[e187]口述権の射程範囲

原告は,被告らにおいて,平成13年度及び平成14年度の維持講習の際に,12年度資料を複製した13年度資料及び14年度資料を,原告の許諾なく使用し,不特定多数又は特定多数の公衆に対して口頭で伝達したものであり,原告の有する12年度資料を公に口述する権利を侵害した旨主張する。
しかし,維持講習の講習資料は,講演の内容を示し,解説しているものではあるが,その性質上,内容が朗読等によって口述されるものではないのであって,同資料をもとに講演をすることをもって,同資料を口述したということはできない。
平成18年02月27日東京地方裁判所[平成17(ワ)1720]

(2) 以上の事実を前提に,被告Bによる本件経文①ないし③の著作権(口述権)侵害の成否について検討する。
ア 著作者は,その言語の著作物を公に口述する権利を専有するところ(著作権法24条),「公に」とは,その著作物を,公衆に直接見せ又は聞かせることを目的とすることをいい(同法22条),「公衆」には,不特定の者のほか,特定かつ多数の者が含まれる(同法2条5項)。そして,当該著作物の利用が公衆に対するものであるか否かは,事前の人的結合関係の強弱に加え,著作物の種類・性質や利用態様等も考慮し,社会通念に従って判断するのが相当である。
イ そこで本件についてみると,被告Bが,「心検」の受講者等のうち,Eの勧めを受けて被告Bのもとを訪れた者の一部に対し,本件経文①ないし③を読み上げたことがあり(以下,本件経文①ないし③の読上げを「祈願」ということがある。),また,本件経文①ないし③を一人で又は被告Cとともに読み上げたことがあることは前記でみたとおりであるところ,上記行為は,いずれも,言語の著作物である本件経文①ないし③を口頭で伝達するものとして,「口述」(著作権法2条1項18号)に該当する。
ウ しかし,上記イの口述のうち,後者(被告Bのみ又は被告Cと2人による読上げ)については,自宅内において,被告Bのみで又はその妻である被告Cと二人で行われたものであるから,上記口述が,公衆に直接聞かせることを目的として行われたものとは認められない。
したがって,上記読上げが「公に」なされたものと認められない以上,上記読上げが,本件経文①ないし③に係る原告の口述権を侵害するものとは認められない。
エ 次に,上記イの口述のうち,前者(被告Bが,同被告のもとを訪れた者に対し,本件経文①ないし③を読み上げたこと)が,本件経文①ないし③を「公に」口述したものとして,口述権侵害を構成するか否かについて検討する。
(ア) 被告Bは,上記(1)のとおり祈願を行った人数について,Eから紹介を受けた5名のみであると述べている。他方,Eは,被告Bのもとを訪れて相談を受けるよう勧め,相談者からEが相談料金を受け取り,そこから紹介料を差し引いて被告Bに渡した人数につき,「心検」受講者について5名であり,それ以外に相談者が被告Bに直接相談料を支払った者が1名であるかのようにも受け取れる証言をしている。しかし,いずれにせよ,祈願を受けた人数は5,6名にとどまる。
原告は,この点について,被告Bが,多数の者を対象として本件経文の読み上げを行ったと主張し,原告信者らの陳述書を提出する。しかし,上記陳述書の作成者のうち,自らが被告Bの祈願を受けたとする者は降霊会等への参加者を含めて4名である。
以上によれば,被告Bが祈願を行った人数は5,6名にとどまるとみるべきであって,被告Bが多数人に対して祈願を行い,本件経文①ないし③を読み上げたものと認めることはできない。
(イ) この点に関し,原告は,上記読上げの時点における同席者が特定の少数人であったとしても,任意の条件の下に人数が増減する可能性があれば,不特定の者を対象にするものとして「公に」を充足するし,「公に」の要件が,排他的権利が及ぶ著作物の利用範囲を適切に画することにあるところから,当該行為が有償でなされたものであることは,私的領域の範囲を超えるものとして,「公に」の充足性についての重要な判断基準となると主張する。
しかし,上記陳述書において,被告Bの祈願を受けたとされる者は,いずれもEから心検の「課外授業」等として被告Bの紹介を受けた者か,被告Bの子の友人等,被告Bと個人的な関係のある者として記載されているのであって,被告Bが,このような範囲を超えた者に対し,本件経文の読み上げを行ったことを認めるに足りるものではない。そうすると,祈願の対象となった範囲の者は限定されているのであって,原告が主張するように任意の条件の下に人数が増減するような範囲の者ではないというべきである。
したがって,この点についての原告の主張を採用することはできない。
さらに,前記(1)のとおり,被告Bは,同被告のもとを訪れた者から金員を受け取っていたことが認められるが,Eによれば,上記金員は,相談料名目で支払われたものであり,祈願を行うか否かによってその金額が上下するものではないとされる上,被告Bは,上記のとおり,実際に1時間から2時間程度,相談者の話を聞くなどしていたというのであるから,上記金員は,来訪者の話を聞き,相談に乗ることなどの対価として支払われたものとみるべきであり,これを祈願の対価と評価することはできないものというべきである。
(略)
したがって,対価の受領を理由として「不特定」であるとする原告の主張も採用することはできない。
平成25年12月13日東京地方裁判所[平成24(ワ)24933等]

著作権判例エッセンス トップ 


     Kaneda Copyright Agency
     カネダ著作権事務所


      Home  メール相談  契約マネジメント  文化庁登録マネジメント  侵害対応マネジメントその他 
      アメリカ著作権局登録マネジメント