[e193]応用美術の著作物性(地裁)

フィンランド在住の人形作家Aは,フィンランドなどで語り継がれているトントゥの寓話から,トントゥのオリジナル人形を創作した。オリジナル人形は,幅,奥行き,高さ各約3ないし6㎝ほどの石膏製の人形で,1体1体手作りされており,Aが上記のようなトントゥの寓話を基に自らの感覚でその容貌,形状,色彩を具体化して人形としたものである。オリジナル人形は,A自身がトントゥの寓話から受けるイメージを造形物として表現したものであって,その姿態,表情,着衣の絵柄・彩色等にAの感情の創作的表現が認められ,かつ美術工芸品的な美術性も備えているもので,Aが著作権を有する著作物である。
平成14年01月31日東京地方裁判所[平成13(ワ)12516]

ポスター,絵はがき,カレンダー等の商品の分野においては,当該商品の需要者は,専らこれらの商品に付された絵柄等を美術的な感情を満足させるために鑑賞することを目的として商品を購入し,使用するものであり,このような点から,既存の著名な美術作品である絵画や写真の複製物を用いて商品を製作することが,従来から広く一般的に行われている。このような点に照らせば,その複製物をこれらの分野の商品の絵柄等として用いることを予め想定して作成される作品であっても,当該作品が独立して美的鑑賞の対象となり得る程度の美的創作性を備えている場合には,著作権法上の著作物として同法による保護の対象となり得るものと解するのが相当である。
平成15年07月11日東京地方裁判所[平成14(ワ)12640]

本件各著作物は、いずれも当初からパチスロ機に用いることを目的として作成されたものであることは当事者間に争いがなく、これを反面から見れば、それ自体の鑑賞を目的として作成されたものではないということができる。
しかしながら、上記各著作物は、いずれも一応独立した図柄であるから、量産品の図面や金型等とは異なって、それ自体を鑑賞の対象とすることもできるものである。
このような、それ自体を鑑賞の対象とすることができる図柄については、これが平均的一般人の審美観を満足させる程度に美的創作性を有するものであれば、著作権法にいう美術の著作物に当たるものと解するのが相当である。
(中略)本件各著作物は、原告が主張するような特徴で描かれた液晶ソフトの画像に登場する人物ないし動物キャラクターやそれらを背景と組み合わせて作成された図柄や筐体のデザインとして作成された図柄であり、いずれも、その形状、構図等に作成者の思想感情が表現されており、平均的一般人の審美観を満足させる程度の美的創作性を有するものと認めることができる。
よって、本件各著作物は、いずれも美術の著作物として、著作権の対象となるものというべきである。
平成16年01月15日大阪地方裁判所(平成14(ワ)1919等)

これらの規定【注:著作権法2条1項1号及び同条2項】は,意匠法等の産業財産権制度との関係から,著作権法により著作物として保護されるのは,純粋な美術の領域に属するものや美術工芸品であって,実用に供され,あるいは産業上利用されることが予定されている図案やひな型など,いわゆる応用美術の領域に属するものは,鑑賞の対象として認められる一品製作のものを除いて,特段の事情のない限り,これに含まれないことを示しているというべきである。
本件標章は,①当初から本件饅頭の商品名を示すものとして作成され,包装紙に商品名を表示する態様で使用されているから,正に産業上利用される標章であること,②別紙標章目録記載のとおり,漢字の「撃」に欧文字の「GEKI」を一部重ねたものであるが,「GEKI」は「撃」の音読みをゴシック体の欧文字でローマ字表記したものにすぎず,「撃」部分も,社会通念上,鑑賞の対象とされる文字と解するのは相当でないことから,本件標章は,著作物とは認められない
平成16年12月15日東京地方裁判所[平成16(ワ)3173]

これらの規定【注:著作権法2条1項1号及び同条2項】は,意匠法等の産業財産権制度との関係から,著作権法により著作物として保護されるのは,純粋美術の領域に属するものや美術工芸品であり,実用に供され,あるいは産業上利用されることが予定されているものは,それが純粋美術や美術工芸品と同視することができるような美術性を備えている場合に限り,著作権法による保護の対象になるという趣旨であると解するのが相当である。
原告商品は,小物入れにプードルのぬいぐるみを組み合わせたもので,小物入れの機能を備えた実用品であることは明らかである。そして,原告が主張する,ペットとしてのかわいらしさや癒し等の点は,プードルのぬいぐるみ自体から当然に生じる感情というべきであり,原告商品において表現されているプードルの顔の表情や手足の格好等の点に,純粋美術や美術工芸品と同視することができるような美術性を認めることは困難である。また,東京ギフトショーにおいて審査員特別賞を受賞した事実が,原告商品の美術性を基礎付けるに足るものでないことは明らかである。したがって,原告商品は,著作権法によって保護される著作物に当たらない。
平成20年07月04日東京地方裁判所[平成19(ワ)19275]≫

本件デザインは,当初から,原告商品のペットボトル容器のパッケージデザインとして,同商品のコンセプトを示し,特定保健用食品の許可を受けた商品としての機能感,おいしさ,原告のブランドの信頼感等を原告商品の一般需要者に伝えることを目的として,作成されたものであると認められる。
そして,完成した本件デザイン自体も,別紙原告商品目録の写真のとおり,商品名,発売元,含有成分,特定保健用食品であること,機能等を文字で表現したものが中心で,黒,白及び金の三色が使われていたり,短冊の形状や大きさ,唐草模様の縁取り,文字の配置などに一定の工夫が認められるものの,それらを勘案しても,社会通念上,鑑賞の対象とされるものとまでは認められない。
したがって,本件デザインは,いわゆる応用美術の領域に属するものであって,かつ,純粋美術と同視し得るとまでは認められないから,その点において,著作物性を認めることができない。
平成20年12月26日東京地方裁判所[平成19(ワ)11899]

原告図版は,単に,正方形と線(縦棒,横棒)を漫然と並べたにすぎないものではなく,①大小の正方形及び太さの異なる縦横の棒の配置ないし配色,②書名,編者名及び出版社名の配置,字体ないし文字の大きさ,③小さな正方形に描かれた木の葉や木の実等のイラスト,そこにちりばめられた丸い粒など,の具体的な表現方法において,制作者であるaの思想又は感情が創作的に表現されたものであると認められる
したがって,原告図版は,著作権法上の著作物(著作権法
2条1項1号)として,同法による保護の対象となるというべきである。
これに対し,被告は,原告図版は原告書籍の表紙のデザインとして用いられており,いわゆる応用美術と評価されるものであるから,著作権法上の著作物には該当しないと主張する。
しかしながら,上記で認定説示したところによれば,原告図版は,いわゆる純粋美術に当たるものであり,著作権法上の著作物として保護されるべきものであるということができる。被告の上記主張は採用することができない。
平成22年07月08日東京地方裁判所[平成21(ワ)23051]

これらの規定【注:著作権法2条1項1号及び同条2項】は,意匠法等の産業財産権制度との関係から,著作権法により美術の著作物として保護されるのは,純粋美術の領域に属するものや美術工芸品であり,実用に供され,あるいは産業上利用されることが予定されているもの(いわゆる応用美術)は,それが純粋美術や美術工芸品と同視することができるような美術性を備えている場合に限り,著作権法による保護の対象になるという趣旨であると解するのが相当である。
本件デザインは,いすのデザインであって,実用品のデザインであることは明らかであり,その外観において純粋美術や美術工芸品と同視し得るような美術性を備えていると認めることはできないから,著作権法による保護の対象とはならないというべきである。
平成22年11月18日 東京地方裁判所[平成21(ワ)1193]≫

「カスタマイズドール」は,頭部,胴体及び四肢部分で構成された人の裸体の外観形態を模写したヌードボディである「素体」に,自らの好みにあわせ,ウィッグ(かつら),衣類等を組み合わせたり,彩色(アイペイント,メイク等),加工,改造等をすることにより作り上げる人形であることに照らすならば,原告各商品のようなカスタマイズドール用素体を購入する通常の需要者においては,自らの好みにあわせて作り上げた人形本体(カスタマイズドール)を鑑賞の対象とすることはあっても,その素材である素体自体を鑑賞の対象とするものとは考え難く,また,原告が主張するような素体を選択する際に当該素体を見ることは,鑑賞に当たるものということはできない。
また,そもそも,原告各商品は,販売目的で量産される商品であって,一品制作の美術品とは異なるものである。
以上によれば,原告各商品が「純粋美術」として美術の著作物(著作権法
10条1項4号)に該当するとの原告の主張は,採用することができない。
平成24年11月29日東京地方裁判所[ 平成23(ワ)6621]

原告製品は工業的に大量に生産され,幼児用の椅子として実用に供されるものであるから,そのデザインはいわゆる応用美術の範囲に属するものである。そうすると,原告製品のデザインが思想又は感情を創作的に表現した著作物(著作権法2条1項1号)に当たるといえるためには,著作権法による保護と意匠法による保護との適切な調和を図る見地から,実用的な機能を離れて見た場合に,それが美的鑑賞の対象となり得るような美的創作性を備えていることを要すると解するのが相当である。
平成26年4月17日 東京地方裁判所[平成25(ワ)8040]

これらの規定【注:著作権法2条1項1号及び同条2項】に加え,同法が文化の発展に寄与することを目的とするものであること(1条),工業上利用することのできる意匠については所定の要件の下で意匠法による保護を受けることができることに照らせば,純粋な美術ではなくいわゆる応用美術の領域に属するもの,すなわち,実用に供され,産業上利用される製品のデザイン等は,実用的な機能を離れて見た場合に,それが美的鑑賞の対象となり得るような創作性を備えている場合を除き,著作権法上の著作物に含まれないものと解される。
平成28年1月14日東京地方裁判所[平成27(ワ)7033]≫

著作権法2条1項1号は,「著作物」とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいう」旨規定し,同条2項は,「この法律にいう『美術の著作物』には,美術工芸品を含むものとする」と規定している。そして,そもそも,著作権法は,文化的所産に係る権利の保護を図り,もって「文化の発展に寄与すること」を目的とするものである(同法1条参照)。これに対し,産業的所産に係る権利の保護については,工業上利用することができる意匠(物品の形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合であって,視覚を通じて美感を起こさせるもの)につき,所定の要件の下で意匠法による保護を受けることができる(同法2条1項,3条ないし5条,6条,20条1項等参照)など,工業所有権法ないし産業財産権法の定めが設けられており,このほか,商品の形態については,不正競争防止法により,「実質的に同一の形態」等の要件の下に3年の期間に限定して保護がされている(同法2条1項3号,同条5項,19条1項5号イ等参照)。
以上のような各法制度の目的・性格を含め我が国の現行法が想定しているところを考慮すれば,実用に供される機能的な工業製品ないしそのデザインは,その実用的機能を離れて美的鑑賞の対象となり得るような美的特性を備えていない限り,著作権法が保護を予定している対象ではなく,同法2条1項1号の「文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」に当たらないというべきである。
なお,原告は,実用に供される機能的な工業製品やそのデザインであっても,他の表現物と同様に,表現に作成者の何らかの個性が発揮されていれば,創作性があるものとして著作物性を肯認すべきである旨主張するけれども,著作権は原則として著作者の死後又は著作物の公表後50年という長期間にわたって存続すること(著作権法51条2項,53条1項)などをも考慮すると,上述のとおり現行の法体系に照らし著作権法が想定していると解されるところを超えてまで保護の対象を広げるような解釈は相当でないといわざるを得ず,原告の上記主張を採用することはできない。
平成28年4月27日東京地方裁判所[平成27(ワ)27220]

著作権判例エッセンス トップ 


     Kaneda Copyright Agency
     カネダ著作権事務所


      Home  メール相談  契約マネジメント  文化庁登録マネジメント  侵害対応マネジメントその他 
      アメリカ著作権局登録マネジメント