声のした方角に振り返るアスカ。

蒼い瞳が一人の少女の姿を認識する。

 

「レイ?違う。ファースト綾波レイね」

 

制服姿のレイが立っていた。

14歳のままの姿で。

その体はぼんやりとしていて白く光っているようにも見える。

いいえ、ファーストの体が白いの?

 

『何を願うの? 何を望むの?』

無表情に繰り返すレイ。

相変わらず愛想が無いわね」

一人じゃないと分かって安心したのか少し落ち着いた口調で話すアスカ。

「いったいここはどこなの? どうしてこんな所にいるの? 知ってるなら教えなさいよ!」

かすかにレイの視線がうつむく。

そう、あなたは覚えていないの。それとも忘れたの?』

そうだ、こいつはこういう付き合いにくい奴だったんだ。

そう思いつつ頭をかくアスカ。

とりあえず記憶にないわね、こんなわけわかんないところ」

ここは世界の一つの形。碇くんが願った世界の一つ』

シンジが?」

シンジが願った? こんな何もない寂しい世界を?

『本当よ。世界は一度はこの形になったの』

「一度は?」

『碇くんが最後に願った世界が今の世界の形。あなたが当たり前と感じている世界の形』

アスカは考え込む。

レイはじっと待っている。

アスカは顔を上げると言った。

サードインパクト?」

『すべてのヒトが一つの存在になり互いの欠けた心を補完し合う。

 それが心の補完。

 それが人類補完計画』

………

アスカは黙って聞いている。

『ヒトは一つになった。

 でも、また別れた。

 それに耐えられないヒトは消えてしまった。

 それがサードインパクト』

………

『一つになった心は傷つかない。でも、それは同時に例えようもない孤独』

………

『他人が存在するから初めて自分が存在する。

 他人と触れ合うことでヒトは怒り、哀しみ、傷つく。

 でも喜び、楽しみ、笑うことができる。

 他人を、何より自分を完全に理解することはできない。

 でも、だからこそ理解しようとヒトは努力する。

 だから碇くんは願った。

 再び、心の壁・ATフィールドが自分と他人を分かつことを』

「それが

『それが碇くんの願った世界。碇くんが望んだサードインパクト』

「シンジの願い、シンジの望み

アスカは繰り返すように呟く。

レイは再びアスカを視線で射抜くように言った。
 
 
 
 
 
 

『あなたは何を願うの? 何を望むの?』
 
 
 
 
 
 
 
 

 

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