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生きているということは、それだけで素晴らしいこと。 生きているということは、それだけで、この上なく辛いこと。 真実か、嘘か。どちらが本当なのか、どちらも本当ではないのか。 そんなことは、誰一人、知らない。 なんのために、生きているのだろう。 ふとした拍子にそんなことを思ってしまえば、呼吸することすら耐え難くなる。自分の鼓動さえ、感じるのが嫌になる。 大切な人を喪って、誰一人、そばから消えてしまわないことはあり得ないと、痛いほどに知り尽くしていて、どうして自分は生きていられるのだろう─────。 あたしは、一人で生きていられるほどには。 ツヨクモ、ニブクモ、ナレナイノニ。 どうして。 もう二度と喪いたくないと、狂おしく願う想いが叶わないことも分かっていて。それでも希うことを止められないのは、何故………? それは────。 あなたの声を、聞きたいから。 名前を、呼ばれたいから。 あたたかな温もりに包まれる幸福を、思い出してしまったから。 名前を呼ぶ、呼ぶことを許される至福を、知ってしまったから。 許容してもらえること。 自分が、自分にとって誰よりも大切な人の「特別」であるという、夢のような喜びを、知ったから。 だから────────。 もう少しだけ、そばにいて。 あなたの、そばに、いさせて。 名前を呼んで。 名前を呼ばせて。 優しく、強く触れて、抱き締めて────? もう、少し。 どうか、あと、もう少しだけでいいから。 絶対に避けられない、あなたを喪う未来を思うことを、やめられるまで。 絶対に解けない縺れた糸を引きちぎって、あたしの心が永遠の平安を手に入れるまで。 だから、あと少し、あなたのそばにいさせて。 あたしだけのそばに、いて。 温もりを求めて、腕を伸ばして、触れる気配にどれほど安堵するか。そして、触れた鼓動がどれほど愛しいか。 そして。 それが、どれほど怖いか。 引き裂かれそうな、二律背反を、あなたはきっと理解しない。 だから。 依存していくことを止められない心と、絡め取られていく魂と。 囚われた優しく堅固な檻から解き放たれる前に。 自分が壊れてしまいたい、と、思った。 |
シリアス病再発中……(爆)これのナルサイド(あるのか?……あるんです……というよりそっちが元)はもっとダークです………(遠い目) 2001.5.9 HP初掲載
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