2001.09.15 MacOS X Files サード Pilot


Mac OS X,初のメジャーアップデート10.1にむけて
●2001.09.15
 去る7/18,Macworld Conference & Expo/New York 2001が開催された。基調講演でSteve Jobs氏はMacOS Xの初のメジャーアップデート版である『MacOS X 10.1』を紹介した。いままでの基調講演はたいてい新ハードウェアの紹介に時間が割かれていたが,今回の基調講演はこのMacOS X 10.1の紹介が殆どを占めた。これはAppleが現在,何を必要として,何を目的にしているのかがはっきりとわかっている現れではないかと思う・・・。いかに速いマシンやデザインの美しいマシンを発表してもソフトウェアがなければコンピュータはただのオブジェでしかない。そしてAppleは世界で唯一のコンピュータ総合メーカーなのだということを自他共に再認識することが必要な時期なのではないだろうか。・・・もしAppleがWintelユーザを取り込みたいと考えているなら,ハードウェアの性能面での優位性を唄うのはナンセンスだ。クロックギャップ(メガヘルツ神話)を覆すことはおそらく無理である。現在のAppleのハードウェアは出来る限り業界標準規格を用いるため,常に最先端のWintelマシンには1世代の水をあけられている。しかしこの枯れた既存技術の導入は信頼性,コストパフォーマンスに大きく貢献しており,現在のAppleの運営を支える一因となっている。そしてブランド力を最大に活かしアピールすることはマーケティング面でそのことを補い,更に成功させている。・・・しかし,ITバブルがはじけ,業界は先の見えない暗雲に包まれている。Appleはこの危機をどう打開するのか。Jobs政権は変革の時期を迎えている・・・。Appleが今すべきこと。・・・それはMacOS Xに全力を注ぐことである。
 
 半年前,Steve Jobs氏はデジタルハブ構想を発表した。これはデジタルカメラやポータブルプレイヤーなどのデジタル機器をMacを中核としたネットワークで,Macが周辺機器と連携しデジタル機器のハブとしてさまざまなデジタルデータを管理する役割を果たすというもの。コンシューマ視点から見るとなんでもないことだが,これはコンシューマをターゲットとした戦略である。コンシューマコンピューティングの変化に適応しようとすれば自然な流れなのかもしれない。MacOS X(Mac)の最大のターゲットはコンシューマなのである。最近ではiMovieiTunesiDVDAppleWorksなど,基本ソフトだけでなくコンシューマ向けのソリューションを具体化していることもデジタルハブ戦略の重要な部分だ。しかし,ここまでは他のWintel系メーカもやっている。が,Appleが他メーカと違う所は,ソフトからハードまですべて自社製品でパッケージできるということがある。これには自社ですべてのサポートができるのでユーザもサポートが受けやすく安心感できる。ハードウェアラインナップが限られているので製品サポートが比較的容易である等の利点がある。それから,コンシューマとは別にプロシューマ向けラインナップも持っていることも挙げられる。コンシューマ製品とプロシューマ製品を完全に分け,もしユーザがコンシューマ製品からステップアップしたい時,速やかにプロ用ソリューションを提供できるのである。ただその反面,閉じたコミュニティになりがちで業界のデファクトスタンダードになりにくい。他メーカ,サードバーティ(周辺機器)との連携が難しいという弱点もある。この弱点を補うにはMacOS Xの成功は必要不可欠なのだ。
 なんでもないことをそれらしく書くのは疲れる・・・のだ(^_^;。

 実は正直言って自分は今までMacOS Xを殆ど使っていない・・・。パッケージバージョンの10.0をインストールして少し使ってみた程度で一時期の熱い思いはなくなっていた。MacOS X対応機種を持っていないということもあったし,その後MacOS Xのために買ったPowerMac G4/400 GigabitEtherは手放してしまった。10.0.4までアップデートはしてみたものの,そのアップデート作業でしかMacOS Xを使っていないという全く本末転倒な使い方をしていたので無理もない。なぜ自分にはMacOS Xが受け入れられないのだろうか?・・・・・。思いついたものを挙げてみる。

1.動作が遅い。 従来のMacOS等に比べて圧倒的に遅い。以前,MacOS 7.6から8へ移行した時も同じ事が起こったが今回はその時とは比べものにならないぐらい桁違いに体感速度が遅い。ウィンドウリサイズには枕を濡らした。
2.機能が少ない。 MacOS 9で出来ていたことができない。不便になった。なぜウィンドウシェードをやめてしまったのか。ダブルアローは?ポップアップウィンドウは?フォルダーナビゲーションは?。Dockは面白いけど・・・。
3.いまいち不安定。 アプリが落ちても他のアプリやOSに支障を来さないのはよくわかったけど,それが解りすぎるほどアプリがよく落ちすぎる。「アプリは落ちたけど他には影響ありません」とか得意げに何回も言われても・・・。原因不明の不都合も多い。PowerBook G3では起動にやたら時間がかかったりしたあげく起動できなくなったり,PowerMac G4ではなぜかカーネルパニック画面が起動5回に1回は出ていた。
4.周辺機器がほとんど使えない。 最近の周辺機器しかサポートしない。古いマックも無視。PCI MacユーザとしてはUnsupported UtilityXに期待するしか。
5.付属ソフトのデキが悪い。IEは劣悪。クラシック版を付けた方が良かったのでは。 ほとんど実用的なものがない。使えるのはIEとMailぐらい。IEは動作が怪しいし遅い。Mailは今まで使っていたOEからデータをインポートしたが落ちる落ちる。AppleScriptのインポートも試したがダメ。メールを開こうとすると落ちる。原因はよくわからないけど,「使えない」ってことはわかった。ブラウザとメーラがダメならちょっと救いようがない。*10.1にはIE5.1の完成版が同梱されるらしいので期待
6.Macらしくない。 Macってカンジがしない。気持ち悪い。UNIXの知識がない自分のような人には敷居が高い。SYSTEMフォルダもお手軽にいぢれるものでなくなってしまった。今までの常識が通用しない。
不満たらたらの表

 しょうがないことやいろいろ理由もあるだろうけど,これを製品として出してしまうのはちょっと問題があるのではないか(まだMacOS Xは製品として完成の域に達していないことはAppleも解っている)と思う。でも長い目で見ればあの時点で発売したということは正解のような気もする。Appleは一つの節目を作りたかったのかもしれない。おそらくある程度の所で決断しないと,最高を求めるが故に開発期間がダラダラと延びてしまい,結局一向に仕様が固まらないものになってしまわないとは限らない。コア部分が固まった所で,Appleは早急にMacOS Xを世間に示す必要があった。それが10.0の役目だったのではないだろうかと今となっては思う。
 Public Beta版が出た後,ユーザに意見を求めてその要求を実装した形で製品版としたすばやい対応には感心したし,MacOS Xのフレキシビリティの高さも伝わった。でもアップルメニューがない,Dockにメニュー機能がないなど,Public Beta版は明らかに文句が出ることを承知で公開した気がする。さてテスターたちはどう出てくるかな?と様子を伺っている感じ。なんかいやらしい。それで結局従来のMacインターフェイスに妥協した。10.1ではメニューバークロックまで復活するらしい。結局デスクトップ上での新機能はDockのみということになる。
 Dockは確かに美しいし新鮮なインターフェイスでMac OS Xの一つのシンボルだと思う。けどDockにあまりにも固執しすぎてAppleはなにかを見失っている気がする。従来のMacOSのインターフェイスは装飾こそ少ないものの直感的に操作できるストイックなインターフェイスを持っていた。そしてその仕事をやったのはApple自身であって,そしてそのインターフェイスにはそれが当然であるというような説得力と自信が感じられた。だから僕はMacを選んだ。MacOS XがMacらしくないと思うのはまさにそういうところ。優れたインターフェイスこそMacのMacたる所以。MacOS Xはそれを軽視しているように思えてならない。

 とまぁ,実は文句は付けやすいMacOS Xなんだけど(^_^;,なんで自分がすんなり移行できないのかはたぶん現行のMac OS 9があまりにも安定しているし,ソフトもハードもちゃんと動くし,それにやっぱり慣れているし。ってことでわざわざ不便感じて移行する必要がないってことかな。でもMacユーザはたいてい新しくてかっこいいものには目がない人種なのでその辺はDockやAquaは効果的。だから僕の移行も時間の問題(^_^;。はやくMacOS Xとお友達になりたいなぁ。
 ・・・2001年9月,今月中にMacOS X初のメジャーアップデート10.1(コードネーム:Puma)が登場する。β猶予期間はもう終わった。はたしてどんなやつなのか?期待しつつPowerBook G3/233のHDDを交換して歓迎するつもりである。




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