※このページは郁カイリのホームページの一コンテンツです。
以下の小説にはBL・やおい・耽美と呼ばれる表現が含まれています。

すべては熱のせい

2/2

 目が覚めると、愛甲のドアップがあって、俺は危うく大声を上げそうになった。奴は俺の動揺をよそに静かな寝息を立てている。以前、勢いでセックスしてしまったときにも感じたがこの男は本当に面構えがいい。神様というのは本当に不公平だな、などと目の前の男をやっかんでいると、ふいに愛甲の瞼の薄い皮膚が動いた。長い睫毛が開いて目が合ったと思ったら、奴は途端に眉間に皺を寄せて「ぎゃぁああ」と耳をつんざく大声を上げた。俺は我慢したのに遠慮のない奴だ。
「お、お前、何でッ」
「何でも何もお前が寒い寒いってうるさいから一緒に寝てやっただけだろ。居てくれっていったのてめぇじゃねーか」
 居てくれとは言ったが、寝てくれとは言ってないことをこいつは覚えていないに違いない。覚えていたら、さっさと俺を足蹴にして布団から追い出しているだろうから。現にバツの悪そうな顔をして愛甲は視線をさ迷わせた。そして照れ隠しに言ったセリフが、
「顔、ちけーよ」
 ぐいと額を押されて俺は苦笑した。「はいはい」と素直に頷いて上体を起こす。愛甲はパジャマを着ていたが、俺はトランクス一丁で、肌を撫でる冷たい空気にぶるっと両手を抱いた。
「もう秋だな、寒ぃ寒ぃ」
 俺が、目覚めに煙草でも吸おうととサイドテーブルに手を伸ばした時に、右側に寝ていた愛甲も身体を起こしたようだった。ようだったと表現したのは、奴の気配が動いたのを感じたからで実際には見ていなかったからだった。だから奴が俺の足を乗り越えて上半身を伸ばしてきた時には驚いてしまった。まるで俺の腰に抱きついてきたのかと一瞬錯覚してしまったがそんなわけはなく、奴もサイドテーブルに置いている自分の煙草をとろうとしただけだった。
 太もも辺りに愛甲の体重を感じているうちに妙な気分になってきた。寝起きで乱れたパジャマからは腰がはだけていて、なんだかうなじ辺りからも芳香が漂ってくるような気さえしてくる。本当は汗臭いだろうに。
 だから愛甲が俺にのりあげたまま「おい、勃ってるぞ」と低い声で言ってきたときには思い切り動揺してしまった。
「朝起ちだ」
 苦し紛れにそう言ったが、もちろん愛甲は信じていないような目をこちらに向けてきた。そりゃそうだろう。何かの間違いとはいえ、前科があるんだし。
「お前、ホモか」
 軽蔑したような声で言われて俺は「生理現象だ」と喚いた。喚きながら、愛甲の腰が何気無く退いていくのに気づく。まさかなと思いながら意図的に足を動かすと、ごりっと硬いものが当たる。「お前こそホモか?」
「生理現象だ」
 苦々しく言いつつも愛甲は煙草をとろうと手を伸ばす。下着が少し下がっているのか、腰が更に伸びたときに、腰から尻の辺りが見えそうで。割れ目の影を感じた時、思わず手が動いてしまった。
「ぅん、ぅうっ」
 びくっと愛甲の背中が仰け反った。俺が尻が見える隙間を指で撫でた為だった。この声がまた魅惑的で、足に当たってた愛甲のそれもピクと動いたもんだから俺としては調子に乗ってしまった。
 遠慮なく指で蕾に触れると、ぬるりとした感触と共にずぶりと入ってしまった。過去ローションを使ったときよりもスムーズだったかもしれない。
「解熱の坐薬でもこんなになるもんなの?」
「しるか、ぁああ、ん、よせ高嶋ッ、」
 自分の指をくわえ込む体内は凄く柔らかく、抵抗なく包み込むその感触に俺は興奮してしまい、奴の後ろを犯しながらもパジャマをめくりあげて背中を舐め上げていた。
「ぁあ、そんな、とこ」
 嫌だ嫌だと首を振りながらも奴が俺に向かって尻を上げる姿を見て思わず笑ってしまう。どうやら体調不良で遊ぶのを控えていた為に相当溜まっていたとみえる。
「なぁ、もっと、」
「もっと?なに?」俺がすっとぼけて首を傾げると、奴ははっと我に返ったような反応をしたが、どこか開き直ったらしく悲鳴に似た声を上げた。
「察しろッ」
「はいよ」
 俺は苦笑しながら愛甲の背中を攻め、蕾に差し込む指を増やしていった。
「ん、ぅん、あ、もうちょっと上」
 鼻から甘い息を吐きながら愛甲が要求してきたが俺はそれを無視した。なぜならこいつは本当に気持ち良さそうで、爆発しそうな俺の分身が不満だったからだ。
「なあ、そろそろこっち向けよ」
 自分も気持ちよくなりたかった俺としては、過去の過ちであるあの快感を思い出し、ますます興奮していった。腕を引っ張って正面を向かせると、愛甲が俺の足を跨いで座り込む。見れば、俺のものと愛甲のものが向かい合ってそそり立っている異様な光景。
「うぁあホモっぽい」
 二つの肉棒を見下ろしながら俺がちょっと引いていると、愛甲は俺の首に腕を回してきて、ふふんと笑った。
「それでもお前は萎えてない」
 おや。前回と違ってずいぶんな開き直り方だ。俺がそう思っていると早速唇を奪われた。唇をしゃぶられながら、俺が呆れたように「ずいぶん積極的だこと」と牽制を入れると、愛甲は俺の歯茎を舐めながら「もっと気持ちよくなりてぇだけ」と本音を漏らした。
「なるほど」
 俺は変に納得して、お互いの舌を絡ませながら、二本の肉棒をさすりあげた。
「ぁ、あ、高嶋、もっと優しくッ」
 眉間に皺を寄せながら訴えてきた愛甲の顔を見て俺は我慢がきかなくなった。腋の下に手を入れると、察した愛甲が腰を上げて、俺の分身の上に尻を乗せて来る。ちょうど先っぽに愛甲の熱を感じて、蕾がぴくぴく動いて俺を飲み込んでいく。
「あ、やっぱり、すげ、」
 俺が呻くと、愛甲は興奮したまま俺の唇をしゃぶり続けて腰を下ろしていく。どうやらかなり快感に飢えているらしい。俺の手を持って自分のものをさするように誘導してくる。先ほど言われた通りにソフトにすりあげると、愛甲は「はぁあ、あ、あ、いい」と嬌声を上げながら自ら腰を動かしていく。俺の首を抱く腕は筋肉質で、腹にも贅肉はない。突っ張っている太ももとふくらはぎもスマートな筋肉がついていて、股関節が大きく開かれて俺の上で上下する。
逞しい体、男らしい整った顔。そんな完璧な男が俺を求めて喘いで、球のような汗をかいている。
「いいっ、男だなッ、お前ッ」
 言いながら自ら腰を振ると、より深いとろこをえぐったのか「ぁ、ああ、深ぃッ」と身体を仰け反らせた。ゆらゆらと上下に揺れる肌にのる乳首をしゃぶり、愛甲の肉棒をさすり続けると、息を詰めた声と共に、ぎゅうと蕾が急激に締また。
「ぁああああぅっ」
 白濁した生暖かい液が俺の腹を汚し、奴は何度も痙攣し、俺もその波に煽られるように、愛甲の体内に全てを注ぎ込んだ。

「ああ最悪だ。平静ではなかったとはいえ、一度ならず二度までも」
 ベッドで身体を起こしながら忌々しく愛甲がそう呻く。腋の下には体温計が挟まっていて、ピピと電子音が鳴ると、その数字を奴は眺めた。
「あー、すげぇ熱だ。お前のせいで悪化しやがった」
「そりゃ悪かった。俺も夢で白石さんとイチャこいてたもんで、ついうっかり」俺はそう言いながらスーツに袖を通す。「今日も休むか?」
「ああ休む。課長には全然熱が下がりませんと言っておいてくれ」
 顔を歪めてそう言うと愛甲は頭から布団をかぶってしまった。
 俺はネクタイを締め終えると、何気無くベッドサイドの体温計を覗き込んで苦笑した。
「なるほど。こりゃあ高熱だ」

読了ありがとうございます!

ヘンタイ行為シリーズにするつもりが、なぜか違う方向になってきました(苦笑)
ヒネクレもの同士、相性がいいってことで。

もし作品を気に入って頂けましたら、下のWEB拍手にてご感想お待ちしております。

template by AZ store