[e189]著作権譲渡契約の解除の効果

本件プログラムをめぐる契約関係【注:関係契約書には「本契約の失効後も、…第15条(発明考案)、第16条(著作権[契約に基づき開発されたソフトウェアの著作権は甲(被控訴人)に帰属する。])、・・・(の)規定は、尚その効力を有するものとする。」との条項があった】において,基本的には,控訴人による本件プログラムの開発期間中は,控訴人は,合意されたところに基づき,順次,プログラムを開発して,これを被控訴人に納入する義務を負うのに対し,被控訴人は,開発に応じて,合意された開発費の支払義務を負い,順次,納入されるプログラムの著作権等の権利を取得するという継続的な関係が存在し,プログラムの納入後は,控訴人には,製品の競争力維持のために特別な協力を行う義務が存在し,被控訴人には,「歩合開発費」の支払義務が存在するという継続的な関係があることが認められる。
上記継続的な関係においては,被控訴人が,順次,納入されたプログラムの権利を取得するものであるところ,その権利を基礎として,新たな法律関係が発生するものであるし,開発の受託者である控訴人も,委託者である被控訴人から指示されて被控訴人のために開発を行い,被控訴人に納入したプログラムについて,控訴人と被控訴人間の契約関係解消の場合,その開発作業の対価として受け取った金員の返還を想定しているとは考えられず,契約の性質及び当事者の合理的意思からも,本件における継続的な関係の解消は将来に向かってのみ効力を有すると解するのが相当である。(中略)
そうすると,控訴人による本件解除は,仮に,解除原因が存在し,解除の意思表示が有効であるとしても,遡及効はなく,将来に向かって効力を生じるものであると解されるのであって,そうとすれば,控訴人は,将来の競争力維持のための協力義務を免れるものの,本件解除によって,従前の法律関係を解消されるものではなく,被控訴人に帰属した権利が,控訴人に復帰するものではないと解するのが相当である。
平成18年08月31日知的財産高等裁判所[平成17(ネ)10070]≫

本件契約第10条【注:甲(被控訴人)が,前条の解約により本契約を終了させたときは,乙(控訴人)はそれまでに甲より受領した金員を甲に返還しなければならない。甲は,本契約を解約した場合においても,本契約によって取得した著作権,及び乙がそれまで取得した本件成果物の素材の所有権はすべて甲に独占的に帰属するものとする。】は,被控訴人による解約により契約が終了した場合には,被控訴人が控訴人に対して既払金の返還を求めることができるとする定めを置く一方で(同条①),本件契約によって控訴人から被控訴人が取得した著作権及び本件成果物の素材の所有権を失わないとする特則を規定しており(同条②),被控訴人に片面的に有利な規定となっている。
確かに,本件契約第9条(10)を除く同条の他の号を見ると,受託者が順調に受託業務を遂行していない場合や委託者に成果物の著作権等を取得させることが困難となった場合など(同条(1)~(3)),どちらか一方の金銭的信用力が極めて悪化した場合や破綻した場合など(同条(4)~(7)),受託者に著しい不行跡があった場合など(同条(8),(9))であり,このような場合に委託者が契約を解約したときには,委託者が既に支払済みの金銭を回収するとともに,責めのない委託者が将来的な著作権等の権利をめぐる紛争に巻き込まれる懸念をなくし,あるいは,契約違反をした受託者への制裁又は違反の予防として,受託者から委託者に納入された映像素材の著作権等の権利を引き続き委託者が保有し続けるとしてもやむを得ないものであり,契約当事者双方もそのように解釈して本件契約を締結したものと推認される。したがって,本件契約第10条は,そのような場合にはこれを全面的に適用しても必ずしも合理性に欠けるものではないといえ,言葉を換えれば,本件契約第10条に定める契約解約後の権利関係の調整規定が全面的に適用されるのは,そのような場合に限られると解される。しかしながら,逆に,本件契約第10条が念頭においていないような場合については,同条の定める契約解除後の権利関係の調整をそのまま適用する前提を欠くことになり,これを当事者間の利害調整や衡平の観点から適宜調整の上適用することが,本件契約の合理的解釈といえる。
(中略)以上の点を考慮すると,本件は,本件契約第10条が本来的に想定する事例とは異なるものであり,契約の合理的解釈として,同条②に基づく権利等の維持の効果を認める必要性は高く,その適用はあると解されるものの,同条①に基づく既払金の返還の効果は,これを認める必要性は低いだけでなく,その時機も逸していて殊更に大きな負担を控訴人に強いるのであるから,その適用はないと解するのが相当である。
そうすると,本件契約の解約の結果,被控訴人は,控訴人に対し,本件作品を返還する必要はなく,本件映像動画1及び本件映像動画2の著作権等の取得も継続されるが,既払金の返還を求めることはできないというべきである。
平成26年04月23日知的財産高等裁判所[平成25(ネ)10080]

本件著作権譲渡契約においては,「乙(判決注・被告)がこの契約の条項に違反した場合には,甲(判決注・著作権譲渡人。)は,20日間の期間を定めた文書により,契約上の義務履行を催告し,その期間内に履行されないときは,この契約を解除すること,…ができるものとします。」,「契約期間の満了または契約の解除によりこの契約が終了した場合には,本件著作権は,当然甲(判決注・著作権譲渡人)に帰属するものとします。」との旨が約定されていたこと,本件楽曲の各作詞・作曲者(GLAYメンバーら)は,原告エクストリーム,原告パイロッツ,原告スパイク又は原告ストローに対し,本件楽曲に係る著作権を譲渡する旨の合意をしたこと,原告エクストリーム,原告パイロッツ,原告スパイク及び原告ストローは,平成17年11月7日,原告ラバーソウルに対し,本件楽曲に係る著作権を譲渡する旨の合意をしたことが認められる。
(略)
上記によれば,本件著作権譲渡契約は,被告の著作権印税の支払債務の履行遅滞により有効に解除され,これにより,本件楽曲の著作権は,本件著作権譲渡契約における譲渡人(GLAYメンバーら)に帰属した上で,GLAYメンバーらから原告エクストリーム,原告パイロッツ,原告スパイク又は原告ストローに対し,次いで,同原告らから原告ラバーソウルに対し,順次譲渡されたのであるから,原告らの本訴請求のうち,原告らと被告との間で,原告ラバーソウルが本件楽曲の著作権を有することの確認を求める部分は理由がある。
平成21年10月22日東京地方裁判所[平成19(ワ)28131]

(1) 原告は,被告の債務不履行により,本件イラストの対価(本件著作権の譲渡対価)に相当する金額の損害を受けたと主張する。
しかしながら,本件著作権譲渡契約が解除されたことにより,原告は,本件著作権を復帰的に取得するに至ったものであって,これを行使しうる地位にある以上,原告が本件著作権の譲渡対価相当額の損害を受けたと直ちに認めることは困難であり,このことは,原告が本件イラストを本件果実酒の包装等に使用するためにオーダーメイドで制作したものであったとしても変わることはない。
(略)
2 もっとも,被告は,本件著作権譲渡契約が解除されたことにより原状回復義務を負うところ(民法545条1項),被告は,同義務の内容として,解除までの間,本件著作権を利用したことによる利益(本件著作権譲渡契約の目的の使用利益)を返還する必要がある(最高裁昭和51年2月13日第二小法廷判決参照)。
平成28年2月29日 東京地方裁判所[平成25(ワ)28071等]

著作権判例エッセンス トップ 


     Kaneda Copyright Agency
     カネダ著作権事務所


      Home  メール相談  契約マネジメント  文化庁登録マネジメント  侵害対応マネジメントその他 
      アメリカ著作権局登録マネジメント