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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

建築著作物▶建築著作物性一般

▶令和3428日東京地方裁判所[令和1()21993]▶令和3128日知的財産高等裁判所[令和3()10044]
本件原告滑り台は,公園に設置される遊具であり,その形状は,別紙録記載のとおり,上部にタコの頭部を模した部分を備え,4本のタコの足を模したスライダー等を有しているものである。【ところで,著作権法10条1項5号は,同法にいう著作物の例示として,「建築の著作物」を規定しているところ,ここに「建築の著作物」とは,建築物の外観に表れた美的形象をいうものと解される。】【また,「建築の著作物」にいう「建築」の意義については】,建築基準法所定の「建築物」の定義を参考にしつつ,文化の発展に寄与するという著作権法の目的に沿うように解釈するのが相当である。そこで検討するに,建築基準法2条1号が「建築物」という用語の意義について「土地に定着する工作物のうち,屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)」等と規定しており,本件原告滑り台も,屋根及び柱又は壁を有するものに類する構造のものと認めることができ,かつ,これが著作権法上の「建築」に含まれるとしても,文化の発展に寄与するという目的と齟齬するものではないといえる。そうすると,本件原告滑り台は同法上の「建築」に該当すると解することができる。
このように,本件原告滑り台が同法上の「建築」に該当するとしても,その「建築の著作物」(著作権法10条1項5号)としての著作物性については,「文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」(同法2条1項1号)か否か,すなわち,同法で保護され得る【「美術」の「範囲に属するもの】であるか否かを検討する必要がある。具体的には,「建築の著作物」が,実用に供されることが予定されている創作物であり,その中には美的な要素を有するものも存在するという点で,応用美術に類するといえることから,その著作物性の判断は,前記で説示した応用美術に係る基準と同様の基準によるのが相当である。
そこで,本件原告滑り台が,建築物としての実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して,【美的鑑賞の対象となり得る美的特性である創作的表現】を備えている部分を把握できるか否かにつき,以下,検討する。
前記で説示したとおり,本件原告滑り台の形状は,頭部,足部,空洞部などの各構成部分についてみても,全体についてみても,遊具として利用される建築物の機能と密接に結びついたものである。
【そうすると】,本件原告滑り台について,建築物としての実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して,【美的鑑賞の対象となり得る美的特性である創作的表現】を備えている部分を把握できるとは認められない。
【そして,本件原告滑り台の外観全体についても,美的鑑賞の対象となり得るものと認めることはできないし,また,美的特性である創作的表現を備えるものと認めることもできない。したがって,本件原告滑り台が建築の著作物に該当するとの控訴人の主張は,採用することができない。】

平成160929日大阪高等裁判所[平成15()3575]
建築は、絵画、版画、彫刻などと同様に造形活動の一種であるが、絵画、版画、彫刻などが専ら美的鑑賞を目的に制作される物品であるのに対し、建築により地上に構築される建築構造物(建築物)は、物品ではない上、美的鑑賞の目的というよりも、むしろ、住居、宿泊所、営業所、学舎、官公署等として現実に使用することを目的として製作されるものである。そこで、同法は、『建築の著作物』を『絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物』(同法10条1項4 号)とは別に、独立の著作物類型として保護することにしたものと解される。

平成160929日大阪高等裁判所[平成15()3575]
建築物は、地上に構築される建築構造物であり、例えば、建物は、建築されると土地の定着物たる不動産として取り扱われるから、意匠法上の物品とは解されず、その形態(デザイン)は意匠法による保護の対象とはならない。しかも、建築物は、一般的には工業的に大量生産されるものではないが、種々の実用に供されるという意味で、一品制作的な美術工芸品に類似した側面を有する。また、原告建物は、高級注文住宅ではあるが、建築会社がシリーズとして企画し、一般人向けに多数の同種の設計による一般住宅として建築することを予定している建築物のモデルハウスであり、近時は、原告建物のように量産することが予定されている建築物も存在するから、建築は、物品における応用美術に類似した側面も有する。(中略)したがって、著作権法により 『建築の著作物』として保護される建築物は、同法2条1項1号の定める著作物の定義に照らして、知的・文化的精神活動の所産であって、美的な表現における創作性、すなわち造形芸術としての美術性を有するものであることを要し、通常のありふれた建築物は、同法で保護される『建築の著作物』には当たらないというべきある。

平成160929日大阪高等裁判所[平成15()3575]
グッドデザイン賞の受賞から、原告建物に客観的、外形的に見て、居住用建物としての実用性や機能性とは別に、独立して美的鑑賞の対象となり、建築家・設計者の思想又は感情といった文化的精神性を感得せしめるような造形芸術としての美術性が具備されていると認めることはできない。

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