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ホーム 米国著作権トップ << 米国著作権キーワード解説 最終更新 '08/07/04

職務著作物

解説

1「職務著作物」に関する著作権の帰属


  米国著作権法においては、著作物が有形的表現媒体に固定されると直ちに当該著作権に係わるすべての権利が当該著作者のもとに発生します。著作権は、<著作物を創作した者=著作者>に原始的に帰属し、当該著作者及びこの者から適法に権利を譲渡された者のみが当該著作権を主張できるのが基本原則です。

しかし、上記の原則に対しては、大きな例外があます。それが「職務著作物」に関する規定であり、この取扱いは実務上非常に重要です。


  まず、米国著作権法は、その定義規定(101条)において“works made for hire”(「職務著作物」)に関する規定を設けています。そして、この職務著作物に対する権利の帰属関係について法201(b)で規定しています。

  結論から言いますと、ある著作物が「職務著作物」と認定されると、その著作物を実際に創作した“employee”(従業員)ではなく、“the employer or other person for whom the work was prepared”(「使用者(雇用主)その他当該著作物が作成される者」)が「著作者」とみなされることになります。「著作物を創作した者が著作者である」という著作権法の大原則に対する重大な例外となります。そして、当事者間の署名された書面による明示的な合意で別の定めがなければ、この「使用者」等が、職務著作物にかかる著作権を構成するすべての権利を保有することになります。なお、この「使用者」等は、会社や研究機関の場合もあれば、個人の場合もありえます。


2「職務著作物」の解釈


  それでは、次に、この「職務著作物」とは何か、ということに話を移します。

「職務著作物」という概念を理解するに当たっては、まずこれに関する米国著作権法上の定義規定を理解しなければなりません。しかし、「職務著作物」を解釈するに当たって重要な概念となる“employee”(「従業員」)及び“scope of employment”(「職務(雇用)の範囲」)については定義規定が設けられていないことから、判例における解釈を検討することも重要な作業になります。

1) 定義規定


  米国著作権法では、「職務著作物」を2つの場面に大別して定義しています(101条)。

すなわち、@「雇用関係にある従業員」が作成する場面と、A「特別に(制作の)注文又は委託を受けた者が個別の契約に基づいて」作成する場面(いわゆるインディペンデント・コントラクター(独立業務請負人)を思い浮かべてください。)を想定しています。

@ 「従業員」(employee)が「その職務(雇用)の範囲内で」(within the scope of his or her employment)作成する著作物は、「職務著作物」とされます。
A 「特別に(制作の)注文又は委託がされた著作物」については、それが以下の9つのカテゴリーのいずれかに使用するためのものであって、かつ、当事者が署名した書面において当該著作物を職務著作物とする旨の明示的な合意がなされている場合に限って、「職務著作物」とみなされます。

・ 集合著作物への寄与物(a contribution to a collective work

・ 映画その他の視聴覚著作物の一部(a part of a motion picture or other audiovisual work

・ 翻訳物(translation

・ 「補足的著作物」(supplementary work)

・ 編集著作物(compilation

・ 「教科書」(instructional text)

・ 試験問題(test

・ 試験問題の解答資料(answer material for a test
・ 地図帳(atlas


2) 連邦最高裁判所の解釈

  ある著作物が「職務著作物」に該当するか否かは、当事者間の関係性によって決せられることになりますが、定義規定が存在していても、この判断は実際上非常に難しいといえます。この点、当該定義規定を解釈するに当たっては、連邦最高裁判所の解釈(<Community for Creative Non-Violence v. Reid, 490 U.S. 730(1989)>)が参考になります。
  上記判例のコートオピニオンを参考にしながら、もう少し具体的に解説します。

  ある著作物が「職務著作物」に該当するか否かを決定するにあたっては、まずはじめに、当該著作物が「従業員(employee)」によって作成されたか、「インディペンデント・コントラクター(independent contractor)」によって作成されたかを確かめます。

そして、それが「従業員」によって作成されたものであれば上述の定義規定@が、「インディペンデント・コントラクター」によって作成されたものであれば定義規定Aが適用されることになります。

  次に、ある者が「従業員(employee)」といえるかどうかを判定するに当たっては、以下の点に注意する必要があります。

「従業員(employee)」という用語は、米国著作権法上は、必ずしも当該用語の一般的な理解と同じではなく、「一般的なコモンロー上のエイジェンシー法におけるemployee」=“an employee under the general common law of agency”の意味に理解されるべきこと。

「使用者と従業員の関係(Employer-Employee Relationship)」は、エイジェンシー法に照らして解釈されるべきこと。判断材料としては、次の要因(factors)を特定し、考慮すること。

  ・ 使用者の作品に対するコントロール要因−使用者が作品の製作方法を決定できるか、自己の支配場所で作品製作を行わせているか、作品製作のための設備・装備等を提供しているかなど。

  ・ 使用者の従業員に対するコントロール要因−使用者が作品の製作にかかる従業員のスケジュールを管理しているか、従業員に対して追加的な課題を課す権限を有しているか、給与の支払方法を決定しているか、従業員のアシスタントになるべき人間を雇用する権限を有しているかなど。

  ・ 使用者の社会的立場及び指揮管理要素−使用者が当該作品を製作するビジネスに関与しているか、従業員に付加給与・手当てを提供しているか、従業員の給与から税金を差し引いているかなど。

上記の判断要因が網羅的・決定的というわけではなく、これらの要因が総合的に判断されるとしても、いまだ確立した正確な決定基準はないということ。


  上述しました連邦最高裁判所の解釈・判断要素等を総合して考えますと、「正規の給与支払い(雇用)関係」があれば、ほとんどの場合、そこに「使用者と従業員の関係」があるといえそうです。そのため、このような関係の範囲内で創作された作品(著作物)は、当事者間に反対の明示的な意思表示がない限り、「職務著作」に該当すると考えて差し支えないと思います。

参照条文

米国著作権法201条(著作権の帰属)(b)-職務著作物

(b) Works Made for Hire. --- In the case of a work made for hire, the employer or other person for whom the work was prepared is considered the author for purposes of this title, and, unless the parties have expressly agreed otherwise in a written instrument signed by them, owns all of the rights comprised in the copyright.

【対訳】
(b) 職務著作物―職務著作物の場合、使用者(雇用主)その他当該著作物が作成される者は、本編において著作者とみなされ、また、当事者がその署名した書面で別段の明示的な合意をしていない場合に限り、当該著作権に含まれるすべての権利を有する。

米国著作権法101条(「職務著作物」の定義)
A “work made for hire” is ---
(1) a work prepared by an employee within the scope of his or her employment; or

(2) a work specially ordered or commissioned for use as a contribution to a collective work, as a part of a motion picture or other audiovisual work, as a translation, as a supplementary work, as a compilation, as an instructional text, as a test, as answer material for a test, or as an atlas, if the parties expressly agree in a written instrument signed by them that the work shall be considered a work made for hire. For the purpose of the foregoing sentence, a “supplementary work” is a work prepared for publication as a secondary adjunct to a work by another author for the purpose of introducing, concluding, illustrating, explaining, revising, commenting upon, or assisting in the use of the other work, such as forewords, afterwords, pictorial illustrations, maps, charts, tables, editorial notes, musical arrangements, answer material for tests, bibliographies, appendixes, and indexes, and an “instructional text” is a literary, pictorial, or graphic work prepared for publication and with the purpose of use in systematic instructional activities.

【対訳】
「職務著作物」とは、次のいずれかをいう。
1) 被用者の職務の範囲内で、その被用者によって作成される著作物、又は
2) 集合著作物への寄与物、映画その他の視聴覚著作物の一部分、翻訳物、補足的著作物、編集著作物、教科書、試験問題、試験問題の解答資料、又は地図帳のいずれかとして使用するために、特別に(制作の)注文又は委託がされた著作物であって、当事者が、その署名した文書によって、当該著作物が職務著作物であることに明示的に同意を与えたものをいう。前段において、「補足的著作物」とは、ある著作物の二次的な付加物して発行するために他の著作者によって作成される著作物で、例えば、序文、あとがき、挿絵、地図、海図、一覧表、編集後記、編曲、試験問題の解答資料、参考(引用)文献目録、付録、索引などのように、他の著作物を紹介し、結び、図解し、説明し、修正し、論評し、又はその使用を助けることを目的とするものをいう。また、「教科書」とは、言語、絵画又は図形の著作物であって、発行に向けて(発行を予定して)、かつ、体系的組織的な教育活動において使用されることを目的として作成されるものをいう。