Parting



私はエルフィール・トラウム。錬金術師になる為にザールブルグのアカデミーに通っている。
ザールブルグに来て、もう4年がたつ。普通の人は今年で卒業する。
じゃあ私は、って?
私は自分で言うのもなんだけど、良い成績を取る事が出来た。今年のアカデミーのコンテストでは首席のノルディスを抜いて1位になれた、入学当時は280位だったんだけどね。
そんなわけで、私は親友のアイゼルやノルディスと一緒に高度な調合などを扱う、マイスターランクに進む事が出来るようになったのでとても喜んでいた。
しかし、8月の13日に私の元に1通の運命の手紙が舞い込んで来た。


=手紙=
エルフィール、元気にやっていますか?
あなたがとても良くやっている事は遠くの私達の耳にも入ってきていますよ。今年のコンテストでは1位を取ったそうじゃないの、おめでとう! 皆、喜んでいるわよ。
それで、そんなあなたの噂を耳にしたのか、ミスト地方の有名な貴族の方からあなたに見合いの話が来たの。こっちの体裁を考えると、すっぽかす訳にはいかないのよ、分かって頂戴。
あなたはマイスターランクに進みたいと思っていると思うわ。でも今回だけは諦めてロブソン村に戻ってらっしゃい。

両親より


両親からの手紙は普通、喜ぶ物だって事くらい、分かっている。でも内容がショックだった私にはそんな余裕は無かった。
何でショックだったかって?
・・・・私にはザールブルグに大切な人がいる。
工房の窓から見えるジグザール城の門番をしている彼、ダグラス・マクレイン。
先月の彼の誕生日に私は気持ちを打ち明けた。ダグラスは顔を真っ赤に染めて恥ずかしそうに答えてくれた。
「俺も、ずっと前からお前の事が好きだ。」
それ以来私達は自他共に認める恋人同士になった。まぁ、あんまり関係としては変わってない。強いて言えば・・・
採取に行く時、護衛をダグラス以外、雇わなくなった所とか、ダグラスが依頼をしに来た時にお茶を飲んでいくようになってダグラスのアトリエに要る時間が結構増えた事かな。
成績が良ければマイスターランクに進める、マイスターランクに進めればロブソン村に帰らなくて済む。
私はそういう風に考えて、コンテストを必死に頑張った。
―――ダグラスと少しでも、離れたくない!
いつのまにか、私はダグラス無しの生活が考えられなくなっていた。
帰らなくて済む事をダグラスに話したら、自分の事のように喜んでくれた。私達は幸せの絶頂にいた。
そんな時にこの手紙だ。私はショックを隠せなかった。
その日は泣きながらいつのまにか眠っていた。
―――ダグラスに、なんて言ったら良いんだろう?
そんな事を考えながら。

次の日、泣きはらして真っ赤だった目を洗って、いつも通りの笑顔を作ってダグラスの所に行った。
「お?どうした?」
ダグラスの顔を見たら、また泣きそうになったけど、ここで泣かれたらダグラスも困るだろうから我慢した。
「うん、あのね、明日夏祭りがあるでしょ?一緒に行きたいと思って。ダグラスと思いで作りたいの。」
ダグラスは聞いたとたん顔を真っ赤にした。恥ずかしさから顔を背けながら答えてくれた。
「あ、ああ・・・。それより、お前、今日なんだか様子おかしいぞ。大丈夫か?」
ダグラスの優しさに甘えてしまいそうになった。でも今回は・・・。
「大丈夫!いつも通りだよ。それより、明日忘れないでよね!!」
その後ダグラスが
「(あいつ・・・なんか表情が「作ってる」感じがしたんだけどな・・・。)」
そう思った事を私は知らなかった。でもダグラスが私を理解してくれてるのが身にしみて分かった。
―――ありがとう、ダグラス。
心の中で、彼にそういった。その後私は工房に帰って、夏祭りの日彼になんて言ったら良いか、悩みながら寝た。


Next