苗場山 Mt. Naebasan 津南町



苗場山は新潟県南部と長野県北東部の県境に位置する、標高2,145mの火山だ。日本百名山の一つで上信越高原国立公園に属する。那須火山帯に属する輝石安山岩からなる成層火山(アスピーテ式)で、毛無火山群の主峰をなす。
最大の特徴は、広い裾野に対して山頂部が平坦なことだ。頂上には約4平方キロメートルに及ぶ平坦な高層湿原が広がり、シラビソの疎林と大小1,000を超える池塘が点在する。最高点から1キロメートル歩いても標高差が120メートルほどしかなく、天上の楽園のような光景を見せる。この池塘にミヤマホタルイやヤチスゲが苗のように繁り、まるで苗代田のように見えることから「苗場山」の名がついたという説がある。古くから稲作の守り神として信仰され、山頂には伊米神社が祀られている。
山頂部には木道が敷かれており、春から初秋にかけてコバイケイソウ、チングルマ、ワタスゲ、モウセンゴケ、ニッコウキスゲといった豊富な高山・湿原植物がお花畑を形成する。秋には湿原全体が黄金色や赤に染まる草紅葉と全山の紅葉が見事だ。
登山道は、上越新幹線の越後湯沢駅からアクセスし、和田小屋や神楽ヶ峰を経由する「祓川(はらいがわ)コース」が一般的だ。和田小屋から約4時間30分で山頂に達する。山頂からは日光連山、奥秩父の山々、北アルプスまで360度の大パノラマを見渡せる。また、東側山麓はかぐらスキー場などのスキーリゾートエリアとして知られ、西側山麓の中津川沿いには秘境・秋山郷が位置する。
山頂で宿泊する場合は「苗場山頂ヒュッテ」が利用できる。営業期間は6月1日から10月25日までで、予約はWEBではなく、専用ダイヤル(080-7183-4024、平日9~16時)での電話予約制となっている。満室時は宿泊できないため、事前に営業時間や空き状況を確認した上での完全予約が必要だ。(案内図)

🌌見どころ
苗場山の最大の魅力は、標高2,145mの山頂に広がる約4平方キロメートルの広大な高層湿原だ。最高点から1km歩いても標高差が約120mしかない極めて平坦な地形で、シラビソの疎林の中に大小1,000を超える池塘が点在する「天空の楽園」のような光景が広がる。
春から初秋には木道沿いにコバイケイソウ、チングルマ、ワタスゲ、ニッコウキスゲなどの高山植物が咲き誇る。秋には湿原全体が黄金色に染まる草紅葉と、山肌の見事な紅葉が全山を彩る。
遮るもののない360度の大パノラマも素晴らしく、山頂からは日光連山や奥秩父の山々、さらには北アルプスまで見渡せる絶景が広がる。古くから稲作の守り神として信仰される伊米神社が祀られていることも、この山の歴史的な見所だ。
🌌山名の由来
苗場山の山名の由来は、山頂に広がる広大な高層湿原の景観に深く結びついている。平坦な山頂部には大小1,000を超える池塘(ちとう)と呼ばれる水溜まりが点在する。この池塘の中に、ミヤマホタルイやヤチスゲといった湿地性の植物が青々と繁る。その様子が、まるで里の田植え前に苗を育てる「苗代田(なわしろだ)」のように見えたことから、自然と「苗場山」と呼ばれるようになったという説が有力だ。
この独特な景観から、古くより山頂には天上の神が田植えをするという伝承が生まれ、自然と稲作の守り神としての信仰を集めるようになった。現在も山頂に祀られている伊米神社は、まさにこの農業や稲作への深い信仰の歴史を今に伝えている。
🌌山にまつわる言い伝えや出来事
苗場山は古くから稲作の守り神、五穀豊穣の「神の山」として深い信仰を集めてきた。山頂の伊米神社には、一人の若者が山頂の池塘から五穀の種子を授かり、麓に持ち帰って農業を広めたという開山伝承が残る。この地は「天の苗代」と呼ばれ、天上の神々が田植えをする聖地と信じられていた。
江戸時代には文人・鈴木牧之が著書『秋山記行』で苗場山の神秘的な姿や、登拝する修験者たちの厳しい信仰の様子を生々しく記録している。
また歴史的出来事として、明治時代に平穏を祈願して山頂に巨大な鉄製の鳥居が奉納された。現在も過酷な気象に耐えながら佇むその鳥居は、厳しい自然環境と、それに挑み祈りを捧げ続けた人々の歴史を今に伝えている。

🌌注意事項
🤩苗場山登山では、急激な気象変化と厳しい残雪への警戒が不可欠だ。
山頂部は遮るもののない広大な高層湿原のため、雷雨や濃霧が発生しやすく、視界不良時の道迷いに十分注意しなければならない。また、初夏まで登山道に雪が残るため軽アイゼンが必須となる。小赤沢ルートなどの急登や鎖場では転落事故に気をつけよう。
山頂の木道から外れて湿原に立ち入ることは厳禁だ。十分な防寒着と雨具を備え、早朝に出発することが基本となる。
🤩苗場山登山での水場は、利用するルートによって状況が異なる。一般的な「祓川コース」では、登山口の和田小屋のほか、神楽ヶ峰を越えた先の鞍部にある「雷清水(かみなりしみず)」が重要な水場となる。冷たくて美味しいと評判だが、時期により水量が減ることもある。一方、最短の「小赤沢コース」では、3合目駐車場(登山口)や4合目に水場があるが、それ以降の登山道にはない。 広大な山頂湿原に池塘は無数にあるが、その水は飲用できない。山頂で真水を得るには山頂ヒュッテで購入する必要があるため、特に夏場は麓から十分な飲料水を持参することが鉄則だ。
🤩苗場山周辺には下山後に最適な入浴施設が豊富に揃う。祓川コースの起点となる越後湯沢駅周辺には、湯沢温泉街の外湯(共同浴場)が点在する。なかでも街道の湯や駒子の湯はアクセスが良く人気だ。また、登山口のすぐ近くにある「道の駅みつまた」には街道の湯が隣接しており、利便性が高い。
一方、西側の津南町・秋山郷方面へ下山した場合は、秘境の温泉地である小赤沢温泉「楽養館」や切明温泉がおすすめだ。楽養館は赤褐色の濃厚な濁り湯が特徴で、登山の疲れを芯から癒やせる。

🔶祓川コース

町営駐車場から和田小屋へは車道を歩く。和田小屋を出るとブナ帯に入り、6合目を過ぎるとダケカンバが多くなり、下ノ芝※ストリートビューに着く。さらに高度を上げて中ノ芝※ストリートビューへ出ると一気に視界が開ける。上ノ芝を過ぎると右手にスキーで初登頂した酒井、松本両氏の顕彰碑※ストリートビューがある。
股スリ岩に出ると初めて右前方に苗場山が姿を現し、神楽を舞ったという伝説の神楽ヶ峰(2029.6m)※ストリートビューに着く。この尾根にはゴゼンタチバナモミジカラマツタテヤマウツボグサニッコウキスゲクルマユリウラジロヨウラクトモエシオガマなどが咲いている。富士見坂を下って雷清水※ストリートビューで水を補給する。7月中旬にはヒメシャジンなど50種以上の高山植物が咲き誇るお花畑となる。雲尾坂※ストリートビューの急登を登り、ヒカリゴケを過ぎると突然山頂に飛び出す。

🔶大赤沢コース

国道425号を長野県側に入り、生コン工場※ストリートビューをすぎて工事道路※ストリートビューを終点まで入ると、新しい登山口がある。車は道脇に停めることになる。
道を登っていくと三合目の第一展望台に着く。急登すると猿面峰(1832m)に着く。ここからは、苗場山の北面と神楽峰、霧ノ塔もすぐ近くに見える。
1時間急坂を登り切ると頂上は近い。突然、平地になり、オオシラビソの林間を抜けると頂上の山小屋遊仙閣が現れる。

🔶小赤沢コース

3合目まで林道が整備され、駐車場とトイレが設置がある。尾根に出て25分くらいで4合目に着く。5合目までは落葉樹が多く、6合目に向かってオオシラビソ、ダケカンバの林の中を進む。斜面の草地にはシラネアオイエンレンソウミツバオウレンが競って咲いている。6合目を越えた辺りから8合目までコース最大の急峻を登る。ここから木道が敷設され9合目を通過する。大きな岩の上を歩いているような道に注意を払ってオオシラビソの林間を抜けると、いよいよ山頂も間近だ。赤倉山コースと合流すれば、「春の苗代の場」と例えられた無数の池塘群を持つ広大な湿原が眼前に姿を現す。

  • ★★☆☆
    〔標高〕2,145 m
    〔所在地〕新潟県湯沢町、津南町、長野県栄村 ※GOOGLE 画像
    〔山開き〕7月第1土曜日


  • ❏〔登山口〕
    • 🔶祓川登山口 ※地図 ※ストリートビュー
      • 祓川登山口は、苗場山登山で最も一般的かつ整備された起点だ。標高約1,380mに位置する和田小屋が実質的な登山口となり、周辺には有料駐車場や公衆トイレ、水場が完備されている。上越新幹線の越後湯沢駅から車やタクシーでアクセスしやすく、公共交通機関を利用する登山者にも利便性が高い。かぐらスキー場のエリア内を通るため、初夏まで残雪が多いのが特徴だ。
      〔所要時間〕 山頂まで4時間30分
      〔アクセス〕 〔駐車場〕 30台
      〔宿泊施設〕 〔水場〕 神楽ヶ峰を越えて雷清水がある
    • 🔶元橋登山口 ※地図 ※ストリートビュー
      • 元橋登山口は、苗場山東側の国道17号沿いに位置する、公共交通機関でのアクセスに優れた上級者向けの起点だ。越後湯沢駅から路線バスで直接アクセスできる利便性を持つ。山頂までは秘湯・赤湯温泉や昌次新道を経由するロングコースで、片道約10時間を要する。鎖場が多く、体力と経験が求められるため登山者は少ないが、静かで奥深い山歩きを楽しめる。
      〔所要時間〕 山頂まで約10時間
      〔アクセス〕 〔駐車場〕 平標山 登山口 元橋駐車場 ※ストリートビュー
    • 🔶大赤沢登山口 ※地図 ※ストリートビュー
      • 大赤沢登山口は、津南町からアクセスする秋山郷内にあり、静かな山歩きを楽しめる玄人向けの起点だ。山頂までは片道約6時間かかるロングコースで、急登や痩せ尾根、ハシゴ、鎖場といった難所が連続する。小赤沢ルートに比べて格段に体力が求められ、登山者が少ないため静寂に包まれている。ブナの原生林や、山頂湿原へと一気に突き抜けるダイナミックな景観の変化が最大の魅力だ。
      〔所要時間〕 山頂まで6時間10分
      〔アクセス〕 〔駐車場〕 有り ※工事用道路を進んだ終点が登山口となっており、車は道路脇に停める ※ストリートビュー
    • 🔶小赤沢登山口 ※地図 ※ストリートビュー
      • 小赤沢登山口は、長野県栄村の秋山郷に位置する、苗場山頂へ最も短時間で登れる大人気の起点だ。標高約1,300mの3合目まで車でアクセス可能で、約100台収容の無料駐車場、公衆トイレ、水場が完備されている。山頂までは片道約3時間30分。道中は美しいブナの原生林が広がり、9合目付近の急な岩場や鎖場を登りきると、目の前に広大な山頂湿原が一気に広がる劇的な景色が魅力だ。
      〔所要時間〕 山頂まで約3時間30分
      〔アクセス〕 〔駐車場〕 有り
      〔トイレ〕 登山口にあり
      〔水場〕登山口、4合目、6合目付近に水場がある
  • ❏〔山小屋〕
    • 小松原避難小屋
      • ■収容人員 35人
        ■管理 通年開放無料
        ■問合せ 津南町役場 025-765-3115
        ■水場 小屋前の小沢
        ■位置 苗場山の北方約7キロメートルに広がる小松原湿原上ノ代の最上部(標高1565m)
    • 苗場山自然体験交流センター ※GOOGLE 画像
    • 和田小屋 ※GOOGLE 画像
  • ❏〔交通情報〕
  • ❏〔苗場山を紹介しているサイト〕
  • ❏〔問い合わせ先〕
    • 025-765-3111 津南町役場
    • 0269-87-3111 長野県栄村役場
    • 025-784-4850 湯沢町産業観光課





苗場赤湯周辺のブナ林

元橋登山口から、苗場山登山道を徒歩行程4時間でブナ林の真ん中にある秘湯赤湯温泉に着く。
赤湯から清津川を渡り登山路である昌次新道を、1時間ほど登ると、ブナ林のあるフクベ平に至る。残雪の時のフクベの平ブナ林はとりわけ美しい。
標高1500m、傾斜の緩い東斜面に樹齢300年をこえる一抱えものブナが、白い肌の幹に美しい紋様を浮かべてうっそうと繁り、まさに原生林のたたずまいである。


伊米(いめ)神社

新潟県湯沢町三俣に鎮座する伊米(いめ)神社は、山岳信仰の地である苗場山の麓に位置する里宮だ。平安時代の927年に編纂された『延喜式』神名帳にもその名が記されている、越後国魚沼郡の式内社として非常に古い歴史を持つ。古くから稲作や農耕の守り神、五穀豊穣の神として地域住民から深く信仰されてきた。
かつて山頂に広がる無数の池塘が田んぼに見えたことから、麓の農民たちはこの地を神々が田植えをする聖地「神の苗代田」と見なした。近世には蒲原平野などの農民の間で強力な「苗場信仰」が生まれ、「苗場講」と呼ばれる熱心な集団が五穀豊穣や雨乞いを祈願して過酷な登拝を繰り返した歴史を持つ。本宮は苗場山の山頂にあり、現在も山頂の境内には、保食神の女体青銅像のほか、浅間大神や役行者の石碑、明治期に平穏を祈って奉納された頑強な鉄製鳥居が佇む。
三俣にある現在の里宮の社殿は1814年に再建されたものと伝えられている。境内は豊かな自然に囲まれ、清らかな小川が流れる。水質が非常に良いため、水生植物の梅花藻やクレソンが育ち、イワナが泳ぐ姿も見られるなど、訪れる者に静寂と癒やしを与える空間だ。また、本殿の床下にはこの標高では極めて珍しいヒカリゴケが自生しており、夏の時期には幻想的な輝きを放つ。
毎年7月12日には伝統的な祭礼が執り行われる。昔ながらの裃や烏帽子を身にまとった厳かな行列が神輿を担いで集落を練り歩き、古き良き伝統を今に伝える。
アクセスは関越自動車道の湯沢インターチェンジから車で約15分。神社専用の駐車場はないが、徒歩5分ほどの場所にある「道の駅みつまた」の駐車場を利用できる。公共交通機関の場合は、JR越後湯沢駅からバスに乗り「三俣中央」または「道の駅みつまた前」で下車して徒歩数分だ。なお、豪雪地帯に位置するため冬季は雪に埋もれ、参拝が困難になる点には注意が必要である。

  • 〔祭神〕・保食神(うけもちのみこと)・天鈿女命(あめのうずめのみこと)・天穂日命(あめのほひのみこと)
  • 〔所在地〕新潟県南魚沼郡湯沢町大字三俣182番地 ※GOOGLE 画像

〔社殿や境内〕
新潟県湯沢町の伊米神社は、1814年に再建された木造の社殿を構える。周囲の豪雪に耐える堅牢な造りであり、歴史の深さを感じさせる佇まいだ。境内は豊かな自然に囲まれ、静謐な空気が漂う。最大の特徴は、社殿の床下に自生する希少な「ヒカリゴケ」だ。暗がりの中で神秘的な緑色の光を放つ。さらに境内を流れる清らかな小川には、7月から9月にかけて白い水中花「梅花藻(バイカモ)」が咲き誇る。山岳信仰の対象である苗場山の里宮にふさわしく、清らかな水と豊かな緑が息づく空間だ。杉木立に囲まれた境内は、旧三国街道の宿場町の面影を残す三俣地区において、今も神聖な聖域として大切に守られている。






















花かおる苗場山

花かおる苗場山

  • 作者:佐藤政二/飯塚英春
  • 出版社:ほおずき書籍
  • 発売日: 2003年08月

秘境秋山郷マタギの里苗場山天空の楽園

秘境秋山郷マタギの里苗場山天空の楽園

  • 作者:飯塚英春
  • 出版社:日本写真企画
  • 発売日: 2016年10月


山と高原地図 谷川岳 苗場山・武尊山 2024

山と高原地図 谷川岳 苗場山・武尊山 2024

  • 作者:昭文社 地図 編集部
  • 出版社:昭文社
  • 発売日: 2024年03月08日頃





































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