タイトル


再生にはQuickTime3.0以上が必要です
QuickTime VR パノラマムービーの作成には複数の画像のつなぎ合わせからムービーへの変換まで結構手間がかかります。これらの作業を統合的に、しかも簡単に行ってくれる専用の市販ツールとして、本家AppleのQuickTime Authoring Studio(Mac対応)の他にPhotoVista(Win/Mac対応)やQuickStitch360(Win/Mac対応)などがあります。サードパーティ製の製品は$60程度と比較的安価なので本格的にやってみたい人はこれらのツールの導入をおすすめします。今回はこれらのツールを使わずにPhotoshopと無償で提供されているQTVR Make Panorama 2のみを使って、お金はかけずに根性で作成する際のコツをまとめてみました。
C-900ZOOMのページでQuickTime VRパノラマムービーを製作した際、つい「後日作成のコツをまとめる」などとと書いてしまったのですが、実際まとめはじめるとムービーを作るより大変な作業になってしまいました。これを読んで実際に試していただける方が一人でもいたら作った甲斐があったというものです。

STEP1 撮影

カメラを一定の角度で少しずつ回転させてシャッターを押しながら360度ぐるりと撮影します。撮影には本来三脚を使用することになっています。三脚の水平回転軸の中心とカメラのレンズの焦点をぴったり合わせてカメラを固定するのが理想です。さらに回転角度も正確に計りながら撮影を行ったほうがいいみたいです。しかしこのような仕様を満たすには三脚の改造が必要ですし、三脚をわざわざ持ち歩くのも大げさですよね。面倒なので手持ちで撮影することにします(笑)。

手持ちで撮影する場合、回転角度など測りようもないので、シャッターを押す際にファインダーから見える景色の左端(または右端)になにか目印を決めて、次の位置を写す際にその目印がある程度オーバーラップするようにして順に写してきます。なるべくオーバーラップする部分を多くとって、小さい角度でたくさんの枚数をとったほうが、最終的に画像のつなぎあわせ部分がより自然になります。そのことからもカメラを縦位置でかまえたほうがいいかもしれません。またホワイトバランスを固定できるデジカメの場合オートではなく固定で撮影しましょう。これにより各画像の色合いのバラツキを最小限に抑えることが出来ます。

さて、たいていのデジカメは普通のファインダーと液晶ファインダーがついてますね。液晶ファインダーを使う場合はどうしても腕を少し伸ばしてカメラを体から離した状態で撮ることになります。その状態で体を回すと、体の回転中心から離れた位置でカメラを振り回すことになり、理想からかなりかけ離れた状態になります。そこで考えました。まずカメラのレンズ付近からおもりをつけた糸を垂らします。地面には回転中心の目印として石ころでも置いておきましょう。デジカメから吊したおもりと地面の目印が触れるか触れないかの高さと位置を保ちながら、あくまでもデジカメを中心に、体のほうをぐるりと回転させます

なお、最終的に作成するムービーは320×240ドット程度なので、デジカメの撮影モードはVGA(640×480ドット)程度で十分でしょう。 

STEP2 歪み補正

ズーム付きデジカメを使い広角側で撮影すると、撮影画像が全体に「たる型」に歪む場合が多いようです。今回使ったC-900ZOOMも結構歪みが大きいです。このままでは画像をつなぎ合わせた箇所が不自然になってしまいます。まず画像毎にこの歪みを補正しておきましょう。なお、この球面フィルタを用いた補正テクニックは、少し前の日経MACの記事で紹介されていたものです。

  1. Photoshopで画像を開く VGAより高い解像度で撮影してしまった場合はここで「イメージ」→「画像解像度...」で640×480に縮小しておきましょう。
  2. レイヤーに移す レイヤーパレットの「背景」をダブルクリックして、レイヤーを作成し画像をレイヤーに移しておきます。
  3. 画像サイズを広げる 後工程のフィルタ作業のために画像の周囲に透明な余白を作成します。「イメージ」→「画像サイズ...」で1000×750程度のサイズを指定します。
  4. 球面フィルタをかける 「フィルタ」→「変形」→「球面...」フィルタをかけます。ここで「高さ」指定を-10%〜-20%程度の範囲で指定します。デジカメの機種によって歪みが違うので、事前にタイル壁などを撮影してちょうどいい適用量をきめておきましょう。C-900ZOOMでは-15%で行いました。フィルタ適用後は画像の歪みがまっすぐになるかわりに、画像の外枠は弓なりに曲がってしまいますが、どうせ後でトリミングするので放っておきましょう。

補正前
補正後

STEP3 合体

準備した画像を全部横一直線につなぎ合わせて、超ワイドパノラマ画像を作ります。この画像のつなぎ合わせが一番根気のいる作業です。例えば画像が9枚あったとして、1と2をつなぎ、それに3をつないで…と順番につないでいったとします。接合部が不自然にならないように細心の注意を払い、傾けたり、変形させたりと悪戦苦闘しながらなんとか1から9までなんとかスムーズにつながったとします。ここであなたは衝撃の事実の前に唖然して言葉をなくすでしょう(笑)。そうです、1から9までの間でいろんな誤差が積み重なって9から1へ戻る部分のつなぎ目が全く合わないのです。だいたい超横長パノラマ画像の両端がスムーズにつながるようにするにはどう作業すればよいのだろう?と頭をかかえてしまいました。そこで考えたのは、1の画像を真ん中付近で2つに分割してパノラマ画像の両端に配置する方法です。もともと一つの画像だったのですからぴったりつながるのは当然です。その手順を紹介します。

  1. ベースとなる画像を用意 撮影した枚数からだいたいの仕上がりサイズを計算して、少し大きめに新規の真っ白な画像を用意しておきます。
  2. 分割例両端になる画像を配置 1枚目の画像の左側だいたい半分を矩形選択ツールで選択して(右図)、移動ツールでそのまま1.で用意した白紙画像の右端のほうにドラッグしていって左半分の画像をコピーします。元の画像に戻って、「選択範囲」→「選択範囲を反転」で残りの右半分を選択した後、同様に移動ツールでドラッグしてずっと離れた左端に置きます。横長画像の両端に泣き別れとなったこの画像ですが、両者の高さはきっちりそろえておきましょう。ガイドを表示させて、それにスナップさせれば簡単に高さをそろえられます。以後、この両端の2枚の画像は水平方向の移動以外の変形・移動は厳禁です。
  3. 残りの画像を配置 残りの画像を2.で配置した2枚の画像の間に順番にとりあえずラフに並べていきましょう。各画像はそれぞれ別のレイヤーに格納されるので、後で個別に自由に動かすことができます。
  4. 重ね合わせ削除の例位置微調整 順番に根気よく位置あわせしていきます。重ね合わせる際、上側になるレイヤーの不透明度を一時的に70%ぐらいにすると、下になる画像がうっすらと透けて見えて位置あわせが楽です。移動ツールで上下左右に動かすだけで、意外とぴったりと合わせられるものです。どうしてもうまく合わない場合に限り、自由変形ツールや回転ツールで画像を個別に調整しましょう。なお、デジカメの画像は周辺減光により画像の縁が少し暗いので継ぎ目が不自然になりがちです。画像の位置合わせ後、上側となる画像の重なっている部分の重ね合わせしろの半分ぐらいを残して目立たないところでカットしてしまいましょう(あまりぎりぎりでカットしすぎないように)。
  5. 位置合わせ例最後の部分の位置合わせ 右の処理前の図を見て下さい。1から順に5まで画像をつないだらかなり全体に下にずれてしまっています。これでは5と1がうまくつながりません。1を動かすわけにはいかないので、2〜5をひとかたまりとして全体に回転させます。まずどれだけ回転させればよいかをものさしツールで測定します。回転角度が求まったら2〜5のレイヤーをリンクさせた後、「編集」→「変形」→「数値入力...」を使って2〜5のブロックを一気に回転させます。あとは必要に応じて2と5を変形させて(1は触らない)位置合わせ完了です。

STEP4 色調補正

色調補正の例位置はぴったりと合わせたのに、画像のつなぎ目がまる見えなのは各画像の撮影時の露出が微妙に違うからです。こんな時は「イメージ」→「色調補正」→「レベル補正...」を使います。プレビューを見ながらレベル補正の中間調のスライダを左右に動かしてみて、最も境目が目立たなくなったところで止めます。色あわせの基準は2つに割って両端に配置した1枚目の画像です。この画像はいじらずに、他の画像をこれにあわせていきます。

イメージ図
これでほとんど境目は目立たなく出来ますが、さらに境目を目立たなくするために上側になっているレイヤーの重なっている部分をぼかす手順を説明します。まず上側となるレイヤーを選択して「レイヤー」→「レイヤーマスクを追加」→「すべてのレイヤーを表示」を実行します。これで選択したレイヤーにレイヤーマスクが追加されました。次にグラデーションツールを選択して、重ね合わせしろの範囲内で画像の端から内側に向かってマウスでドラッグします。これで上側の画像のエッジ部分にグラデーションのマスクが作成され、上の画像はエッジに向かうに従い徐々に透明になり下の画像が透けて見えるという具合になります。

STEP5 前処理

以上で画像のつなぎ合わせは完了しました。レイヤーを統合して、画像の周りの余分な余白を取り除くために、切り抜き(トリミング)を行います。トリミング後、適当にレタッチを施したい人は満足のいくまでレタッチして画像の見栄えを良くして下さい。次に「イメージ」→「画像解像度...」を選択して、現在の画像サイズを見て下さい。偶然でも幅が96の倍数、高さが4の倍数になっていた人はラッキーです。そうでない人はそのように合わせなければなりません。画像解像度のダイアログボックスに現在表示されている幅の値をいったん96で割って、小数点を切り捨てた後再度96をかけて、その値をダイアログボックスに入力します。高さは自動的に計算されてしまうので4の倍数になっていなくてもそのままにして、解像度を変更します。高さが4の倍数になっていない人は「イメージ」→「画像サイズ...」で高さが4の倍数になるように数値を入力します。当然画像の上下が数ドット切り取られてしまいますが、これぐらい気にしない気にしない。

最後に画像全体を90度反時計回りに回転させて、JpegまたはPICTで保存します。これで前処理は完了です。

STEP6 変換

設定画面例まずアップルのサイトからQTVR Make Panorama 2をダウンロードしましょう。起動したら先ほど保存した画像を読み込みます。すると右図のような設定画面になるのでムービーのサイズと圧縮アルゴリズムを指定して[Create]ボタンを押すだけです。画像と同じフォルダに目的の「画像ファイル名.mov」ができあがっているはずです。これで完成です!!


ホームページに戻る