<ネルフ本部発令所>

 

 

技術部長赤木リツコ博士はご立腹だった。

言ってみれば蚊の群に取り囲まれているようなものだ。うっとうしくて払っても払ってもきりがなく、たまに刺されると痛いわけではないが腹が立つことこの上ない。おまけに

うちの可愛いお嫁さんをさらっていくなんていい度胸じゃない!!)

日頃沈着冷静、ともすれば冷酷で通っているリツコの心の中はゴゴゴゴゴゴと音を立てて煮えくり返っていた。

作戦部長葛城一佐が同じ心境であるのは想像に難くない。

(くわばらくわばら)

今、二人が同じ場所にいないのは実に幸運だと日向は感じていた。

「伊吹一尉からです」

ジョニーのバスと合流したのだろう、マヤからの連絡が入る。もっとも簡潔な電子メールだけだが。

「それじゃ反撃開始といくわよ。飛んで火にいる夏の虫という言葉を身をもって教えてあげるわ」
 
 





<軍用ジープ車中>





『ピーピー』

音がしたのはシンジのトランクだった。

「あ、リツコさんみたいです」

リツコ? いっ?」

ミサトの見ている前でシンジがトランクを開くと簡易端末当然、並のコンピュータではないが立ち上がる。

(まぁた、趣味に走ってるわねぇ)

スパイ映画の小道具のようなトランクの中身を見て嘆息するミサト。

「やっとつながったか」

「やっと? まさか本部にもなにか?」

加持の声を聞いて、ミサトの顔が一層険しくなる。

「ま、ちょっとした嫌がらせだな、あれは。さぞかしリっちゃんはご立腹だろうよ。シンジくん運転を代わってくれ」

「わかりました」

一旦停止し交代したシンジの運転で走り出した車の助手席で加持は端末を操作する。

回線を開くとすぐさま膨大なデータが表示される。

「この回線は大丈夫なの?」

「衛星を介してはいますが、一応バスのマヤさんに直結です。その先は同様に本部のリツコさんへ」

「この回線に割り込む時は1分毎にマシンの買い換えを検討した方がいいシンジくん、ナビにデータを送る。誘導に従ってくれ」

言いながら加持は端末から通信ケーブルを引き出す。

「わかりました」

「それにしても戦自は何やってんのよ!?」

ミサトはまだ怒っているようだ。

「道をあけてるのさ、相手が逃げやすいようにな」

3人を乗せたジープは山道へ向かって疾走していった。

 

 

 

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