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抱き寄せられた温もりの中、髪に、額に、こめかみに、瞼に、頬に。 数え切れないほど幾つも降ってくる、キスの雨。 名前を呼ぼうとして動いた唇は指先で、そしてやわらかい口づけで封じられた。 幾度も繰り返されるうちにキスは甘くなる。 それが深まれば呼吸は奪われて、酸素を補給するためにキスが途切れる。 その間すら惜しみたくなるのは、一時だけ隔てる空気の中で混じり合う、乱れた呼吸さえ甘いからか。 「キスが甘いって感じるようになったの、いつからだろう‥‥‥」 再び重なりそうになった唇の先で囁かれて、ナルは軽く眉を顰めた。 「は?」 「ナルは、最初から甘いって思った?」 問いを重ねた琥珀色の瞳は、甘やかな熱を孕んで僅かに潤む。 「どうだろうな」 軽く受け流したナルの指先が、麻衣のあごをとらえて軽く仰向かせる。 それには抗わず、麻衣は笑った。 「‥‥‥あたしは。甘いどころじゃなかったから」 「そうなのか?」 「うん。‥‥‥‥怖いとかそういうんじゃなかったけど、どきどきして壊れそうなくらいだった。‥‥‥なんか、上手く言えないけど、緊張してたのかな」 くすり、と軽く笑って、ナルは麻衣の耳元に口接けを落として囁く。 「それなら、今は?」 「‥‥‥‥甘いかってこと?」 「そういう話じゃなかったのか?」 口づけが、降る。 こめかみから、目の端に、頬に。 瞳の焦点が合うぎりぎりの、至近距離。 「甘い‥‥‥‥ていうのかな‥‥‥‥‥?溶けそう、かも」 「‥‥‥それは嫌か?」 「嫌そうに、見える?」 珍しく冗談交じりの問いかけに、笑みを交えてかえして。 吐息まで搦め取るように、互いを捕らえた。 自ら囚われる─────蕩けそうなキスの、甘い罠。 |
‥‥‥‥えっと(遠い目)。‥‥‥‥た、たまには、ゆ、許され‥‥‥ないですね(吐血)疲れてるのかな、私‥‥‥‥‥(乾笑) 2001.3.13 HP初掲載
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