<2年前 第三新東京市>
<ネルフ本部>
「冬月先生……後を頼みます」
「ああわかっている…………ユイ君によろしくな」
男達は最後の挨拶を交わす
「でも! その時は人なんていなかったんですよ!?」
チュイーン!!
「馬鹿! 撃たなきゃ死ぬぞ!!」
生き方を変えれない女、叱咤する男
「あんたまだ生きてるんでしょ!
だったらしっかり生きて、それから死になさい!!」
身動きしない少年、引きずる女
「ちっ! 言わんこっちゃあない!」
「奴ら加減ってものを知らないのか!」
「ふ、無茶をしおる」
「ねぇ! どうしてそんなにエヴァが欲しいの!?」
震撼する発令所で男達と女
「死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤーッ!!」
それでも捨てられない生にすがる少女
「ママーッ!!」
探し求めていたものの居場所を見つけた少女
「負けてらんないのよぉ!!
あんたたちにぃ!!」
真紅の鬼神と化す少女
「いいシンジくん
ここから先はもうあなた一人よ
すべて一人で決めなさい
誰の助けもなく」
「僕はだめだ
だめなんですよ
人を傷つけてまで、殺してまでエヴァに乗るなんて、そんな資格ないんだ
僕はエヴァに乗るしかないと思ってた
でもそんなのごまかしだ
何もわかっていない僕にはエヴァに乗る価値もない
僕には人のために出来る事なんて何もないんだ!」
「アスカにひどいことしたんだ、カヲル君も殺してしまったんだ
優しさなんかかけらもない
ずるくて臆病なだけだ
僕には人を傷つけることしかできないんだ……だったら何もしない方がいい!!」
「同情なんかしないわよ
自分が傷つくのが嫌だったら何もせずに死になさい」
「うっ……」
「今、泣いたってどうにもならないわ!」
「うぅ……」
「自分が嫌いなのね
だから人を傷つける
自分が傷つくより人を傷つけた方が心が痛いことを知っているから
でもどんな想いが待っていてもそれはあなたが自分一人で決めたことだわ
価値のあることなのよシンジくん
あなた自身のことなのよ
ごまかさずに自分に出来ることを考え、償いは自分でやりなさい」
「ミサトさんだって、他人のくせに! 何もわかってないくせに!」
「他人だからどうだってのよ!?
あんたこのままやめるつもり!?
今、ここで何もしなかったらあたし許さないからね!
一生あんたを許さないからね!!」
「今の自分が絶対じゃないわ
後で間違いに気付き、後悔する
あたしはその繰り返しだった
ぬか喜びと自己嫌悪を重ねるだけ
でも、そのたびに前に進めた気がする
いいシンジくん
もう一度エヴァに乗ってけりを付けなさい
エヴァに乗っていた自分に
何のためにここにきたのか、何のためにここにいるのか
今の自分の答えを見つけなさい
そして、けりを付けたら、必ず戻ってくるのよ」
「約束よ」
「……うん」
「いってらっしゃい」
「大人のキスよ、帰ってきたら続きをしましょう……」
少年と女、戦友として家族として姉弟として恋人として、そして……
「こんなことならアスカの言うとおりカーペット替えとっきゃよかった
ね、ペンペン……」
「…………加持君、あたしこれでよかったわよね」
白き少女に看取られ女は爆風に消える
「う……ぐ…………ぐぐ…………ぐ」
手に握りしめた十字架と紅に少年は慟哭する
「お待ちしておりましたわ」
「赤木リツコ君本当に 」
「…………嘘つき」
一組の、あるいは二組の男女の終焉
「ロンギヌスの槍!?」
驚愕する少女
「エヴァ弐号機、沈黙……」
「……なにこれ? 倒したはずのエヴァシリーズが」
「エヴァシリーズ活動再開……」
「とどめをさすつもりか?」
「うっ!」
「どうした!?」
「……もう見れません! 見たくありません!」
「こ、これが、弐号機!?」
あまりの惨状に目を背ける女、それでも確認せざるをえない男
「殺シテヤル殺シテヤル殺シテヤル!」
溢れる殺意を口にする少女
「シンジ君! 弐号機が! アスカが! アスカが!!」
「だってエヴァに乗れないんだ、どうしようもないんだ」
悲鳴を聞きながらも何もできない無力な少年
「母さん?」
自らに力を与えてくれる存在を再び認識する少年
凄まじい爆発音と共に地面を突き破って光の羽が立つ。
その羽を広げて初号機が昇っていく。
「エヴァンゲリオン初号機!?」
「……まさに、悪魔か」
地上に姿を現す初号機。
エントリープラグの中で少年はただ外を見ていた。
「アスカ」
その目に地獄絵の様な光景が映る。
弐号機が……それはすなわち少女が
少年は断末魔の悲鳴を上げた。
「うああああああああああ!!!!!!!」
「あああああああああああ!!!!!!!」
「あああああああああああ!!!!!!!」
THANATOS -IF I CAN’T BE YOURS-