ケーキが切り分けられ、料理に舌鼓を打つ一同。

相変わらずの美味しい料理に食べることに没頭したくなるのだが、とりあえずミサト達が酔っぱって収拾がつかなくなる前にとプレゼント攻勢が始まる。

 

一番手 鈴原トウジ&洞木ヒカリペア

「おめでとさんシンジ」

「おめでとう碇君」

「ありがとうトウジ、委員長」

「なーに気にすん…わかっとるがな。せかすな委員長」

ヒカリに肘でつつかれトウジは手に持った紙袋から厚い本を取り出す。

「わいと委員長からのプレゼントや」

「何?」

「壱中の卒業アルバムよ」

「え!?」

「時間はえろうかかったんやがなんとか中学の内に学校が再開したけんな、卒業アルバムもあるんや。けどセンセは途中でおらんなってしもたからもらえんかったやろ」

「一人一冊だからね」

「でも、これは委員長かトウジの…」

「だからわいらからのプレゼントや。わいは見たくなったら委員長の所に行くよって」

「二人で決めたの。碇君もアスカに見せてもらえばいいのかも知れないけど、また急にアメリカに行くようなことがあるかも知れないしね」

「…うん、わかった。ありがたくもらうよ。二人ともありがとう」

 

二番手 相田ケンスケ

「おめでとうシンジ、これは俺からのささやかな贈り物だ」

大きなブリーフケースを手渡すケンスケ。

カサカサ音がする所からして何か入っているようだ。

「ありがとうケンスケ、中を見てもいい?」

「ああもちろんだ、くくく」

ケンスケの不気味な笑いを気にしつつもケースを開けるシンジ。

中からは大量の写真が出てくる。

「!?」

一目見て素早く中身を戻すシンジ。

「なぜ隠すんだい?」

加持が尋ねる。

「え、えっとそれは…あっ!」

加持に気を取られている隙に絶妙のコンビネーションでケースを奪うミサト。

そのままとっとと中身をぶちまける。

「あ、ミサトさん!」

「あらあら」

そういいつつミサトは写真を広げる。

「ちょ、ミサト!!」

アスカも慌てて写真を隠しにかかる。

写真にはシンジとアスカが二人で写っていた。

ただ普通に写っていたのではなく腕を組んだり、抱き合ったり、キスしたり…

「ケンスケ!」

「秘蔵品だ、大事にしてくれよ」

ケンスケの眼鏡が怪しく光を放った。

 

三番手 霧島マナ

「はい、シンジ。あたしのプレゼントはこれよ。大事にしてね(はあと)」

「あ、この帽子…」

マナの差し出した白い帽子を見て思い出すシンジ。

「ちゃんと覚えててくれたんだ〜」

満面の笑顔を浮かべるマナ。

「う、うん」

「そーよね。あたしがシンジと初デートしたときの帽子だもんね〜」

そういいつつアスカの方を見て、その姿勢のままで言葉を続ける。

「あの頃はまだアスカと付き合ってなかったはずだからシンジも初デートの相手はあたしよね〜?」

ぷるぷるぷるとアスカが震えている。

握りしめた拳からして懸命に怒りを堪えているらしい。

「…やるわね霧島さん」

「なるほどただでは引き下がらないというわけね。

 撤退するにしても弾は全部使い切って敵をさんざんたたいておくタイプか。

 リツコ、こっちの方に譲る気ない?」

「あらこちらにも新しい風を入れなきゃね」

「ありがとうマナ、大切にするよ」

「うん」

と、帽子を置いた瞬間シンジはがっし、と襟首をつかまれる。

「ア、アスカ!?」

そのままシンジはアスカに連行されていった。

「お大事に〜」

マナはひらひらと手を振って二人を見送った。

 

四番手 山岸マユミ

「はい、碇君。お誕生日おめでとう」

そういってマユミは紙袋を手渡した。

「ありがとう山岸さん。何が入ってるのか聞いてもいい?」

山岸さんなら安心だ、そう思ってのんきに尋ねるシンジ。

「ええ、もちろん。アスカさんとおそろいのエプロンよ」

「エ、エプロン!?」

おもわずひきつるシンジ。

「ア、アタシとおそろい?」

こちらは赤い顔で何を考えているのかわからないアスカ。

「ええ、二人で仲良く台所に立って料理をして…」

どこか遠い目になるマユミ。

「あ、あの山岸さん?」

「マユミ?」

「…ちょっとごめんなさい」

マユミの目にペンライトの光を当ててのぞき込むリツコ。

「…駄目ね」

 

五番手 日向マコト

「よし、俺は隠し芸を披露しよう」

そういっておもむろに上着のボタンに手を掛ける日向。顔はかなり赤い。

『きゃー!!』

女性陣が一斉に悲鳴を上げる。まぁ当然だろう。

「よっぱらってんじゃないわよこの馬鹿!!」

人のことは言えないミサトの裏拳炸裂。

誤解を解く間もなく日向は床に沈んだ。

(…あぁ俺の腹芸が)

諸般の事情により中止。

 

六番手 青葉シゲル

「とりあえず、俺からは一曲プレゼントしよう」

青葉はおもむろにギターを取り出すと歌い出した。

「あら、結構やるじゃない」

アスカが言った。

思ったよりもうまい。オリジナルにしては歌も悪くない。

演奏が終わると皆から拍手が送られる。

パチパチパチパチ

「い、生きてて良かった…」

 

七番手 ネルフ技術部師弟ペア

「これは私と先輩からよ」

そういってマヤはノートパソコンを出した。

学校で使っている物と外見上の違いはない。

そう、あくまで外見上は。

もっとも学校のノートパソコンですら既にリツコの手が多分に入っているのだが…

「あの…リツコさん?」

「ふふふふふ。シンジくん、今回のはいい出来よ。マヤのおかげで発想の転換も出来たしこれだけのノートパソコンは世界中のどこを探しても存在しないわ」

「私と先輩の努力の結晶ですもんね」

「あ、ありがとうございます」

(…このノートパソコン一つで松代くらいはクラックできるんだろうなあ)

 

八番手 加持リョウジ

「シンジくん。俺からのプレゼントだが…」

喧噪の隅をついてそっと話しかける加持。

「すみません加持さん」

答えるシンジも小声で、その視線は加持の方には向けていない。

二人が会話していることに気付く者は誰一人いない。

数々の窮地を絶妙のコンビネーションでくぐり抜けてきた二人ならではだが、こんなときまでやるなという意見もまた存在する。

「いやなに、実はまだ君に教えていないことがある。

 後でこっそり教えてあげるからそれでプレゼントに変えよう」

「教えていないこと?」

「そうだ。男として学んで置くべき事柄だ。もっともシンジくんにはもう必要ないかもしれないがな」

にやりと笑う加持。

「…なにかよからぬことを考えていません?」

「人聞きが悪いなあ。ま、みんなが酔いつぶれたらおいおい話してあげよう」

繰り返すが誰一人気付いていない。

 

九番手 渚カヲル

「おめでとうシンジ君」

「ありがとうカヲル君」

(…もう何でもこいだ!)

そろそろ諦めがついてヤケになりつつあるシンジ。

「僕からは熱い抱擁…」

ドゲシッ!!

予想通りの展開はマナの右ストレートによって中断された。

「あんたの冗談はシャレになんないのよ!!」

「マ、マナ、僕は本…」

グシャッ

アスカが倒れたままのカヲルを踏みつけた。

「あんたはもういっぺん死んできなさい!!」

ゲシゲシ

そのまま蹴りを入れるアスカとマナ。

「ひ、人の歴史は哀しみで綴られているね…」

「「わけわかんないこと言ってんじゃないわよ!!」」

彼の名誉を守るために言っておくが、彼は断じてホモではない。

だが、二人の少女にとってはどちらであろうと同じ事であるのも間違いない。

それを後目にミサトがシンジに近寄っていく。

 

 

プレゼント後半戦