事が事だけにアスカの怒りはおさまることを知らず、いくつも約束をさせられた後ようやくシンジは解放された。シンジも自分のミスなのでおとなしく聞く。

「…にしてもこのありさまとその拳銃は何なのよ?」

落ち着いたアスカが質問した。

シンジは叱られている間に考えておいた言い訳を言う。

「リツコさんにもらったんだ。撃っても当たらないだろうけど銃を向けるだけでも威嚇効果があるからって。こっちはいろいろな弾丸。ま、下手でも大丈夫なようにってね。何かの時のための護身用だって。ま、せっかくもらったんだから手入れぐらいしようかと思って…」

ほどほどに真実が混ざっている嘘は信憑性があり、アスカは納得した。

「で、いつのまにか危ない妄想の世界に入ってしまい、そこにアタシが来たというわけね」

「ごめん」

「ま、いいわ。約束は忘れないでね」

「わかってるよ。…でも、早かったね?アスカのお風呂の時間を見計らってやってたのに」

「そりゃそうよ、まだ髪も乾かしてないし、第一服も着てない…」

「あ、本当だ」

アスカは別に裸というわけではない。

おなじみの赤いバスタオル一枚をまいただけの格好である。

今更恥ずかしがることもないとは思うがアスカは真っ赤になって部屋を飛び出ていった。

「…結局何しにきたんだろう」

 

「で、シンちゃん。アスカに何したの?」

ミサトがいつもの調子で聞いた。

「別に何もしてませんよ」

「本当に〜?」

「本当ですよ。間違って銃口をむけちゃいましたけど」

「ちょっとシンちゃん。だめじゃない!」

ミサトの口調が厳しくなる。

「すいません。どういうわけかアスカの気配に気付けなかったんです」

反省するシンジ。

「そうじゃなくてアスカなら銃で脅したりしなくてもいつでもOKよ」

「「ミサト(さん)!!」」

「あ、アスカ」

「まったく何馬鹿なこと言ってんのよ」

パジャマに着替えたアスカがミサトをにらみつける。

「あら本当のことでしょ。シンちゃんは奥手なんだからはっきり言わないと…」

「ミサト!!」

「やーねー冗談よ」

「うそつきなさい!」

「ところでアスカさっきは何の用だったの?」

「………」

赤くなって黙り込むアスカ。

結局、何の用だったのかはわからずじまいだった。

 

 

 

 

<修学旅行当日、京都駅前観光バス車内>

 

「ミナサンコンニチハ」

「初めまして、これから私たちがみなさんのお世話をさせていただくことになります。運転手はジュリアン・アンダーソン」

「ジョニーってヨンデクダサーイ」

陽気に手を振る運転手。

「ガイドは私ジャネット・コリンが努めます。なにぶん新米ですので至らないこともあるかと思いますがどうぞよろしくお願い致します」

そういってバスガイドが会釈すると生徒達から拍手と口笛が上がった。

「ついてるね、こんな美人のバスガイドさんとは」

ケンスケは早速撮影にいそしんでいる。

「国際化ってこんな所でも進んでいるんですね」

マユミはうんうんうなずいている

「どうしたのシンジ?」

しっかりシンジの隣の席を確保したアスカが言った。

「な、なんでもないよ」

眉間をおさえてシンジ。

「いやー奇遇だねシンジ君」

わかっているのかいないのかカヲルが前の席から身を乗り出し言った。

「京都観光するのに黒人の運転手に金髪のバスガイド…こんなミスキャストをよく考えるわね」

ミサトも頭痛をこらえていた。

(…おまけに何よこのバスは!)

「シンちゃーん、ちょいちょい」

シンジを手招きするミサト。

「あ、ごめんアスカ。ミサトさんが呼んでるみたいだ」

「もう、しょーがないわね」

ミサトの隣、マヤと一時席を替わって二人は顔を寄せた。

「…気付きましたか?」

「…当たり前よ。このガラス見て、撤甲弾でも撃ち込まなきゃ傷一つつけられないわよ」

「ということは」

「やっぱり…」

 

ネルフ本部の研究室で二児の母親がくしゃみをしたとかしないとか。

 

 

 

京都観光中