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原点と道程と、そして。




道のない道を、あるく。

必死で切り開いて、前を目指して。
最初は見るもの感じるもの全てが楽しかった道程が、ひたすらに前しか見えない道に変わる。

暗い森を抜け、明るい草地を過ぎて、そして時には底なしの沼に堕ちて、這い上がって。
精一杯、前を目指す。

いつのまにか、手は、傷だらけになる。
痛みも苦しさも、それでも感じない。
感じてしまえば、一歩も進めなくなる恐怖が、無意識に胸裡を支配したから、自分のことさえもう分からずに、ただがむしゃらに道をひらく。

その道が、すでに道ではなくなっていることに。
自分が、どこにいるのか分からなくなっていることに。
そして。
なんのために歩き出したのかさえ忘れたことに。
気付かないまま────。


唐突に崖縁に在ることに気付いて、途方に暮れて立ち止まった。
もう、道はひらけない。
一歩踏み出せば、真っ逆様に落ちてしまうだろう。その先は────考えるまでもない。

どうしよう、どうしようどうしよう。
疑問符ばかりが心を駆けめぐって、ただそこに立ちつくす。
引き返すにも、むやみに歩いてきた道は、覚えてなどいない。

ぼろぼろの身体に、傷だらけの手に漸く気付いて、今更のように襲ってくる痛みが耐え難くなる。
足元の、淵を見下ろして、そして後ろを振り返る。


足元には、底も窺えぬ深い淵。
うしろには、ただ広がる暗い森。
はるか崖の向こうは、靄に霞んで、何があるのかも分からない。


私は、どうすればいい?
私は、どうやって来たんだろう。
私は、どこから来たんだろう。
私は、私は………。
私は、何のためにここに入り込んだんだろう。

私は、何を目指していたんだろう。

あんなにも、必死に。
傷ついた手を、暗い淵に吸いこまれそうな足元を、漠然と視界に入れて、けれどもう何も見えない。
見失ってしまったものはあまりに大きかったから、探そうという努力さえできなかったから。


目的も、原点も。
自分自身さえも見失って、呆然と立ちつくす。


どうすれば。






どのくらい、竦んでいたのか分からない。
偶然に、乾いた瞳を前に向けて────。

目を、瞠る。

その瞬間に靄が開けて、その向こうに光が見えた。
ほんの一瞬だけ射した光。
なにが在るのかは分からない。
けれど、その光を見た瞬間に、思い出す。


どこから来たのか。
なんのためにここに入り込んだのか。

そして、何を目指していたのか。



ほう、と息をついて、いつの間にか地面に座り込んでいた身体を引き起こした。
歩き出さなければならない。
淵は確かに深いけれど、探せばきっと渡ることができるだろう。
どうしてもわたれなければ、一度底に降りて、それからまた登ったってかまわない。

まだ、みちは遠い。
そして、きっと容易ではない。
傷はまだ癒えないし、そしてまた増えるだろう。


けれど、目的は思い出したから。
原点も、もう忘れないから。


痛みも苦しみも止められなくても。
時々は立ち止まっても、また呆然と座り込んでも。

きっと、最後まで、歩き通せる。
すぐそばにある淵に堕ちたりはしたくない。


遙か遠くまで連なる道は、やっぱり道のない道だけれど。
でも、それは。
どこまでも自分だけの道だから。




 ………無謀。(おいおい)
いきなりオリジナルでものろーぐ……。我ながら無謀だと思います(きっぱり)←自分で言うな。……いや、純粋にストレス発散だったりするんですが。ですが………。
 ……novelページっていう看板変えよっかな……(かなり本気)
2002.6.25 HP初掲載
 
 
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