Kaneda Copyright Agency
カネダ著作権事務所

著作権関連記事

『著作権登録の活用事例集』

~活用事例その1:著作者であることの公示~ 

著作権取引(ビジネス)の円滑化を図る

Aさんは、現在、フリーランスのイラストレーターです。Aさんは、7年間、ある著名なアニメキャラクターのデザイナーのもとで、その助手としてのキャリアを積みました。来年、正式に自分のデザイン事務所を立ち上げるため、現在は、オリジナル作品をネットで宣伝して、営業(クライアントの開拓)も積極的にこなしているところです。ところが、ある日、営業先の担当者から次のように言われました。「Aさんは、○○さん(著名なアニメキャラクターのデザイナー)のところに7年もいたんですよね。私個人としては、Aさんのデザインを気に入っているのですが…。社内で、Aさんがネットで公開しているデザインがAさんオリジナルのものであることを確認してから取引を始めた方がいいのではないか、という人がいます。そんなことを言う人たちを納得させる何か良い方法があればいいのですが…」

さて、自分がその作品の著作者(著作権者)であることを相手方に積極的に示すためには…

「第一発行・公表年月日の登録」を検討してみてください。
この登録をしておきますと、公簿(著作権登録原簿)に著作者として登録されている者が著作権者であることを公示する事実上の効果が得られます。そのため、相手方にその登録証(著作権登録原簿謄本)を提示することによって、自分が登録に係る作品の著作者であり、著作権者であることを相手方に伝えやすくなり、円滑な著作権取引が期待できます。 

~活用事例その2:著作者であることの公示~ 

将来の円滑な著作権取引に備えておく

Aさんは、写真とビデオ撮影が趣味で、常にデジタルカメラを持ち歩き、気に入った景色や変わった光景に出くわしたときには、それをカメラにおさめています。中には、交通事故現場に居合わせた時の写真や土砂崩れの瞬間を写したものなどかなり「珍しい写真」も数多くあり、また、映像のコレクションには、「幽霊」や「UFO」らしきものが映っているものもあります。今度、これらの写真や映像のコレクションをネットで公開しようと考えて、現在、自身のHPを制作中です。ネットを通じて、これらの写真や映像を使わせて欲しいとのオファーがあったような場合に備えて、これらの写真や映像の著作者(撮影者)が自分であることをきちんと証明できるよい方法はないか、Aさんは考えているところです。

さて、Aさんの目的にかなう良い方法は…

「第一発行・公表年月日の登録」を検討してみてください。
この登録をしておきますと、公簿(著作権登録原簿)に著作者として登録されている者が著作権者であることを公示する事実上の効果が得られます。そのため、例えば、HPに作品と一緒に登録証(著作権登録原簿謄本)を掲載しておくことによって、その作品の著作者が自分であることを効果的にHPの閲覧者に伝えることができます。 

~活用事例その3:著作権者であることの公示~ 

国際的な著作権取引を円滑化に資する

A社は、主にドキュメンタリー映画の企画製作及び映画の著作権管理を手掛けている会社です。ある時、A社が管理するドキュメンタリー映画(1頭の盲導犬とそれを取り巻く人間の交流を描いた作品)をもとに、そのリメイク版を製作したいとのオファーがアメリカの大手映画製作会社から飛び込んできました。相手方は、正式な契約を交わす際に、A社が当該ドキュメンタリー映画及びその原作シナリオの著作権を正当に所有していることの確証が欲しいと言っています。

さて、相手方に自社が正式に著作権を保有していることを示すためには…

「著作権の移転登録」又は「第一発行・公表年月日の登録」を検討してみてください。
事情に応じて、以上のいずれか又はその両方の登録をしておきますと、公簿(著作権登録原簿)に著作者・著作権者として登録されている者が著作権を保有していることを公示する事実上の効果が得られます。そのため、相手方にその登録証(著作権登録原簿謄本)を提示することによって、自社が登録に係る作品の著作権者であることを相手方に伝えやすくなり、円滑な著作権取引が期待できます。特にアメリカ企業との国際取引の場合、アメリカでは、著作権登録が日本よりはるかに活用されていますので、ビジネスを円滑に進める上で有効な手段となります。 

~活用事例その4:「二重譲渡」のリスクへの対処~

著作権買取りの潜在リスクを排除する

A社は、創立50周年を記念して、著名な作曲家であるX氏に、自社のイメージソングの作曲を依頼することを検討中です。A社としては、今後、出来上がった曲(イメージソング)を自社ブランドの統一したイメージソングとしても、テレビCM等で積極的に露出させる戦力を企図しているため、その曲の著作権を買い取ろうと考えています。ところが、その著名な作曲家であるX氏は、JASRACの会員であり、さらに、以前に自分の作品の著作権を「二重売り」していた経歴があることが判明しました。A社としては、X氏の作風が自社のカルチャーとマッチしそうだということでX氏への作曲依頼を決定したもので、依頼先を変更するつもりはありません。しかし、A社が買取りを予定している曲が、JASRACをはじめ、別の第三者に「二重売り」されても困ります。

さて、何か良い手立てはないものでしょうか…

「著作権の移転登録」を検討してみてください。
著作権を譲り受ける(買い取る)際、この登録も同時に済ませておけば、万が一、X氏が別の第三者に問題の曲を「二重売り」してしまった場合でも、その曲の著作権が自社に正式に移転していること(著作権をA社が正当に取得したこと)を当該第三者に正当に主張できるという効果が得られます。もし、著作権の移転登録をせず、その間にX氏が別の第三者に問題の曲を「二重売り」してしまった場合に、その第三者が著作権の移転登録を完了すると、今度は、A社がその第三者に自身が著作権を取得したことを主張することができなくなり(かりに契約が先であっても)、かえって、移転登録を備えた当該第三者(たとえ契約が後であっても)の方が正当に著作権を譲り受けたことをA社に主張できるようになります。このような事態を招かないために、著作権の売買を行う場合は、その種類を問わず、常に「著作権の移転登録」の要否を検討してみることが賢明です。 

~活用事例その5:著作権を担保に資金を融資する際のリスク管理~ 

著作権を目的として質権を設定する際の潜在リスクを排除する

X社は、著作な写真家Pの写真の著作権を管理するY社から、事業資金の融通を打診されています。Y社は、写真家Pが自ら代表取締役を務める会社で、写真家Pの写真にかかる著作権の譲渡を受けていますが、かかる著作権以外に担保になりそうな財産はありません。X社としては、写真家Pの写真が商業広告に広く使われていて、その著作権の担保価値を十分に認めることができるのですが、Y社の管理する著作権に質権を設定して資金を融通した場合のリスク管理に不安が残ります。

さて、X社のこの不安を取り除く上手い手立てはないのでしょうか…

著作権を目的とする「質権の設定登録」を検討してみてください。
質権は、著作権を担保に差し出してお金を借りた側(Y社=債務者)と、著作権を担保に取ってお金を貸す側(X社=債権者)との間で交わされる質権設定契約によって発生しますが、これを文化庁に「登録」することで、質権者(X社)は「第三者対抗要件」を取得することができます(772号)。つまり、X社が質権の設定登録をしておくと,Y社が、万一、第三者に、その質権の目的になっている著作権を譲渡したという場合でも、X社は、Y社から著作権の譲渡を受けたその第三者に対して、自己の質権を主張することができます。また、Y社が、別の第三者に二重に質権を設定したという場合にも、やはり、X社は、Y社から二重の質権設定を受けた者に対して、自己の質権を主張することができます。逆に、質権の設定登録をしておかないと、上述のケースで、X社は、第三者に自己の質権を有効に主張することができなくなります。

~活用事例その6:法定相続分を超える持ち分を相続した場合のリスク管理~ 

著作権の相続には注意が必要

Aさんには、有名な推理作家である父がいます。ところが、その父親が先日亡くなり、相続が発生しました。法定相続人は、Aさんと、Aさんの妹だけで、遺産分割の話し合いの結果、父親の作品の著作権については、Aさんが「持ち分10分の8」、Aさんの妹さんが「持ち分10分の2」でそれぞれ相続することになりました。日ごろから著作権に関心を持って勉強していたAさんは、著作権法が改正されて、相続などの一般承継による著作権の移転登録の制度がはじまったことを耳にしていました。

さて、Aさんはどう対処するべきでしょうか…

「著作権の移転登録」を検討してみてください。
令和元年7月1日から相続その他の一般承継による著作権の移転についても登録することが可能になりましたが、相続した著作権は必ず登録しなければならないというわけではありません。「法定相続分」(民法900条参照)の承継については登録をしなくても第三者に対抗することができますので、法定相続の場合には、登録をしなかったことにより権利が主張できなくなるということはありません。一方、遺産分割などによって法定相続分を超える部分の承継が生じた場合には、その超える部分については、登録しなければ第三者に対抗することができません。諸般の事情(費用や二重移転の危険性等)を考慮した上で、登録の要否を検討してください。

 
~活用事例その7:模倣・侵害対策~ 

著作物の公表(発行)事実を証明する

Aさんは、広告デザイン会社の経営者であり、かつ、自身もグラフィックデザイナー、キャラクターデザイナーとして活躍しています。同業他社のX社は、以前から、Aさんの会社のオリジナルの広告デザインやキャラクターデザインを模倣している、とAさんは感じています。そこで、Aさんは、X社に苦情を申し入れました。ところが、X社の代表者は、「そのデザインはうちのオリジナルだ。もし、あなたのデザインを模倣したと言うなら、あなたの創作の方が先で、うちがあなたの創作に依拠したことを示してほしい。」と言われてしましました。

さて、X社の主張に対抗するためには

「第一発行・公表年月日の登録」を検討してみてください。
この登録をしておきますと、デザインを創作した日付自体を証明することはできませんが、Aさんの会社のデザインが世の中に公になった日付を証明することができるため、そのデザインが少なくとも当該登録年月日には世の中にすでに存在していて(X社の模倣デザインの公表は当然にこの日付以降になります)、X社がそこにアクセスできた(「依拠」できた)ことの立証が容易になります。 

~活用事例その8:模倣・侵害対策~ 

プログラムの著作物の創作日を証明する

Aさんは、ビジネスソフトの企画開発を手掛けるソフトフェア会社を経営しています。これまで、自社オリジナルの技術については、特許を取得するなどして、その保護対策をしてきました。今後は、著作権による自社ソフトの保護対策にも力を入れていきたいと考えています。

さて、ソフトフェア(コンピュータプログラム)の保護強化を図るには…

「創作年月日の登録」を検討してみてください。
プログラムに関してこの登録をしておきますと、そのプログラムが当該登録年月日に創作されたものと法律上推定されるため、そのプログラムを模倣する者に対して、その侵害行為を立証することが容易になり、プログラムに対する著作権による保護対策として非常に有効です。 

~活用事例その9:保護期間の延長~ 

著作権の保護期間を延ばす

Aさんは、サラリーマンをしながら「N」のペンネームで小説を書いています。地方のある出版社が主催する新人賞を獲得し、これを励みに、今後も創作活動を続けていこうと思っています。ただし、サラリーマンを辞めるつもりはありませんし、小説家として本名を明らかにすることも考えていません。ところが、ある日、著作権法の解説書で、実名(本名)を明らかにしない場合、著作権の保護期間が本来より短くなる場合があることを知りました。

さて、Aさんの作品を本来の保護期間まで延長するためには…

「実名の登録」を検討してみてください。
この登録を利用すると、ペンネームで公表された作品の保護期間が、実名(本名)で公表された作品の場合と同様の保護期間に延長される効果を得ることができます。 

~活用事例その10:著作者であることの「推定」~ 

著作者であることの立証を容易にする

Aさんは、学生時代から一貫したテーマに沿った詩を作り続け、現在でも、学習塾を経営する傍ら、「S」という筆名で、地元を中心に、朗読会を開くなどして、創作活動を続けています。Aさんは、自身のポリシーから、「S」という筆名にこだわりを持っており、そのため、自身の詩を公表するにあたって、今後とも自身の本名を明らかにするつもりはありません。ところが、本名を表示しないで作品を発表したときには、自分がその作品の著作者であることを証明する際に不利になる場合があることを知りました。

さて、Aさんが、「S」の筆名を使い続けながらも、自身の作品の真の著作者であることの証明を容易にするためには

「実名の登録」を検討してみてください。
この登録を受けておくと、世間一般に本名を公表しなくても、Aさん自身が登録に係る著作物の著作者であると法律上「推定」されるため、自分がその作品の真の著作者であることの証明が容易になります。


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