[e183]過失責任論<ゲームソフト開発の下請業者>

(被告の過失について)
被告は、ゲームソフト製作を業とする有限会社であり、日常的に、他人が作成したシナリオ、コンピュータグラフィック、音楽等の著作物を利用してソフトウエアを製作しているものであるから、これらの著作物の利用に当たっては、それが著作者人格権侵害とならないよう注意すべき義務があり、本件のように、シナリオ委託契約が原告とヴィジット【注:被告の使用者】との間で締結され、原・被告間に直接の契約関係が存在しない場合であっても、原告の作成に係るシナリオを改変するに当たっては、まずヴィジット又は原告に対し、契約中に開発者によるシナリオの改変を許す旨の約定があるか否かを確認し、そのような約定がない場合は、シナリオの著作者である原告に対し、改変の内容、方法、範囲等を明確にした上で、承諾を求めるべき義務を負っていたというべきである。
しかるに、被告は、ヴィジット又は原告に対し、本件契約の内容を確認することなく、本件契約中には、ソフト開発者側で原告の了解なくしてシナリオの改変を行うことができる旨の条項が存在しないことを看過して、原告に無断で本件改変を行い、これにより原告の同一性保持権の侵害を惹起したものであるから、被告には、この点について過失があり、本件改変により原告が被った損害を賠償する責任を負う。
(原告とヴィジットとの訴訟外の和解によって、被告は責任を免れるかについて)
被告は、本件改変について、原告と被告の使用者であるヴィジットとの間で訴訟外の和解が成立している以上、原告が被告に責任を追及することはできないと主張する。
ヴィジットは、被告の使用者として、被告がシナリオ、コンピュータグラフィック、音楽等の著作物を利用して本件ソフトを作成するに当たり、著作者人格権侵害を惹起しないよう指示、監督する義務を負っているにもかかわらず、被告に対する相当の監督を怠ったことにより、本件改変による著作者人格権侵害を発生させたものであるから、著作権法
20条1項、民法709条、715条に基づき、本件改変により原告に生じた損害を被告と連帯して賠償する責任を負うものといえる。
しかし、使用者責任が成立する場合であっても、被用者について不法行為の要件が充たされる以上、被害者が被用者を相手どって損害賠償請求を行うことを否定する理由はない。加えて、ヴィジットと原告の和解契約には、原告が別途被告に対して責任を追求することを妨げない旨の条項があることを考慮すれば、原告とヴィジットとの間の訴訟外の和解は、原告の被告に対する損害賠償請求権の行使に影響を与えるものではなく、原告がヴィジットから受領した和解金10万円のうち本件改変によって原告が被った損害に対する賠償の趣旨で支払われた分がその限度で損害のてん補と評価される(ただし、その額は明らかでない。)にとどまる。
平成13年08月30日大阪地方裁判所[平成12(ワ)10231]

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