[e182]過失責任論<エイジェンシー業者(著作物管理業者)>

控訴人(A1)は、イラストレーターからの委託に基き、料金をとってイラスト作品を顧客に貸し出すことを業として行っているものであり、控訴人(A2)は、控訴人(A1)の代理店としてイラスト作品貸出しに係る代理店業務を行っているものであるから、両者は、協力して、その管理するイラストに係る権利について善良なる管理者の注意をもって事務処理をすべき義務を負っているものと解され、顧客から、その管理するイラストであって、本件著作物のように利用申込みの都度イラストレーターにより貸出しの可否の判断がなされることにされているもの(「扱いC」のもの)につき改変利用の希望があり、これをイラストレーターに取り次ぐ場合には、顧客の希望する改変の内容、方法、範囲について正確に把握し、これを、誤解の生じないように正確にイラストレーターに伝えて承諾の可否について打診し、イラストレーターが了解を与えた場合には、その内容を誤解の生じないような形で正確に顧客に伝えることにより、顧客による著作者人格権等の侵害が発生することのないよう細心の注意を払うべき義務があったものと解すべきである。
ところが、前記認定のとおり、控訴人
(A2)は、アド・エヌから、本件著作物の使用目的、本件著作物をコンピュータで合成処理したいという希望、そのためイラストの一部を切除したいとの希望、具体的な合成の方法等を聴取しておきながら、本件打診書の欄外に、本件著作物を模したイラストを描き、その内の翼竜に対応した部分に丸印を付け、そこから引かれた矢印の先に「P.S.この飛んでいる恐竜を、つぶして使用したいとの事ですが、いかがなものでしょうか?(合成使用したい為)」と付記しただけで控訴人(A1)にこれを送ったのであるから、アド・エヌの希望する改変の内容、方法、範囲について、誤解の生じないように正確に被控訴人に伝えて承諾の可否について打診するための行動をとったとはいえず、かえって、アド・エヌの希望する改変が翼竜の切除と恐竜自体の改変を伴わない合成のみであるかのように誤解される状況を作り出しているのであり、また、被控訴人から、右付記に対する返答として、「翼竜をカットすることについて、異存はありません。」とだけ付記された本件承諾書の送付を受けたにもかかわらず、その内容を誤解の生じないような形で正確にアド・エヌに伝えず、被控訴人からアド・エヌの希望どおりの改変の承諾を得られたかのような連絡をしたのである。控訴人(A2)の右行為が前記義務に違反することは明らかというべきである。
また、控訴人
(A1)は、控訴人(A2)から受け取った本件打診書の記載内容が、翼竜の切除が顧客の希望に入ることについては誤解のおそれはないものの、その理由として、「(合成使用したい為)」との文言も含んでいて、翼竜の切除以外の改変も予定されていることがうかがわれ、しかもその内容が必ずしも明確でないものであったにもかかわらず(「合成使用」の用語が、デジタルデータ化した上での組合わせ、変形、色変換の作業を指すものとしても使用されうることは、控訴人ら自身の主張するところである。)、控訴人(A2)及びアド・エヌに尋ねて詳細を確認することもせず、漫然と、被控訴人に送付し、被控訴人から「翼竜をカットすることについて、異存はありません。」とだけ付記された返答を受け取ったのにも、何らの確認行為もしないで漫然と控訴人(A2)にこれを送付したものである。控訴人アートバンクの右行為が前記義務に違反することは明らかというべきである。
以上のとおり、右に述べた控訴人らの行為は、いずれも、本件著作物に関して被控訴人が有する同一性保持権の侵害の発生を防止すべき義務に違反してなされたものであって、控訴人らのいずれにも過失があり、アド・エヌによる同一性保持権侵害行為(本件利用)がこれらがなければ発生しなかったことは明らかであるから、控訴人らの右各行為は、被控訴人の有する本件著作物に関する同一性物保持権を侵害する共同不法行為を構成するものである。
平成11年09月21日東京高等裁判所[平成10(ネ)5108等]

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