<外野席>

 

 

「きゃー!!」

「くー!シンジ何て真似を!!」

「シンジ大胆!」

「やるなセンセ!」

素敵」

驚く一同をよそにカヲルは微笑んでいた。

君たちの心はガラスのように繊細で本当に美しいね。僕にもそんな美しい心がいつか生まれるのかな君のようにねリリスそしてありがとうシンジ君)

 

 

そうよね、心配しなくても大丈夫。シンジはアタシを

唇が離れると残念な気持ちになるアスカ。

あ、アスカ。えーと

自分でやっておいて顔が赤いシンジ。

ま、まぁ謝らなかったのは合格よ

照れくさいのをごまかすアスカ。

アスカ

な、何よ?

かわいい

ぼそりと呟くシンジ。

アスカはその言葉を理解するのにしばし時間を要した。

「な、何言ってんのよ!」

真っ赤になって慌てるアスカ。

「はははは、ごめん。アスカ」

わかったわよ。シンジが信じるならアタシも信じてあげる。でも、アタシの弐号機を使った借りはいずれきっちり返してもらうわよ」

………

おまけにその弐号機を僕の乗る初号機と戦わせたなんて聞いたら血の雨が降るだろうな)

シンジは流血の事態を避けるべく対応を考え始めた。

 

「ま、今日の所はシンジの顔を立てて見逃して上げるわ!」

アスカは腰に手を当てきっぱりと宣言した。

「それはどうも。深く感謝するよ」

「何よ、その顔は?それにみんなも」

トウジ達は赤くなった顔を見合わせた。

「あぁそれはきっと二人の愛情表現を見たためだね」

「え?」

すっかりカヲル達の存在を忘れていたがあの光景は当然見られていると気付くアスカ。

きゅーっとつま先から頭のてっぺんまで赤くなるアスカ。

「君の心はとても純粋だね、好意に値するよ」

心持ちアスカに顔を寄せるカヲル。

「は、はぁ?」

「好きってことさ。惣流アスカラングレーさん」

『どっしぇーっ!!』

カヲルがエヴァのパイロットと聞いた時以上に大声で驚く一同。

「あ、あ、あんた何言ってんのよ!」

「カヲル!あんたますます混乱させてどうすんの!?」

「不潔よ不潔!不潔だわーっ!!」

センセも災難やな」

そうでもないよ。何となくこうなるだろうと思ってたから」

余裕だなシンジ。やっぱり白昼堂々とキスする奴は言うことが違う」

ケンスケ」

 

「ふーふー」

あ、悪夢だわ。なんなのよこいつは。ファーストより始末が悪いんじゃないの?)

「ま、まぁ落ち着きましょう。ようするにシンジを好きって言うのと同じ意味よね。友情よ、友情」

とりあえず場をおさめようとするマナ。

「そうなのかいマナ?」

「あんたのことでしょ!!」

思わずカヲルを締め上げるマナ。行動がとみにアスカに似てきている。

「シンジと惣流はともかく霧島もとんだお隣さんが出来て災難やな」

「トウジはどうなんだよ?」

「ま、わしはとりあえず蚊帳の外みたいやし、仲間がふえるのは心強いわ」

 

 

<ネルフ本部 ミサトの部屋>

 

「ミサト!!」

ドアを開けて仁王立ちのアスカ。

「あらアスカ、どうしたの?」

「どうしたもこうしたもないわよ!何なのよあいつは!?」

ミサトに詰め寄るアスカ。

「あいつって?」

「フィフスよフィフス!」

「あー渚君。そういやパイロットって言ってなかったわね〜」

心持ち目をそらすミサト。

たはは、やっぱりばれたか。当然ね)

「そうじゃなくて!」

その後ろからシンジが入ってきて軽く頷いた。

「あー彼1回死んじゃった件?」

けろんとしてとんでもないことを言うミサト。

「でも、シンジ君から話聞いて納得したんでしょ?」

「シンジが信じてるって言うからよ!!」

「じゃあ何?あ、そうか、ふーん」

ミサトが冷やかしモードに変わる。

「な、何よ?」

「シンちゃんと仲がいいのが気にくわないんだ〜」

「ア、アタシは別に!!」

「大丈夫さアスカ」

「あ、加持さん」

「シンジ君に限って心配無用さ。それに、白昼堂々、天下の公道でシンジ君にキスしてもらったそうじゃないか。それでも不満なのかい?」

「あ、な

またしても真っ赤になるアスカ。

「へーそうなの?やるわねシンちゃん」

ははは」

シンジはどうしていいのかわからず頭をかく。

「よかったわねアスカ。渚君よりアスカの方がいいって行動で示してもらえて」

アスカには言い返す言葉がない。

「でもシンジくんと渚君は一緒に風呂に浸かって同じ部屋で寝たことがあるくらいだし」

「ぬわぁんですってぇー!?」

「ネルフ本部の大浴場だよ!男同士なんだから風呂ぐらい入ったって問題ないだろ!?」

「それともアスカもシンちゃんとお風呂に入りたい?」

「え?」

「一緒の部屋どころか同じベッドの中で寝ても別にOKよん。あ、その先はあたしのいない時だけにしてね」

「な、何言ってんのよミサト!」

「あーら照れなくてもいいじゃない。アスカのお願いならシンちゃんはいつでもオーケーよ、ね?」

「ですからね?と言われても困るんですが
 

 

 

<マナの部屋>

 

「いやーおいしかったよ。すまないねマナ」

カヲルは笑顔で言った。

「ぜんぜんすまなそうな顔じゃないわね」

そういいつつマナは湯飲みをテーブルに置いた。
 
 

食料その他を買い込んだもののカヲルが生まれてこのかた料理をしたことがないと判明。

やむを得ず今日の所はマナの家でごちそうになると決まったのである。

ちなみに腕を披露しようとしたシンジは、

「アタシの弁当をあげただけで十分よ!」

と言うアスカに連行されてネルフ本部へ向かった。

「しかしカヲルって本当に人騒がせね」

「そうかい?」

とりあえず手伝わせてみたところ、ただやったことがないというだけで教えればすぐに出来ると判明したので数日基本レクチャーを行うことになっている。

「とりあえずお礼を言っておくよ。いろいろありがとうマナ」

「別にいいわ。ネルフに行ってないときは割と暇だし」

シンジの場合と違ってマナは見習い中である。普通に学校に通うかたわら少しずつ勉強し大学卒業後正式に再審査を行いネルフ配属となる。そのためネルフに行くのは週に数回。学習塾と同程度である。

「そうかい。ところで一つ聞いていいかい?」

「何?」

「君もシンジ君が好きだね」

それは質問でなく確認だった。

反論しようとしたマナだが、カヲルの瞳を見ると反論する気が失せる。

不思議な瞳。本当に変な奴ね。いつもいつも笑ってて)

まあね。もっともあたしは身を引いちゃったけど。せめてもの救いは負けた相手がアスカということね」

マナは素直に言った。

「そうかい」

カヲルはそれ以上何も言わずマナを優しく見つめた。

 

 

予告チルドレン部屋