[e179]準拠法

【差止請求の準拠法】

著作権に基づく差止請求は,著作権の排他的効力に基づく,著作権を保全するための救済方法というべきであるから,その法律関係の性質を著作権を保全するための救済方法と決定すべきである。著作権を保全するための救済方法の準拠法に関しては,ベルヌ条約5条(2)により,保護が要求される国の法令の定めるところによると解するのが相当である。本件において保護が要求される国は,我が国であり,上記差止請求については,我が国の法律を準拠法とすべきである。
平成16年05月31日東京地方裁判所[平成14(ワ)26832]≫

著作者の死後における人格的利益の保護のための差止請求及び謝罪広告請求は,著作者の人格的利益すなわち著作者の権利を保全するための救済方法というべきであるから,その法律関係の性質を著作者の権利を保全するための救済方法と決定すべきである。著作者の権利を保全するための救済方法の準拠法に関しては,ベルヌ条約6条の2(3)により,保護が要求される国の法令の定めるところによると解するのが相当である。本件において保護が要求される国は,我が国であり,上記差止請求及び謝罪広告請求については,我が国の法律を準拠法とすべきである。なお,ベルヌ条約6条の2(2)により,上記請求権を行使すべき者も,保護が要求される国である我が国の法律によって定められる
平成16年05月31日東京地方裁判所[平成14(ワ)26832]≫

控訴人輸出入社の差止請求は,同控訴人が北朝鮮の法人であり,また,北朝鮮の著作物についての著作権に基づく請求であるという点で,渉外的要素を含むものであるから,準拠法を決定する必要がある。
我が国が加入しているベルヌ条約
5条(2)第3文は,「したがつて,保護の範囲及び著作者の権利を保全するため著作者に保障される救済の方法は,この条約の規定によるほか,専ら,保護が要求される同盟国の法令の定めるところによる。」と規定しているところ,この規定は,著作権の「保護の範囲」及び「著作者の権利を保全するため著作者に保障される救済の方法」という単位法律関係について,「保護が要求される同盟国の法令の定めるところによる」という準拠法を定める抵触規則であると解される。そして,著作権に基づく差止請求の問題は,「著作者の権利を保全するため著作者に保障される救済の方法」であると性質決定することができるから,ベルヌ条約によって保護される著作物の著作権に基づく差止請求は,同条約5条(2)により,保護が要求される同盟国の法令,すなわち同国の著作権法が準拠法となる。もっとも,本件においては,北朝鮮の著作物が我が国との関係でベルヌ条約3条(1)(a)によって保護される著作物に当たるか否かが争われており,このような場合にベルヌ条約5条(2)の抵触規則を適用して準拠法を決定することができるのかどうかが問題となり得るところである。しかしながら,ベルヌ条約の加盟国数は,平成20年10月現在,全世界163か国にも及んでおり,我が国とこれら多くの加盟国との間においては,著作権に基づく差止請求という法律関係については同条約5条(2)の定める抵触規則が適用されること,この抵触規則は,世界の多くの加盟国において適用される国際私法の規則となっていること,及び著作権の属地的な性質からすれば,保護が要求される国の法令を準拠法とすることに合理性があること等に鑑みれば,ベルヌ条約で保護されない著作物についても,上記抵触規則を適用ないし類推適用して保護が要求される国の法令を準拠法と指定することが相当である。
したがって,ベルヌ条約によって保護される著作物に当たるかどうかが争われている北朝鮮の著作物に係る著作権に基づく差止請求についても,ベルヌ条約5条(2)の定める抵触規則が適用ないし類推適用されるから,控訴人輸出入社の差止請求については,我が国の著作権法が適用されると解すべきである。
平成20年12月24日知的財産高等裁判所[平成20(ネ)10012]≫

【損害賠償請求の準拠法】

著作権侵害を理由とする損害賠償請求の法律関係の性質は,不法行為であり,その準拠法については,法例11条1項によるべきである。上記損害賠償請求について,法例11条1項にいう「原因タル事実ノ発生シタル地」は,被告小説の印刷及び頒布行為が行われたのが我が国であること並びに我が国における著作権の侵害による損害が問題とされていることに照らし,我が国と解すべきである。よって,同請求については,我が国の法律を準拠法とすべきである。
平成16年05月31日東京地方裁判所[平成14(ワ)26832]≫

著作者人格権侵害を理由とする損害賠償請求の法律関係の性質は,不法行為であり,その準拠法については,法例11条1項によるべきである。上記損害賠償請求について,法例11条1項にいう「原因タル事実ノ発生シタル地」は,被告小説の印刷及び頒布行為が行われたのが我が国であること並びに我が国における著作者人格権の侵害が問題とされていることに照らし,我が国と解すべきである。よって,同請求については,我が国の法律を準拠法とすべきである。
平成16年05月31日東京地方裁判所[平成14(ワ)26832]≫

控訴人会社は日本法人であり,控訴人会社サイトは日本語で記述され,本件クライアントソフトも日本語で記述されていることからは,本件サービスによるファイルの送受信のほとんど大部分は日本国内で行われていると認められる。控訴人会社サーバがカナダに存在するとしても,本件サービスに関するその稼動・停止等は控訴人会社が決定できるものである。以上からすると,控訴人会社サーバが日本国内にはないとしても,本件サービスにおける著作権侵害行為は,実質的に日本国内で行われたものということができる。そして,被侵害権利も日本の著作権法に基づくものである。
上記の事実からすれば,本件においては,条理(差止請求の関係)ないし法例
11条1項(不法行為の関係)により,日本法が適用されるものというべきである。
平成17年03月31日東京高等裁判所[平成16(ネ)405]
【コメント】
本件で問題となった「本件サービス」とは、控訴人会社が所定のカナダ法人と提携することにより、利用者のパソコン間でデータを送受信させるピア・ツー・ピア技術を用いて、カナダ国内に中央サーバ(「控訴人会社サーバ」)を設置し、インターネットを経由して控訴人会社サーバに接続されている不特定多数の利用者のパソコンに蔵置されている電子ファイルの中から、同時に控訴人会社サーバにパソコンを接続させている他の利用者が好みの電子ファイルを選択して、無料でダウンロードできるサービスのことです。

著作権侵害に基づく損害賠償請求の性質は,不法行為であると解されるから,通則法附則3条4項により,同法の施行日(平成19年1月1日)前に加害行為の結果が発生した不法行為によって生ずる債権については法例11条1項により「原因タル事実ノ発生シタル地」の法律が,通則法の施行日以後に加害行為の結果が発生した不法行為によって生ずる債権については通則法17条【注:「不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は、加害行為の結果が発生した地の法による。ただし、その地における結果の発生が通常予見することのできないものであったときは、加害行為が行われた地の法による。」と規定する】により「加害行為の結果が発生した地」の法律が,それぞれ準拠法となる。
そして,本件において,原告が著作権侵害であると主張する行為は,原告設計図1及び2から被告各商品を製造する行為であるところ,前記のとおり,当該行為は台湾で行われていることからすれば,「原因タル事実ノ発生シタル地」(法例11条1項)及び「加害行為の結果が発生した地」(通則法17条)ともに台湾であると認められ,台湾法が準拠法となると解される。
平成23年03月02日東京地方裁判所[平成19(ワ)31965]

原告は中華人民共和国法人であり,被告は日本法人であるから,準拠法が問題となるところ,著作権侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求については,本件において,原告が本件各原版の複製権又は翻案権が侵害され,被告各DVDが販売されたと主張するのは我が国であるから,「原因タル事実ノ発生シタル地」(法例〔平成11年法律第151号による改正後のもの。以下同じ。〕11条1項),「加害行為の結果が発生した地」又は「加害行為が行われた地」(法の適用に関する通則法17条〔平成19年1月1日施行〕,同法附則3条4項参照)として,日本法が準拠法となる
平成23年07月11日東京地方裁判所[平成21(ワ)10932]

【不当利得返還請求の準拠法】

不当利得返還請求については,本件において,原告が被告により本件各原版が複製され,被告各DVDが販売されたと主張するのは我が国であるから,『その原因となる事実が発生した地』(法の適用に関する通則法14条【注:「事務管理又は不当利得によって生ずる債権の成立及び効力は、その原因となる事実が発生した地の法による。」と規定する】)として,日本法が準拠法となる。
平成24年02月28日知的財産高等裁判所[平成23(ネ)10047]

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