[e181]過失責任論<音楽出版社・芸能プロダクション>

前記認定のとおり,被告(D1)は,年間約4000曲以上の曲を制作し,400タイトル以上のアルバムを発売している大手レコード会社であり,また,被告(D2)は,大手音楽出版社の中でもトップクラスの会社であって,いずれもその社員に著作権に関する研修等を多く行っている。このように,被告らは,音楽を市場に供給することを業とする会社であり,その社員も含め音楽業界の専門の団体であるということができ,音楽の著作物について,著作権侵害か否かを調査する能力も経済力も有しているというべきである。したがって,被告らは,本件アルバムないしその原盤の制作にあたり,アルバム内の楽曲が他人の楽曲の著作権を侵害するものでないことを調査し,確認すべき注意義務がある。
前記認定のとおり,甲曲は,昭和41年から,コマーシャルソングとしてばかりではなく,長く歌い継がれてきた大衆歌謡ないし唱歌として著名な楽曲であり,被告らの担当者らも,甲曲のことはよく認識していた。しかし,被告らの担当者は,制作過程において,誰も乙曲と甲曲の類似性に思い至らず,その結果,乙曲と甲曲の比較検討はされず,被告(D1)の編成会議や法務部,被告(D2)の制作会議で問題にされることもなく,乙曲の著作権侵害については,何の検討もされず,何ら事前の対策もとることなく,本件アルバムの原盤の制作に至ったものである。すなわち,被告らは,本件アルバムの原盤の制作にあたり,乙曲の著作権侵害の有無について,調査確認の義務があったにもかかわらず,具体的な調査も確認も行っておらず,これを尽くせば侵害行為を回避することが可能であったのであるから,前記注意義務を怠ったものというべきである。
また,被告(D2)は,JASRACに乙曲の著作権を信託譲渡して管理を委託すれば,第三者に広く乙曲を利用されるようになるのであるから,他人の楽曲の著作権を侵害する曲を管理委託することのないようにすべき注意義務があるにもかかわらず,同被告は,これを怠り,漫然とJASRACに管理を委託した。
さらに,別件訴訟が提起された後は,これが大きく報道され,また被告らは原告及び補助参加人から訴訟告知を受けていたのであるから,乙曲が甲曲の編曲権を侵害するか否かについて更に慎重に検討し,被告(D1)は,本件アルバムの販売を停止し,被告(D2)は,JASRACに対する乙曲の管理委託を取り下げ,第三者による利用がされないようにする措置を執るなど,損害が拡大しないような対策をとることが可能であったのにもかかわらず,これを怠った。
以上のとおり,被告らには過失がある。
平成15年12月19日東京地方裁判所[平成13(ワ)3851]

本件において,被告会社は,芸能プロダクションであるから,他人の著作物を利用する際には,その著作権及び著作者人格権を侵害することのないよう,その著作権及び著作者人格権の帰属を調査の上,事前に,演奏することや公衆送信が可能な状態に置くこと,(原)著作者名を表示すること,表題や歌詞を改変すること等について許諾を得るよう注意を尽くす義務があるところ,被告会社代表者は,中目黒のダーツバーにおいて原告及びEと協議した際,本件著作物の著作権及び著作者人格権の帰属について,歌詞は原告が著作者であることを認識し,楽曲については,原告及びEが作曲の経緯について話していたにもかかわらず,著作権等の権利の帰属について十分に聴取等しなかったものであり,また,本件著作物については,エイズチャリティコンサートのエンディングにおいて,メロディラインのない伴奏部分のみを使用することの許諾を得ただけであったにもかかわらず,包括的な許諾を得たものと軽信し,漫然と本件著作物を使用して,(上記)の各行為に及んだのであるから,被告会社には,少なくとも過失があったというべきである。
また,被告
Bについては,被告会社に所属する歌手であるとともに,被告Bの名義による被告ブログの管理に関与していたものであり,被告会社の役員として,自らが使用する他人の著作物について,被告会社が負う上記注意義務に関して,被告会社代表者が行う業務執行一般について監視する義務を負うものと解されるところ,被告Bは,被告会社が本件著作物の音源の複製物,歌詞及び伴奏の譜面等の提供を受けたことのみから,許諾を得たものと軽信し,本件著作物を使用して,(上記)の各行為に関与したものであるから,被告Bにおいても,少なくとも過失があったと認めるのが相当である。
平成23年06月29日東京地方裁判所[平成22(ワ)16472]

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