作性のある表現における同一性があるか否か,あるいは,表現上の創作的な特徴部分を直接感得できるか否かの観点から判断すべきであり,単にプログラム全体の手順や構成が類似しているか否かという観点から判断すべきではない。
平成23年02月28日知的財産高等裁判所[平成22(ネ)10051]

控訴人は、被控訴人商品一は控訴人商品五のソフトウェアプログラムを、被控訴人商品二は控訴人商品五のソフトウェアプログラムを、それぞれ使用しているから、著作権侵害であると主張し、①控訴人商品一と控訴人商品五の類似点として、液晶表示方法、基本回路、CPUの型番・回路、特殊演算方法、ローカライザー等を、②被控訴人商品一と控訴人商品五の類似点として、操作方法、電気仕様、表示方法、受信して演算して表示するという基本構想を、③被控訴人商品二と控訴人商品五の類似点として、操作方法及び表示方法を、それぞれ挙げている。
しかしながら、仮に、上記諸点において各商品が同一ないし類似する事実を認めることができたとしても、これらはいずれも一般的な機能やアイデアそのものであるから、これらの類似をもって直ちに著作権侵害を肯認することはできない。
平成15年10月21日東京高等裁判所[平成15(ネ)1010]

プログラムの著作物は、プログラムの創作性ある「表現」について著作権法上の保護が及び、「表現」されたものの背後にある原理、アイデア等についてはその保護が及ぶものではないと解される。
原告は、原告ソフトと被告ソフトとが類似することの根拠として、
①条件値のチェック方法、②仕様書(金抜き設計書)の出力禁止情報の制御方法、③既定値の表記及び処理内容,④計算補正区分及び⑤諸雑費及び小計を計算するためのデータの与え方を指摘するが,既定値の表記及び計算補正区分に関する主張事項を除けば、いずれもプログラムの表現上の類似点ではなく、アイデアに属する部分の類似点であるというべきである。
平成14年04月23日大阪地方裁判所[平成11(ワ)12875]

原告ソフトウェアのプログラムが本件ソフトウェアのプログラムの複製又は翻案に当たるかどうかを判断するに当たっては,まず,本件ソフトウェアのプログラムの具体的記述における表現上の創作性を有する部分と原告ソフトウェアのプログラムの具体的記述とを対比し,原告ソフトウェアのプログラムの具体的記述から本件ソフトウェアのプログラムの表現上の本質的な特徴を直接感得することができるかどうかを検討する必要があるというべきである。
平成24年12月18日東京地方裁判所[平成24(ワ)5771]

原告ソフトウェアの45個のファイル中,43個のファイル名につき,被告ソフトウェアに同一のファイル名のものが存在すること,被告ソフトウェアのソースコードには,原告ソフトウェアの機能を変更し,又は新たな機能を付加したもの等に関し,原告ソフトウェアのソースコードに新たに付加した部分又はこれを変更した部分があるものの,その余の部分については,原告ソフトウェアのソースコードと同一又は類似していることが,それぞれ認められる。
したがって,被告ソフトウェアのプログラムは,原告ソフトウェアのプログラムに依拠して作成されたものであり,かつ,実質的にこれと同一のものであると認められるから,原告の原告ソフトウェアのプログラムについての著作権(複製権)を侵害するものであると認められる。
平成21年11月09日東京地方裁判所[平成20(ワ)21090]

MainForm.csの原告ソースコードとMainForm.csの被告ソースコードとは,開発ツールによって自動生成されたことが明らかな部分を除いた約300に及ぶ関数(被告ソースコードでは321,原告ソースコードでは298)のうち,103の関数においては全く同一の記述内容であり,148の関数においては関数等の名称に相違が見られるものの,当該関数内に記述された処理手順は同一であり,47の関数においてはソースコードの記述に一部相違が見られるものの,処理手順等に大きな相違はないのであって,他方,両者で全く異なる表現といえる部分が,23の関数において見られるが,その量的な割合は,約300の関数に係るソースコードのうちの約5パーセントにとどまるものということができる。
(略)
以上によれば,原告プログラムと被告プログラムとは,そのソースコードの記述内容の大部分を共通にするものであり,両者の間には,プログラムとしての表現において,実質的な同一性ないし類似性が認められるものといえる。
平成23年01月28日東京地方裁判所[平成20(ワ)11762]

被告プログラムのうち36個のファイルが原告プログラムの35個のファイルとほぼ1対1で対応し,かつ,被告プログラムの上記36個のファイルにおけるソースコードが原告プログラムの35個のファイルにおけるソースコードと,記述内容の大部分において同一又は実質的に同一である。このように,測量業務に必要な機能を抽出・分類し,これをファイル形式に区分して,関連付け,使用する関数を選択し,各ファイルにおいてサブルーチン化する処理機能を選択し,共通処理のためのソースコードを作成し,また,各ファイルにおいてデータベースに構造化して格納するデータを選択するなど,原告プログラムのうち作成者の個性が現れている多くの部分において,被告プログラムのソースコードは原告プログラムのソースコードと同一又は実質的に同一であり,被告プログラムは原告プログラムとその表現が同一ないし実質的に同一であるか,又は表現の本質的な特徴を直接感得できるものといえる。
平成24年01月31日 知的財産高等裁判所[平成23(ネ)10041]

必殺パチンココンストラクションにおける画面表示と実践パチンココンストラクションにおける画面表示との間には,上記に記載したとおり,ある程度の類似性は認められるものであるが,そのような画面を表示するためのプログラム上,必殺パチンココンストラクションにおいて従来のコンピュータソフトに見られないような独自の創作性が存在する旨の主張立証は何らされていないから,表示画面の類似性を理由として,プログラム著作物としての必殺パチンココンストラクションの著作権を実践パチンココンストラクションが侵害しているということはできない。また,サン電子は,必殺パチンココンストラクションと実践パチンココンストラクションとの間では同じファイル名のファイルが存在することを指摘した上で,同じ機能内容のファイルでもファイル名は任意に変えられるところ,それにもかかわらず,同じファイル名が存在するのは,実践パチンココンストラクションが必殺パチンココンストラクションα版のファイルを流用したことの証左であり,著作権侵害の事実が認められると主張する。しかしながら,実行ファイル名の一部が共通していることは依拠の点を推認させる事実ではあり得ても,そのことから直ちにプログラム著作権の侵害を認めることはできない。すなわち,共通する実行ファイルが存在したとしても,当該ファイルが従来のコンピュータソフトに使用されていなかったものであり,当該ファイルの組み合わせに従来のプログラムにない創作性が認められるのでなければ,プログラム著作権の侵害ということはできない。
平成14年07月25日東京地方裁判所[平成11(ワ)18934]

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