<京都郊外山中>

 

 

爆発音と爆風が静かな山中を震わせた。

「あいたたた

念のために樹を背中にしてよかったと思うシンジ。

発砲直後の反動でシンジはまっすぐ樹に叩きつけられた。

それでも素早く立ち上がり銃を構え直す。

やっぱりリツコさんの言うことを信じないで試し撃ちしとくんだった」

そう苦笑混じりに呟いた顔が厳しく変わると黒煙を上げて燃えるヘリの方向へと身を躍らせた。
 
 

………リツコは拳銃にミサイルでも詰めてんの?」

相変わらず無茶な物を作る親友の顔を思いつつ中腰で走るミサト。

樹々が開けると、前方に人影が見えた。

ヘリの方に向かって銃を構えている。

少女の姿は無い!

「おんどりゃあああ!!!」

腰だめにライフルを一斉射。叫ぶ必要はまったくないし、むしろまずいのだが

(要は気合よ!)

数人をなぎ倒しすぐに林に隠れる。

こっちに注意を向けた男達が今度は別方向から掃討される。

「アスカはまだ車の中、ね」

確認すると再びライフルを構えた。

タイミングを合わせてトリガーを引き絞ると小気味いい音と共に弾丸が放たれた。
 
 

「敵は二手だ!」

「少人数だ! 近くの部隊を呼べ!」

車の中に叫ぶ。

「とっくにやっている!! だが、応答がないんだ!!」

直後、離れた山中でいくつもの爆発が起こる。

「ちっ!」

ようやく事情を悟り舌打ちする男。

一人が車の後ろに回ってサブマシンガンを構える。すでに車外には二人しか残っていない。

「一人ずつ各方向を牽制しろ! 俺は人質を出す」

そういってアスカの方へ向き直ろうとした男の耳にターン、ターンと軽快な音が聞こえた。

「なっ!?」

外にいた二人が宙を舞い車のドアに叩きつけられた。

割れたガラスが男に降りかかる。

「新手か!?」

拳銃を構えて運転手が助手席の方を伺う。

ターン!

男の目の前で運転手の首から上が見えない拳に殴られたかのように水平に横ずれした。

そのまま運転手は運転席側の窓に叩きつけられガラスを突き破る。

残るは自分一人。

外をうかがうとライフルを構えた人影が別々の場所に二人確認できた。

距離があるし木陰のため拳銃で狙撃するのは難しい。

もう一方、ヘリの燃える助手席側はわからない。だが、運転手は助手席側から撃ち抜かれたのだ。

(わざと姿を現しているところをみると二人は囮か?)

身を低くしてゆっくりと後部座席のドアをあける。

(このまま、外に這い出て娘を引きずり出し盾にする。後は奴らの車を奪うなりなんなりすればいい)

そう考えながら男はドアの外に身を乗り出した。

そっと辺りをうかがう。

敵の気配はない。

一瞬気がゆるむ。

「!?」

男が反応するより早くその身体は車の天井に叩きつけられる。

わずかに遅れて骨が粉々に砕かれる音がする。

ドサッ

空中で絶命した男の身体はそのまま重力に引かれ落下した。

「ふぅ」

シンジは掌底を振り抜いた体勢のままで地面に横たわった身体を起こすと加持とミサトに手を振って合図した。

何のことはない。ドアの陰になって見えないであろう地面の上を凄まじい速度で這い進んで男がドアを開けるのを待っていただけだ。

男の死体をどけて後部座席をのぞき込む。

アスカは反対側のドアにもたれてすやすやと眠っていた。

よかった」

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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