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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

地図図形著作物▶その他➁

[万年カレンダー]
▶昭和590126日大阪地方裁判所[昭和55()2009]
本件カレンダーの万年暦と索引表の組合わせ、左右に暦年を配し、上段に各月を配し、その交点に長方形の色彩を配する万年暦の構成は、回転型式やスライド型式で既知のものとなつている万年暦の構想を、索引表と標識体の組合わせによるカレンダー方式に置き換えただけのものであつて、右既知の万年暦の思想を伝達するものとして特に学術的な創作的表現といい得るかどうかには、それが実用新案法上、新規な考案として認め得るにしても、いまだちゆうちよを覚える。
のみならず、本件カレンダーの構成は、本件考案が実施された結果の具体的表現形態そのものであり、本件カレンダーは結局のところ本件考案の一実施例品というべきものである。そうだとすると、考案を考案それ自体として実用化した作品は、たとえその考案が学術的なものであり、新規独創性を有するにせよ、単なる実用品であつて当該思想(考案)を「創作的に表現する」著作物には該らない(考案の内容を説明するための記述や図表は学術思想の表現として著作物性を有するが、考案の実施である作品そのものには著作物性がない)ものと解すべきである。

[方位の吉凶を示す方位盤]
▶平成170928日東京地方裁判所[平成16()4697]
本件各方位盤は,方位の吉凶を示す図であり,気学では方位を特に重要視し,人の動きによって受ける吉凶の影響を前もって知っておくことの重要性を教えているというのであるから,方位の吉凶に関係のある要素を方位盤に織り込むことはありふれた表現にすぎない。また,方位盤が方位を示すものであることからすれば,これを八角形で表すこと自体はありふれた表現であるし,方位を八分割した八角形の図に吉凶を示す事項を記載することは,本件類似書籍にも見られるところである。方位,八卦のマーク,火の場所,十二支及び九星の5つの要素を織り込んだ点についても,本件各方位盤におけるそれらの表現は,同様にありふれたものである。
したがって,本件各方位盤は,原告の思想又は感情を創作的に表現したものとはいえず,素材の選択又は配列によって創作性を有するものともいえないから,著作物あるいは編集著作物とは認められない。

[株式の値動きを図表にしたもの]
▶平成120323日東京地方裁判所[平成10()15833]
株式の値動きを図表として表現するに当たり、縦軸に価格(上方ほど金額が高くなる。)、横軸に時間(左から右向きに時間が経過する。)をとること、単位期間(日、週、月)ごとの価格の変動の幅を長方形により表すこと、価格が上昇したか下落したかによって右の長方形を色分けすること、右のようして単位期間ごとに描いた長方形を時間の経過に沿って横軸方向に並べていくことは、従前から一般に行われているありふれた表現方法であると認められるから、原告図表につき、これを原告が「創作的に表現したもの」であると認めることはできない。なお、右のような表現方法をとるに当たり、一定の日、週又は月数の終値の平均値をもとにし、さらに短期、中期及び長期の三つの指標を組み合わせて図表を作成することが原告の独自の発案によるものであるとしても、原告が創作したと主張するものは思想自体であり、これを表現ということはできないから、著作権法による保護の対象となるものでない。

[住宅ローン商品の金利情報を図表にしたもの]
▶平成221221日東京地方裁判所[平成22()12322]
本件図表は,各金融機関が提供する住宅ローン商品の金利情報について,全国又は各地域別の金融機関ごとに,その商品名,変動金利の数値,固定金利(1年,2年,3年,5年,7年,10年,15年,20年,25年,30年,35年の固定期間別)の数値を表示して金利を対比した表及びそれらの金利の低い順に昇降順に並べて対比した表であり,金利情報をこのような項目に分類して対比した図表及び金利の低い順に昇降順に並べて対比した表は,他に多く存在し,ありふれたものであって,思想又は感情を創作的に表現したものということはできない。

[折り紙作品の折り図]
平成230520日東京地方裁判所[平成22()18968]
折り紙作品の折り図は,当該折り紙作品の折り方を示した図面であるが,その作図自体に作成者の思想又は感情が創作的に表現されている場合には,当該折り図は,著作物に該当するものと解される。
もっとも,折り方そのものは,紙に折り筋を付けるなどして,その折り筋や折り手順に従って折っていく定型的なものであり,紙の形,折り筋を付ける箇所,折り筋に従って折る方向,折り手順は所与のものであること,折り図は,折り方を正確に分かりやすく伝達することを目的とするものであること,折り筋の表現方法としては,点線又は実線を用いて表現するのが一般的であることなどからすれば,その作図における表現の幅は,必ずしも大きいものとはいい難い。
また,折り図の著作物性を決するのは,あくまで作図における創作的表現の有無であり,折り図の対象とする折り紙作品自体の著作物性如何によって直接影響を受けるものではない。

[製品カタログ]
▶平成28216日東京地方裁判所[平成26()22603]
原告図表1は,1頁全体を縦方向に均等に2分割し,左側に上から「品番について」,「カタログの表示について」,「マークのご案内」,「製品について」の説明を順次記載し,右側に上記「カタログの表示について」の記載項目に対応する製品写真,製品名その他の記載の例として,上から「〈バスの場合〉」,「〈水栓,シャワー,トイレの場合〉」,「〈洗面器の場合〉」,「〈キッチンシンクの場合〉」を記載したものである。こうした表現は,製品カタログに記載される情報を分かりやすく1ページにまとめて表現する点において表現上の工夫があるから,作成者の思想又は感情を創作的に表現したものと認めるのが相当である。
(略)
一方,原告図表2は「アンダースコア バス」の製品につき,サイズ,重量及び容量,品番,価格,税込み価格,材質並びに色を,原告図表3はトイレシートの機能の有無及びその解説を,原告図表4は原告カタログに掲載された製品の品番に対応する部材の名称,品番,価格及び税込み価格をそれぞれ表形式で整理したものであるところ,製品に関する情報を表形式で整理することが一般的であることに加え,その表現も文字又は写真を黒色の細罫線又は太罫線で区切ったありふれたものであるといわざるを得ないから,これらの点に作成者の個性が発揮されているということはできない。

[コンタクトレンズのチラシ]
▶平成31124日大阪地方裁判所[平成29()6322]▶令和元年725日大阪高等裁判所[平成31()500](控訴審も同旨)
(本件チラシ中の表現の著作物性)
原告は,本件チラシの表現のうち,①「検査時間 受診代金[注:各文言の上に『×』の記号あり]」や「検査なし スグ買える!」という宣伝文句(キャッチフレーズ),「コンタクトレンズの買い方比較」という表及び「なぜ検査なしで購入できるの?」という箇所における説明文言の3点について,創作性があるとして,本件チラシに著作物性が認められると主張している。
しかし,まず上記①は,旧大阪駅前店において採用された眼科での受診(検査)なしでコンタクトレンズを購入することができるという特徴を表現したものであり,眼科での受診(検査)が不要であると,検査時間や受診代金が不要となり,また検査が不要である結果,コンタクトレンズをすぐ買えることになると認められる。そして,上記①の宣伝文句は,以上のビジネスモデルによる顧客の利便性を消費者に分かりやすく表現しようとしたものと認められるが,不要になる事項を文字(単語)で抽出し,その文字(単語)の上に「×」を付すことはありふれた表現方法であるし,「検査なし スグ買える!」という表現は,眼科での受診(検査)なしでコンタクトレンズをすぐ買えるという旧大阪駅前店のビジネスモデルによる利便性を,文章を若干省略しつつそのまま記載したものにすぎず,そこに個性が現れているということはできない上に,強調したい部分に着色等したり,「!」を付したりするなどして強調することもありふれた表現方法にすぎない。以上より,上記に創作性があるとは認められない。
また,上記②はマトリックスの表形式にすることによって,旧大阪駅前店と他の店舗や他の販売方法との違いを分かりやすく表現したものである。確かに,表現方法としては文章で伝えるなどの別の方法が存することは原告主張のとおりであるが,本件チラシは販売宣伝のために作成されたものであるから,その性質上,表現が記載されるスペースは限られ,また見た者が一目で認識,理解し得るような表現をすべきことも求められるから,表現方法の選択の幅はそれほど広いとは認められない。
そして,文字で表現しようと思えばできる事項を表形式にまとめることは通常行われる手法であり,表形式で比較するに当たり,縦の欄に旧大阪駅前店と他の店舗や他の販売方法を並べ,横の欄に複数の事項を列記し,マトリックス形式でまとめるというのも,ありふれた手法にすぎない。そしてまた,ここで比較の対象としている事項の選択も,眼科での受診(検査)を不要とし,店舗に来店して購入するという旧大阪駅前店でのビジネスモデルから自ずと導き出されるものばかりである。以上より,上記②に創作性があるとは認められない。
さらに,上記③の説明文言は,旧大阪駅前店では眼科での受診(検査)なしでコンタクトレンズを購入することができる理由を文章で説明したもので,その内容は法規の内容や運用を説明した上で,旧大阪駅前店では,顧客の経済的・時間的な負担の観点から,販売時に処方箋の有無を前提としていないことを説明したものにすぎない。これは上記のビジネスモデルの客観的な背景や方針をそのまま文章で記載したものにすぎず,文章表現自体に特段の工夫があるとはいえない上,その記載方法も相当の文字数を使用して,しかも小さな文字で記載したものにすぎないから,その表現方法に何らかの工夫がみられるわけでもない。以上より,上記③に創作性があるとは認められない。
以上より,上記①ないし③の各記載について,創作性は認められない。
以上の点につき原告は,提携眼科を設けないでコンタクトレンズ販売店をオープンさせるというのは,かなり思い切った試みであったとか,検査なしでコンタクトレンズを購入できる理由を書いた説明文言は適法性を支える要素となっているなどと主張しているが,旧大阪駅前店におけるビジネスモデル自体が著作権による保護の対象になるわけではなく,そのビジネスモデルを表現した本件チラシにおける各表現方法自体がありふれたものにすぎないことなどは,上記認定・判示のとおりである。したがって,原告の上記主張によって,上記判断は左右されない。
(本件チラシの各表現の組合せによる著作物性)
原告は上記①ないし③等の組合せに著作物性が認められるべきであるとも主張している。
確かに,上記①ないし③は,眼科での受診(検査)を不要とし,コンタクトレンズをすぐ買えるという旧大阪駅前店でのビジネスモデルを強調するために,それが可能な理由等を小さな文字で説明する(上記③)とともに,当該ビジネスモデルによって不要となる事項を文字(単語)で抽出し,その上に「×」を付すなどしてキャッチフレーズを用いたり(上記①), マトリックスの表形式で他の店舗や他の販売方法と比較したりした(上記)もので,それらを組み合わせることによって当該ビジネスモデルを強調し,読み手に分かりやすく説明しようとしたものということはできる。しかし,何かを強調し,分かりやすく伝えるために,説明文とキャッチフレーズと表形式のものを組み合わせることそれ自体は,特徴的な手法とは認められず,組み合わせの具体的方法に特徴があるわけでもないから,上記①ないし③の各表現に創作性が認められないことを踏まえると,これらの組合せ自体にも創作性は認められない。
なお,本件チラシでは,さらに視力検査をしている男の子のイラストが組み合わされているが,原告はイラスト自体の著作物性を主張するものではない上,広告宣伝において適宜関連するイラストを配することもありふれた表現方法にすぎないから,このイラストと組み合わせることによって,創作性が基礎付けられるとはいえない。
また,原告は当初,被告チラシの各商品の配列等が本件チラシとほとんど同一であることを主張していた。しかし,本件チラシにおいては商品の写真を掲げつつ,その下側に商品名や値段等を記載し,適宜商品の説明やアピールポイント等を付加しているところ,そのような各商品の配列等は,コンタクトレンズ販売店の広告としてありふれたものであると認められるから,創作性は認められず,原告の上記主張によって本件チラシの著作物性は基礎付けられない。

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