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不眠について

先日、日本大学医学部板橋病院精神神経科 内山 真教授の講演を聴いてきました.テーマは『不眠症』でしたが内容が面白かったためトピックスも含めてお話したいと思います.一言に『不眠症』といっても『不眠症』には


1)        入眠障害:すんなり眠れない、布団に入ってから寝付くまで時間がかかる

2)        中途覚醒:ぐっすり眠れない、夜中に何度も目が覚める

3)        熟眠障害:十分な睡眠時間をとったのに熟眠感がない

4)        早朝覚醒:起きようと思っていた時間より早く目が覚めてそれから眠れない


の4つに分けられ、日本人の約21.4%が『不眠症』に悩んでいるそうです.薬物療法においても超短時間作用型から長時間作用型までのくすりを使い分けるわけですが、『不眠症』を訴えて受診する多くのかたは“グッスリと眠れない”、“朝、早く起きてしまう”といった内容だそうです.『不眠症』の訴えは高齢、健康感のなさ、ストレスやストレス対処不良、運動習慣がない、無職といったかたに多いそうですが、先生の話しによれば患者さんの話を良く聞くと床に入る時刻から出る時刻までは十分に取っているそうです.ただ、床に入ってから寝付けないために、自分の思っているほど寝ていないと感じてしまい不眠症だと思いこんでしまうそうです.そのため“慢性不眠症”となり“不眠恐怖症”に陥ってしまうのです.

睡眠時間はどのくらいがベストなんでしょうか?それは7時間です!

つまり…ほどほどの睡眠時間が良いんです!


統計的にも、睡眠時間が7時間のかたが高血圧症、糖尿病、メタボリック症候群のかかる割合が少ないと証明されており、それよりも短くても長くても駄目だそうでちなみに高脂血症のかたは6時間がベストだそうです.

糖尿病を例に挙げると睡眠不足のかたは食欲を増やすグレリンというペプチドホルモンが増加し、満腹感が得られるレプチンというペプチドホルモンが低下するために“肥満”が進行し、その結果インスリン抵抗性が増して糖尿病に陥ります.ここだけの話しですが、以前患者さんに「不眠症じゃ死なないから」なんて話したことがありましたが、高血圧症やメタボリック症候群の罹患率を考えると不眠症は生命を脅かす疾患なんですね!

それでは、くすりに頼らず生活習慣をどのように工夫をしたら眠れるのでしょうか?当たり前のことかも知れませんが以下のことを試してください.


1)        寝付く前にリラックス:軽い読書、ぬるめの入浴、アロマなど

2)       就寝4時間まえからカフェイン摂取をやめる

3)       就寝前1時間の喫煙をやめる

4)       眠くなってから床につく

5)       床に入ってから30分たっても寝付けなかったら一旦起きる:床の中で苦しむのを防ぐ

6)       規則的な起床時刻を守る:早起きが早寝に通じる

7)       光の利用でよい睡眠:目が覚めたら日光を取り入れ、体内時計にスイッチをいれる

8)              中途覚醒を防ぐ目的で適切な運動療法を行う


ここで先生が面白いデータを見せてくれました.各飲み物のカフェインの量です、


●   コーヒー一杯                110mg

●   コーヒー一杯(インスタント)  75mg

●   スターバックス(short)     250mg

●   スターバックス(tall)      375mg

●   スターバックス(grande)     550mg

●   紅茶・日本茶          40-60mg

●    コーラ             15mg


スタバのコーヒーってエスプレッソ系だからカフェインが多いのですね…

よく患者さんから睡眠薬は毒になるのでは?、習慣性は?、ぼけるの?って質問されますがいずれもNOです!

 

睡眠薬の作用には…

ω1(オメガ1)選択性:催眠作用・鎮静作用

ω2(オメガ2)選択性:抗不安作用・筋弛緩作用    の2つがあります.

よく使用される睡眠薬はω1の作用がω2の作用より強い薬剤が使用されるため、上記のような心配は少ないようです.但し、睡眠薬を服用するにあたり約束事が3点あります.


1)      寝床のなかでは7時間まで

2)      アルコールとの併用は禁止

3)      安定するまで毎日服用すること


以上の3点は守りましょう.但し、内山教授が申していたのは服用してから床につかないでいる場合には、ぼけるデータがあると言っていたような気がします.

逆に睡眠薬をやめる方法は…


1)      急に服用をやめず徐々に減量していく(半分や四分の一に割って服用)

2)      床上時間の見直し(最長7時間とする)

3)      休薬日を作る

4)      休薬日は眠くなってから就床する

5)      止めやすい薬(ω1選択性の強い薬剤)を使用     などです.


最後に余談ですが、昼寝について先生からコメントがありました.睡魔は生理的に日の出から7時間後ころに起こるそうです.15分未満が良いとか30分以上は駄目だとか言われていますが、あまり気にしないほうが良いでしょうとのことでした.但し、昼寝をするなら15時前にしましょう.


確かに夏より今の時期のほうが眠くなるのが一時間くらい遅いかな?眠くなる午後の時間をチェックしてみて下さい.面白い結果が出るかも知れません.