下肢静脈瘤をご高齢の方々(とくに東北地方のほうに多い)は今でも“すばこ”と俗称で呼ぶことがあります.“すばこ”は“すばく(寸白)”が訛ったもので、「サナダムシなどの条虫の異称.またそれによっておこる病気.婦人の腹痛 」と『広辞苑』には書かれています.
足の血管がコブ状に膨らみ、さらにうねっている形状が寄生虫に似ていることから呼ばれるようになったのでしょうか?それともサナダムシによって起こる病気だと思われていたのでしょうか?
下肢静脈瘤は美容上、見苦しいばかりか倦怠感や痛みを感ずるようになり、進行すると血栓性静脈炎、色素沈着、難治性の湿疹や潰瘍形成を生じてきます.
日本人成人の10~50%にみられる病気なのに、重症に陥っても下肢の切断や命に関わる病状を呈することが少ないために医療従事者を含めて病気への関心が低く、多くの患者さんが無処置のままに放置されているのが現状です.
下肢静脈瘤は常に二足歩行をしている人間特有の病気で、動物には存在しないと言われています.それは心臓から足までに流れた血液は静脈を通って1m近い落差を重力に逆らって上がらなくてはならないからです.
そのために静脈の内部には心臓に向かった血液が逆流しないように逆流防止弁が無数に存在しています.
ところが加齢、立ち仕事、妊娠・出産などにより逆流防止弁が機能しなくなり、血液の逆流が起こり“うっ血”を生ずるために下肢の血管が拡張しコブが生じてくるわけです.
詳しい治療方法は割愛させていただきますが、医療用弾性ストッキングの着用し病状の進行を抑えるほかに、静脈瘤内に血液を固まらせるクスリを注入し静脈瘤をつぶす治療(下肢静脈瘤硬化療法)、手術療法(高位結紮術やストリッピング手術)が行われています.
【下肢静脈瘤の予防法】
立ち仕事の多い人は意識的に足踏みや膝の屈伸運動をして足の血行をよくしましょう.
歩くことで足の筋肉が収縮し、静脈の血液が心臓に向けてスムースに上がりやすくなります.
寝るときは足を高くして寝るようにしましょう.血液の心臓への戻りが良くなります.
日中は医療用の弾性ストッキングやハイソックスを着用するのも良いでしょう.血行が良くなり冷え症予防にもなります.