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カネダ著作権事務所

著作権関連記事

アメリカ連邦著作権法における著作物の具体例

著作物の例示

アメリカ連邦著作権法(以下、「米国著作権法」といいます)においても、具体的な著作物の例示規定が置かれています(102(a))。これによれば、「著作者の作成に係る著作物」(works of authorshipには、次に掲げるカテゴリーのものを含むとしています。
なお、以下のカテゴリーはあくまで例示的列挙であって、これら以外のものの著作物性を否定する趣旨ではないことはわが国と同様です。

① 言語の著作物(literary works
② 音楽の著作物(これに伴う歌詞を含む。)(musical works, including any accompanying words
③ 演劇の著作物(これに伴う音楽を含む。)(dramatic works, including any accompanying music
④ 無言劇及び舞踊の著作物(pantomimes and choreographic works
⑤ 絵画、図形及び彫刻の著作物(pictorial, graphic, and sculptural works
⑥ 映画及びその他の視聴覚著作物(motion pictures and other audiovisual works
⑦ 録音物(sound recordings
⑧ 建築の著作物(architectural works

著作物の具体例

以下、順に解説していきます。

① 言語の著作物

「言語の著作物」とは、言葉や数字で表現される、視聴覚著作物以外の著作物をいいます(101条参照)。フィクション(小説)、ノンフィクション、詩、論文、レポート、テキストブック、演説原稿などが典型的な「言語の著作物」の範疇に入ります。もっとも、「脚本・台本」(script)については、アメリカでは、後述の「演劇の著作物」の範疇に入ります(わが国では「言語の著作物」(著作権法1011号)に入る)。
著作物が収録される有体物(例えば、書籍や定期刊行物、原稿、レコード、フィルム、テープ、ディスク、カード等)の性質は、言語著作物性の認定に影響を及ぼさないとされています。

「言語の著作物」には、その定義規定からも明らかなように、「数字で表現される」(expressed in numbers)著作物を含むため、「コンピュータ・プログラム」―「ある一定の結果を生じされるために、コンピュータにおいて直接に又は間接に使われる一連の文又は命令」と定義されている(101条)―は、米国では、「言語の著作物」のカテゴリーに入ります。ちなみに、わが国では、「コンピュータ・プログラム」は、「プログラムの著作物」(著作権法1019号)に分類されます。コンピュータ・プログラムには、ソースコード及びオブジェクトコードのいずれも含むと解されます(TRIPS協定101参照)。

(コンピュータ)データベースに関して、米国著作権法は、著作権の対象として具体明示的には列挙していません。しかし、データベース(databases)又はデータの編集物(compilations of data)は「言語の著作物」として保護され得るというのは「立法の経緯」(the legislative history)から明らかであると、一般的に理解されています。データベースはまた、「編集著作物」(101条)の1形態としてその要保護性を捉えることができると解されます。

② 音楽の著作物(これに伴う歌詞を含む。)

「音楽の著作物」に関しては、米国著作権法上、定義規定はありません。通常の語感で捉えられる「音楽作品(楽曲)」(musical compositions)を想定して差し支えないと思います。「音譜」や、楽曲に伴う「歌詞」も、「音楽の著作物」に含まれます。
ただ、米国著作権法には後に解説します「録音物」という類型があり、少々紛らわしいところがあります。「音楽の著作物」の著作者(著作権者)は作曲家(歌詞を伴うものであれば作詞家も)ということになりますが、「録音物」の著作者(著作権者)は、通常、そこに録音されている音楽作品を実演(演奏・歌唱等)した者か、又はその録音物の製作者となります。この点については、「録音物」の解説で詳しく述べます。

③ 演劇の著作物(これに伴う音楽を含む。)

「演劇の著作物」に関しては、米国著作権法上、定義規定は設けられていませんが、一般的に、演劇(演技)、映画の脚本、ラジオ・テレビの台本等がこれに該当します。演劇に伴う音楽も「演劇の著作物」のカテゴリーに入ります。「著作隣接権」という概念を持たない米国著作権法のもとでは、役者・俳優の「演技」は、「演劇の著作物」に該当するものとして「著作権」による保護を受けることになります。
わが国には「演劇の著作物」というカテゴリーはなく、「脚本」や「台本」は「言語の著作物」(著作権法1011号)に、「演劇に伴う音楽」は、「音楽の著作物」(同1012号)にそれぞれ該当するものとして、著作権による保護が与えられています。一方、役者や俳優などの「演技」は、「実演」(著作権法213号)に該当するものとして、「著作隣接権」によって保護されます(著作権法891項参照)。

④ 無言劇及び舞踊の著作物

これらについても定義規定は置かれていませんが、パントマイム(the art of imitating or acting out situations, characters, or other events)やバレイ・ダンスの振付け(the composition and arrangement of dance movements and patterns)がこれに該当します。また、この振付けを演ずる者(ダンサー)の当該実演も、「舞踊の著作物」に該当するものとして「著作権」による保護を受けることになります(米国では「著作隣接権」という概念がない)。
なお、スポーツの試合での選手の動きやエアロビは、「舞踊の著作物」に該当しないものと解されます。

⑤ 絵画、図形及び彫刻の著作物

「絵画、図形及び彫刻の著作物」のカテゴリーに入るものにとしては、次のものがあります(101条)。
なお、平面的か立体的かは問いません。
・純粋美術作品
・グラフィックアート作品
・応用美術作品
・写真
・版画
・美術複製品
・地図、地球儀、海図、図表、模型、建築設計図のような技術的な図面
・美術工芸品
・所定の絵画的、図形的又は彫刻的な特徴を取り込んだ実用品のデザイン

以上は、法律の条文(定義規定)に明記されている例ですが、次のものも、一般的には、「絵画、図形及び彫刻の著作物」のカテゴリーに入るものと解されます(アメリカ著作権局の公開資料による):広告、ラベル、造花、Tシャツなどについている絵柄、ステッカー、風刺漫画、続き漫画(新聞等におけるいわゆる4コマ漫画)、コラージュ、人形、壁画、ゲーム(後述)、パズル、グリーティングカード、ポストカード、ホログラム、宝石のデザイン、モザイク画、刺繍、モンタージュ写真、ポスター、レコードジャケット、レリーフ、リトグラフ(石版画)、ステンドグラスデザイン、織物・レースのデザイン、タペストリーなど。

「実用品」(a useful article)とは、「単にその外観を示し又は情報を伝えるためだけではない、本来的に実用的な機能を備えた物品」をいいます(101条)。例えば、洋服や家具、機械、食器類、照明器具、乗り物などです。また、「通常の場合実用品の一部である物品」も「実用品」とみなされます。例えば、乗り物の車輪など。
著作権による保護は、このような実用品の「機械的又は実用的な側面」(mechanical or utilitarian aspects)には及びません。したがって、機械的又は実用的な側面のみに特徴を有する「実用品のデザイン」は、著作権による保護の射程範囲外ということになります(つまり、「著作物」に該当しない)。しかしながら、実用品のデザインが、「当該物品の実用的な側面とは別個に識別することができ、かつ、そのような側面から独立して存在することが可能である、絵画的、図形的又は彫刻的な特徴を取り込んでいる場合にのみ、その限りにおいて」、例外的に、絵画、図形又は彫刻の著作物に該当するものとして、著作権法上の保護を受け得ることになります。例えば、椅子の背もたれ部分に「彫刻」が施されている場合や、食器皿に花の「レリーフ」が浮き出ている場合、これらの「彫刻」や「レリーフ」は著作権によって保護される可能性がありますが、その椅子自体のデザイン、その食器皿自体のデザインは、通常、著作権によって保護されることはありません。つまり、「実用品のデザイン」が著作権法によって保護される場合、著作権が及ぶのは、あくまで「絵画的、図形的又は彫刻的な特徴を取り込んでいる」部分(上記の例で言えば、「彫刻」を施した部分、「レリーフ」が現われている部分)に限られ、その実用品全体の(形態の)デザインに及ぶことはないということです。
もっとも、この点は日本でも事情は同じですが、著作権による要保護性が認められない工業(産業)デザイン[意匠]と著作権による要保護性の認められる応用美術作品との境界線をどこで引くのかの問題は、必ずしも明確なものではありません(The line between uncopyrightable works of industrial design and copyrightable works of applied art is not always clear.)。平面的な絵画や図形、グラフィックデザインが、例えば、洋服の生地や壁紙、容器類などの上にプリントされている場合には、その絵画や図形等は、著作権による要保護性は認められると解されますが、一方、その実用品自体のデザインについては、上述しましたように、それがいかに機能的(実用的)に優れたものであっても、著作権による保護を受けることはできないと解されます。

「ゲーム」について(アメリカ著作権局の取扱い)
著作権は、「ゲーム」のやり方(アイディア)や名前(タイトル)を保護しません。したがって、ある新しい「ゲーム」が考案され公表された場合に、著作権法によっては、他の者がその「ゲーム」のアイディアをもとに別のゲームを開発することを禁止することはできません。著作権法は、具体的な「表現」を保護するものだからです。
ある「ゲーム」が考案され、それとの関係で、何らかの「表現物」、例えば、そのゲームの遊び方やルールを記述したテキスト(「解説書」など)や、そのゲームがボード(台)や容器を使ってするものであれば、そのボードや容器に描かれている絵やグラフィックデザインに、「(著作物性が認められる程度に)十分な量の言語的又は絵画的表現」(a sufficient amount of literary or pictorial expression)が含まれている場合には、その表現部分に応じて、当該「ゲーム」のアメリカ著作権局への登録を容認しているようです。

⑥ 映画及びその他の視聴覚著作物

「映画」及び「視聴覚著作物」については、定義規定が置かれています(101条)。簡単に言うと、「映画」とは、一連の関連する映像からなる「視聴覚著作物」をいい、「視聴覚著作物」とは、映写機のような機械・装置を使って見せることが本来的に意図されている一連の関連する映像からなる著作物をいいます。このように、「映画」は「視聴覚著作物」の一つとして位置づけられています。フィルムに固定された劇場映画、ビデオテープに収められたテレビ番組、DVDに収録されたゲームソフト(の映像部分)などは、いずれも「映画」に該当します。
一方、フィルムやビデオテープ、DVDといった有体物に固定されていない「テレビの生放送番組」は、「映画」及び「視聴覚著作物」のいずれにも該当しません。米国著作権法のもとで保護される著作物は、その種類を問わず、「有形的表現媒体に固定された」(fixed in any tangible medium of expression)ものでなければならないからです(102(a)参照)。

映画の「発行」(101条)について
映画について「発行」があったというためには、次のいずれかの場合であることが必要です。
① 複数の映画のコピーが販売やレンタル(リース)によって公衆に頒布される場合
② ある集団(卸業者、小売店、放送事業者、映画配給会社など)に対し、その後の頒布又は公の実演を目的として、映画のコピーが提供される場合(例えば、ある映画祭の開催中そこで上映するために映画のコピー(1部でも)を主宰者に提供すると、当該映画については「発行」があったものとして扱われる。)
映画の公の実演(例えば、映画館や教室での上映、映画のテレビ放送)があっても、それ自体では「発行」があったことにはなりませんので、注意が必要です。

⑦ 録音物

「録音物」とは、一連の音楽や会話その他の音声を固定することによって得られる著作物をいいます(101条)。その音声が収録(固定)される有体物の性質は問いません。典型的には、音楽やレクチャー(演説・講演)を録音した物(CDやテープ等の中のその音)がこれに当たります。もっとも、「映画その他の視聴覚著作物に伴う音声」については、「録音物」として保護されるべき音声から除かれています(映画に伴う音声は、一連の映像とともに「映画の著作物」を構成します)。

ある「音楽作品」について、特定の演奏がなされた場合に、その演奏がCDやテープなどの有体物に録音(固定)されると、その録音(固定)された音声が「録音物」となり、これが「著作物」となります。その録音された、もとになっている音楽作品(the underlying work)とは区別して考えなければなりません。

「録音物」は、「レコード」(101条)と同義ではありません。「レコード」は、物理的な物、すなわち著作物が収録される「有体物」(音楽や会話などが収録されているCDやカセットテープそのもの)であるのに対し、「録音物」は、レコードを含めて有体物に固定された「音声」(CDやカセットテープに収録されている音)という概念だからです。

「録音物」に対する著作権による保護は、一般的には、2つの要素を保護する方向に働きます。1つは、その「録音物」に固定されている実演を行った者(実演家)の貢献に対する保護であり、2つ目の要素は、その音声を捉えて(処理や固定をして)最終的な録音物を作成する責任を有する者(録音製作者)の貢献に対する保護です。この点、実演家やレコード製作者を著作者(著作権者)からはずし、「著作隣接権者」として扱う日本などの大陸法系諸国の著作権法の考え方とは大きく違っています(米国著作権法では、「著作隣接権」という概念自体を想定していません)。そのため、アメリカでは、この「録音物」に対する著作権による保護を通して、歌手・演奏家等の実演家やレコード製作者の保護が図られるという形になっています。
[アメリカ著作権局の見解]
「録音物の著作者とは、固定されている実演を行った実演家か、その音声を処理して最終的な録音物にその音声を固定する録音製作者か、又はその両者である。」
The author of a sound recording is the performer(s) whose performance is fixed, or the record producer who processes the sounds and fixes them in the final recording, or both.

⑧ 建築の著作物

1990121日に(著作権法の改正によって)著作権の保護客体に「建築の著作物」が追加されました。ここで、「建築の著作物」とは、「建築物、建築設計図、又は図面を含めて、何らかの有形的表現媒体に収録される建築物のデザイン」をいいます(101条)。そのデザインにおける、空間と要素の配列及び構成のみならず、その全体的形状を含むが、個々の標準的な特徴を含まないとされています。スタンダードな(標準的な)空間の配置、窓やドアなど建物を建てる際の主要な部品の個々のスタンダードな特徴、デザインや配置が実用性の問題から決まってしまうような機能上の要素には、「建築の著作物」に対する著作権は及びません。
わが国では、美術的な建築物(建物自体)のみが「建築の著作物」(著作権法1015号)の範疇に入り、「建築設計図」は「図形の著作物」(同6号)に該当しますが、アメリカでは、どちらも「建築の著作物」のカテゴリーに入ります。
[アメリカ著作権局の見解(米国著作権法規則202.11参照]
「『建築物』という用語は、人が住むのに適しており、かつ、永続性及び定住性の両方を意図して建造される構造物を意味し、例えば、住宅、オフィスビルその他人が居住するために設計される永続性と定住性を兼ね備えた建造物のことで、教会、博物館、望楼(見晴らし台)及びガーデンパビリオン(公園内に設置される休憩所)を含むが、これらに限定されない。
橋、クローバー型立体交差点、ダム、歩道、テント、キャンピングカー、(トレーラー式の)移動住居、船舶などの構造物は、「建築物」に該当しないものとして扱っているようです。
The term “building” means structures that are habitable by humans and intended to be both permanent and stationary, such as houses and office buildings and other permanent and stationary structures designed for human occupancy, including, but not limited to, churches, museums, gazebos, and garden pavilions.

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