[e195]法114条の意義と解釈3項関係)

114条2項【注:現3項。以下同じ】の規定によれば、著作隣接権者は、「損害の発生」については主張立証する必要はなく、「権利侵害の事実」と、「その著作隣接権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額」とを主張立証すれば足りる。他方、侵害者は、「損害の発生があり得ないこと」を抗弁として主張立証すれば、損害賠償の責めを免れ得るものと解される。法114条2項は、同条1項【注:現2項】とともに、不法行為に基づく損害賠償請求において損害に関する被害者の主張立証責任を軽減する趣旨の規定であって、損害の発生していないことが明らかな場合にまで侵害者に損害賠償義務があるとすることは、不法行為法の基本的枠組みを超えるものというほかないからである(最判平成9年3月11日参照)。
平成14年10月17日東京高等裁判所[平成11(ネ)3239]

114条2項【注:現3項】の規定は、著作隣接権者が侵害者に対し、その著作隣接権の行使について受けるべき金銭として客観的に相当であると認められる額を、著作隣接権者が受けた最小限の損害額として認めたものである(法114条3項【注:現4項】参照)。したがって、この使用料相当額を定めるに当たっては、侵害当時における正規の取引相手との間の許諾契約の例など正常な取引実務のみを考慮するのは相当ではなく、過去の許諾例、業界の使用料規定、業界の相場等のほか、当該著作物ないし著作隣接権の対象となる実演の創作的な価値、経済的な価値、権利者と侵害者との関係、権利者の営業政策、当該侵害行為の態様、侵害行為が業界に及ぼした影響等の個別事情を十分に斟酌して、これらの事情を総合考慮して、客観的に相当と認められる額を算定するが相当であり、前記の平成12年法律第56号による改正の趣旨は、このことを明確にするものである。
平成14年10月17日東京高等裁判所[平成11(ネ)3239]

改正法が上記「通常」の文言を削除した趣旨については,改正前の著作権法114条2項【注:現3項】所定の「通常受けるべき金銭」を算定するに当たって既存の利用許諾契約における利用料率が参酌されたことに起因する問題点,すなわち,侵害者が適法に利用許諾を受けた者と同額を賠償すれば足りるという,いわゆる「侵害し得」の結果を生ずることを回避するため,「通常」の文言を削ることにより,当該事案の具体的事情を考慮した適正な利用料が認定されることを図ったものと解される(本段落につき,東京高裁平成14年9月6日判決参照)。著作権利用許諾契約における一般的な利用料率がおおむね10%程度であることは,当裁判所に顕著な事実であり,また,著作権侵害訴訟における損害額の算定においては,上記契約により合意される利用料率より高率の利用料率に基づく金銭の額を認定しなければ,適法に著作権利用許諾を受けた者と違法に著作権を侵害した者との間に上記「侵害し得」の結果を生ずるから,これを回避することを目的とする改正法の趣旨に本件事案の諸般の事情を総合考慮すると,本件における被控訴人の「受けるべき金銭の額に相当する額」は,本件書籍1の販売価格に上記寄与度及び利用料率15%を乗じた額と認めるのが相当である。
平成15年07月18日東京高等裁判所[平成14(ネ)3136]

平成12年法律第56号による著作権法改正により,改正前の著作権法114条2項【注:現3項】から「通常」の文言が削除された趣旨は,既存の使用料の相場等に拘束されることなく,当事者間の具体的な事情を参酌した妥当な損害額の認定を可能にすることにある。
平成16年05月31日東京地方裁判所[平成14(ワ)26832]≫

著作権法114条3項の「受けるべき金銭の額」は,著作権を侵害された者に対して最低限の賠償を保障する性質のものであって,著作権者が自ら著作物の商業的利用を予定しているか否かにかかわらず,当該著作物の使用について許諾をするとした場合の客観的に妥当な額を損害として認める趣旨のものと解されるから,商業的利用を予定していなかったから損害の発生がないということはできない
平成16年11月29日東京高等裁判所[平成15(ネ)1464]

同法【注:法114条3項】に規定する「著作権…の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額」とは,損害賠償額として適正な使用料相当額をいい,過去における著作物の使用料や業界における著作物の利用に関する料金の相場そのものではなく,それらを参考としつつ,その実質が不法行為に基づく損害賠償であることを考慮して,同料金額にとらわれることなく裁判所が適正な使用料相当額を認定するものである。
平成23年10月31日知的財産高等裁判所[平成23(ネ)10020]

同条項【注:法114条3項は,著作権者等が最低限の賠償額として使用料相当額(逸失利益)を請求することができる旨を定めたものであり,その額については,当該事案における個別具体的な事情をしん酌して適切な金額を認定するのが相当である。
平成28年6月23日知的財産高等裁判所[平成28(ネ)10026]

著作権法114条2項【注:現3項】にいう「著作権の行使につき受けるべき金銭の額」については,被告が無断複製物を掲載した雑誌等の現実の販売価額や他の掲載記事の原稿料等に必ずしもとらわれることなく,侵害に係る著作物の内容及びその複製物の掲載が雑誌等の販売に寄与する程度等を考慮して認定するのが相当である。
平成13年11月08日東京地方裁判所[平成12(ワ)2023]≫

同項【注:法114条3項】にいう「受けるべき金銭の額に相当する額」は、侵害行為の対象となった著作物の性質、内容、価値、取引の実情のほか、侵害行為の性質、内容、侵害行為によって侵害者が得た利益、当事者の関係その他の訴訟当事者間の具体的な事情をも参酌して認定すべきものと解される。
平成15年10月23日大阪地方裁判所[平成14(ワ)8848]

不法行為に基づく損害賠償制度は、被害者に生じた現実の損害を金銭的に評価し、加害者にこれを賠償させることにより、被害者が被った不利益を補てんして、不法行為がなかったときの状態に回復させることを目的とするものである。このことは、著作権侵害を理由として損害賠償を請求する場合であっても異ならず、著作権法114条2項【注:現3項】の規定に基づき、著作権者が著作権を侵害した者に対し、「著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額を自己が受けた損害の額として」その賠償を請求することも、基本的に上記の不法行為による損害賠償制度の枠内のものというべきである。
平成15年10月23日大阪地方裁判所[平成14(ワ)8848]

著作権法114条3項の規定は,利益の有無にかかわらず【注:侵害者が当該侵害行為により全く利益を得ていない場合であっても】損害額として請求できるものであ(る。)
≪平
24年05月09日知的財産高等裁判所[平成24(ネ)10013]

著作権法114条3項に基づく使用料相当損害金の算定において,侵害者が利益を得ているか否かを斟酌する必要はない(。)
平成16年05月31日東京地方裁判所[平成14(ワ)26832]≫

著作権法114条3項は,著作権の侵害行為があった場合に,著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額である使用料相当額については,権利者に,最低限の損害額として損害賠償請求を認める趣旨の規定である。そして,本件のように,被告が本件ソフトウェアの違法複製版をダウンロード販売したという事案においては,本件ソフトウェアを複製した商品を販売する者から原告が受けるべき使用料相当額を算定すべきであるところ,本件においては,著作権者の標準小売価格を前提としてこれに相当な実施料率を乗じて使用料相当額を算定するのが相当であると解される。
平成27年2月12日東京地方裁判所[平成26(ワ)33433]

【法1143項の類推適用】

(独占的利用権の侵害による損害について)
原告会社が有する本件写真3ないし6の著作権の独占的利用権が法的保護に値するものであることは,前記のとおりであり,同原告は,被告に対して,当該独占的利用権の侵害による損害賠償請求をし得るというべきところ,同原告が,事実上,本件写真3ないし6の複製物を販売することによる利益を独占的に享受し得る地位にあり,その限りで,著作物を複製する権利を専有する著作権者と同様の立場にあることに照らせば,同原告の損害額の算定に当たり,著作権法114条3項を類推適用することができると解するのが相当である。
平成27年4月15日東京地方裁判所[平成26(ワ)24391]

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