「さすがにセンセにはかなわんな〜」

「ま、当然の結果よね。無敵のシンジのシンクロ率は400%だもん」

トウジとアスカはテストの結果を聞くと感想を述べた。

ちなみにシンジは普通の服でLCLに浸かったので服をクリーニング中である。

「なんや悔しがるかと思たら

「バカね、シンジは特別なのよ。ま、あんたや私とは格が違うのよ」

自分のことのように誇らしげに言う。

「もっともシンジを除けばアタシが1だけどね」

「へいへいさいでっか」

「しかしプラグスーツ無し、コアの調整もまだでシンクロ率が90%を越えるとはさすがはシンジくんというところか」

冬月がデータを見ながら言った。

ゲンドウは黙ったままである。

「データは以前、初号機に使用したものをそのまま使いました。量産型用に調整し直せば更に上昇すると考えられます」

リツコは淡々と報告する。

「なんかすごいところに来ちゃった

「もう遅いわよ霧島さん。リツコに目をつけられたら逃げ出せないんだから」

「何か言った葛城一佐?」

「別に何も言ってないわよ赤木博士」

にこやかに笑みをかわすリツコとミサト。

二人に挟まれたマナは生きた心地がしない。

そこにシンジが戻ってきた。

拍手と口笛に迎えられ照れくさそうにするシンジの腕をアスカが引っ張って連れてくる。

「さっすがはシンジね。プラグスーツも無しであのシンクロ率!」

「ありがとうアスカ」

「ほんまやな、わしなんか足下にもおよばんわ」

「そんなことないよトウジ」

「どうだった久しぶりのエントリープラグは?」

「そうですね、やっぱりLCLは気持ち悪いです」

「我慢しなさい男の子でしょ」

ミサトはそう言って笑い出す。シンジも仕方なく笑う。

そのまま部屋中に笑い声が満ちる。

「次回のテストで連動試験を行います」

わかった。では後は任せる」

そういとゲンドウと冬月は消えた。

「第156回定期試験終了。みんなお疲れさま、あがっていいわ」

 

 

「ところでシンジくんのシンクロ率はどうして高いの?」

二人きりになったところでミサトが口を開いた。

さすがねミサト」

質問の意味を理解して微笑むリツコ。

シンジと初号機とのシンクロ率が高いのはわかる。だが、疑似的なコアしかない量産型エヴァシリーズで初号機並に高い数値を出すのはなぜか?条件はアスカでも同じではないか?ならばむしろ訓練期間が長いアスカの方が高くなるのではないか?

全てを知る者がゆえの疑問だ。現に技術部員の多くも単に初号機でシンクロ率が高かったから量産型でも高いのだろうという程度の認識しか持っていない。

推測の域だけど」

「構わないわ」

何も知らないよりはまし。それに推測とはいえリツコが口に出すということはかなりの確信を持っているということだ。

心を開く

「へ?」

リツコの言葉の意味がわからず変な声を出すミサト。

「言うなればエヴァに対してどれだけ心を開けているかそういうことよ」

………

「鈴原君はそもそもエヴァのなんたるかを知らないからあのシンクロ率。アスカはエヴァを拒絶する意識はないけど、代わりに弐号機とは違うという意識が根強く残っているはずよ」

じゃ、シンジくんは?」

「そうね。シンジくんはエヴァを認めているのかも知れないわ」

「エヴァを認める?」

「そう七号機をエヴァンゲリオン七号機という名の一つの生命体として認め心を開いているの」

「エヴァを認めて心を開く、ねぇ

 

 

「それにしても霧島。そんなん読んでようわかるな」

エレベータを待つ間も勉強中のマナを見てトウジが言った。

「う、一応多少の教育は受けてたんだけど、はっきりいってレベルが違いますね、あはは」

「でも程々にしておきなさいよ。もうすぐ期末試験でしょ」

「「うっ」」

トウジとマナがうめき声をあげる。

「やな事思いださせんといてくれや

「そうよ、アスカ。大学出てるあなたと違って私たちにとっては悪夢なんだから」

マナも普通の高校生に比べかなりの教育を受けているがそれはあくまでパイロットもしくは工作員向けの偏った教育だ。本式に大学を出ている二人とは違う。

「ふーん。そんなもん?でもシンジは落ち着いてるわね」

「え?」

3人の視線が集中する。

「あ、いや、ほら一応留学してたからそれなりに勉強もね

「そういえばどこで何してたか一つも聞いてなかったわね」

「え、あ、そうだね」

そのまま忘れて欲しかった)

「もしかしてシンジも大学卒業したとか?」

「そんなアホな、シンジに限って!」

「あ〜ら3バカトリオもこれまでかしら?で、どこ?」

「えーと

とりあえずシンジは『一つ目の』大学の名前を言うことにした。

「あーあそこか結構レベル高いわよね。やるじゃない」

アスカは簡単に言うがアスカの常識も一般とはややずれている。

「なぁ霧島、どっかで聞いたことあるんやが、そんなに有名な所か?」

「た、たしかアメリカでも1,2を争う工科大学だと思ったけど

 

 

期末試験の結果はアスカとシンジが同点一位だった。

アスカはシンジが同じ成績だというだけでそれから先を考える必要を認めなかったがかつてのシンジを知る者達は「そんな馬鹿なぁーっ!?」と悲鳴をあげ、学年上位を目指していた者達はこれからは常に順位が一番下がるという事態に衝撃を受けていた。

ま、当然の結果よね」

 

 

 

「それは本当か!?」

受話器に向かって冬月は叫んだ。

『ええ、事が事ですので赤木博士とシンジくんにも連絡をお願いします。では』

カチャリ

通話が切れると冬月は受話器を置いた。

「加持君からだ。

 フィフスチルドレンが見つかった」

ゲンドウは沈黙で答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【第伍話 五人目の適格者】