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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

言語著作物▶個別事例①(新聞記事/ニュースの見出し/インタビュー記事/裁判傍聴記)

[新聞記事]
▶平成60218日東京地方裁判所[平成4()2085]
客観的な事実を素材とする新聞記事であっても、収集した素材の中からの記事に盛り込む事項の選択と、その配列、組み立て、その文章表現の技法は多様な選択、構成、表現が可能であり、新聞記事の著作者は、収集した素材の中から、一定の観点と判断基準に基づいて、記事の盛り込む事項を選択し、構成、表現するのであり、著作物といいうる程の内容を含む記事であれば直接の文章表現上は客観的報道であっても、選択された素材の内容、量、構成等により、少なくともその記事の主題についての、著作者の賞賛、好意、批判、断罪、情報価値等に対する評価等の思想、感情が表現されているものというべきである。

▶令和41130日東京地方裁判所[令和2()12348]▶令和568日知的財産高等裁判所[令和5()10008]
本件各記事の著作物性について
証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件各記事は、いずれも、担当記者が、その取材結果に基づき、記事内容を分かりやすく要約したタイトルを付し、当該記事のテーマに関する直接的な事実関係を端的に記述すると共に、関連する事項として盛り込むべき事項の選択、記事の展開の仕方、文章表現の方法等についても、各記者の表現上の工夫を凝らして作成したものであることがうかがわれる。したがって、本件各記事は、いずれも「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」すなわち著作物(法 2 1 1 号)と認められるのであって、「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」(法 10 2 項)には当たらない。
これに対し、被告は、本件各記事は著作物に当たらないとして縷々主張する。しかし、著作物といえるための創作性の程度については、高度な芸術性や独創性まで要するものではなく、作成者の何らかの個性が発揮されていれば足りる。このような意味での創作性は、内容における虚構性を当然の要素ないし前提とするものではないから、新聞記事がその性質上正確性を求められることと何ら矛盾せず、両立し得るものであることは論を俟たない。その他被告が縷々指摘する事情を考慮しても、この点に関する被告の主張は採用できない。
[控訴審同旨]
一審被告は、本件各記事が事実を伝達するものにすぎず、文章表現もありふれているなどとして著作物性を否定する旨の主張をするが、本件各記事において、記事内容を分かりやすく要約したタイトルが付され、文章表現の方法等について表現上の工夫が凝らされていることは原判決認定のとおりである。一審被告は、本件各記事の著作物性を否定する例として甲第9号証の308の記事を挙げるものの、証拠及び弁論の全趣旨によれば、同記事は、同日(平成31年3月28日)に掲載された他社記事と比較して、東急電鉄の発祥や設立経緯についての記載はなく、かえって商号変更の理由が分社化に伴うものであることを記載するなど、記載内容の取捨選択がされ、記者の何らかの創造性が顕れており、著作物であると認められる。
本件各記事は、法10条2項にいう「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」とはいえないから、一審被告の上記主張は採用することができない。

▶令和4106日東京地方裁判所[令和2()3931]▶令和568日知的財産高等裁判所[令和4()10106]
【1審被告が平成30年4月1日から平成31年4月16日までの間に本件イントラネットの掲示板に原告が発行した東京新聞に係る平成30年度掲載記事(合計133本。)を掲載したことは、前記のとおりである。】平成30年度掲載記事のうちの一部の記事について、被告は、その著作物性を争っている。
【そこで検討するに】、平成30年度掲載記事は、事故に関する記事や、新しい機器やシステムの導入、物品販売、施策の紹介、イベントや企画の紹介、事業等に関する計画、駅の名称、列車接近メロディー、制服の変更等の出来事に関する記事である。そのうち、事故に関する記事については、相当量の情報について、読者に分かりやすく伝わるよう、順序等を整えて記載されるなどされており、表現上の工夫がされている。また、それ以外の記事については、いずれも、当該記事のテーマに関する直接的な事実関係に加えて、当該テーマに関連する相当数の事項を適宜の順序、形式で記事に組み合わせたり、関係者のインタビューや供述等を、適宜、取捨選択したり要約するなどの表現上の工夫をして記事を作成している。【これらの点において、平成30年度掲載記事は、各記事の作成者の個性が表れており、いずれも作成者の思想又は感情が創作的に表現されたものと認められるから、著作物に該当するものと認められる。
これに対し、1審被告は、平成30年度掲載記事は、「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」(著作権法10条2項)であり、著作物に該当しない旨主張する。
しかしながら、上記認定のとおり、平成30年度掲載記事は、事故に関する記事や、新しい機器やシステムの導入、物品販売、施策の紹介、イベントや企画の紹介、事業等に関する計画、駅の名称、列車接近メロディー、制服の変更等の出来事に関する記事であるところ、そのうち、事故に関する記事については、相当量の情報について、読者に分かりやすく伝わるよう、順序等を整えて記載されるなど表現上の工夫をし、それ以外の記事については、いずれも、当該記事のテーマに関する直接的な事実関係に加えて、当該テーマに関連する相当数の事項を適宜の順序、形式で記事に組み合わせたり、関係者のインタビューや供述等を、適宜、取捨選択したり要約するなどの表現上の工夫をして記事を作成していることが認められ、各記事の作成者の個性が表れており、いずれも作成者の思想又は感情が創作的に表現されたものと認められるものであり、「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」であるということはできない。また、著作物といえるための創作性の程度については、高度な芸術性や独創性まで要するものではなく、作成者の何らかの個性が発揮されていれば足り、報道を目的とする新聞記事であるからといって、そのような意味での創作性を有し得ないということにはならない。
したがって、1審被告の上記主張は採用することができない。その他1審被告は、平成30年度掲載記事が著作物に該当しない理由を縷々指摘するが、いずれも採用することができない。】

[ニュースの見出し]
▶平成171006日知的財産高等裁判所[平成17()10049]
一般に,ニュース報道における記事見出しは,報道対象となる出来事等の内容を簡潔な表現で正確に読者に伝えるという性質から導かれる制約があるほか,使用し得る字数にもおのずと限界があることなどにも起因して,表現の選択の幅は広いとはいい難く,創作性を発揮する余地が比較的少ないことは否定し難いところであり,著作物性が肯定されることは必ずしも容易ではないものと考えられる。
しかし,ニュース報道における記事見出しであるからといって,直ちにすべてが著作権法102項に該当して著作物性が否定されるものと即断すべきものではなく,その表現いかんでは,創作性を肯定し得る余地もないではないのであって,結局は,各記事見出しの表現を個別具体的に検討して,創作的表現であるといえるか否かを判断すべきものである。
[(注)控訴審では、以上のような一般論を述べた上で、結論としては、「当裁判所も,控訴人が主張する具体的なYOL見出しについては,いずれも創作性を認めることができないものと判断する。」とした。以下、創作性(著作物性)が否定された見出しの具体例をいくつか列挙する:
「マナー知らず大学教授,マナー本海賊版作り販売」
「A・Bさん,赤倉温泉でアツアツの足湯体験」
「道東サンマ漁,小型漁船こっそり大型化」
「中央道走行車線に停車→追突など14台衝突,1人死亡」
「国の史跡傷だらけ,ゴミ捨て場やミニゴルフ場…検査院」
「『日本製インドカレー』は×…EUが原産地ルール提案」]

[インタビュー記事]
▶平成27227日東京地方裁判所[ 平成24()33981]
インタビューを素材としこれを文章としたものであっても,取り上げる素材の選択,配列や具体的な用語の選択,言い回しその他の表現方法に幅があり,かつその選択された具体的表現が平凡かつありふれた表現ではなく,そこに作者の個性が表れていたり,作成者の評価,批評等の思想,感情が表現されていれば,創作性のある表現として著作物に該当するということができる。

[裁判傍聴記]
▶平成200717日知的財産高等裁判所[平成20()1000]
原告傍聴記における証言内容を記述した部分(例えば,「○ライブドアの平成16(2004)年9月期の最初の予算である」「○各事業部や子会社の予算案から作成されている」)は,証人が実際に証言した内容を原告が聴取したとおり記述したか,又は仮に要約したものであったとしてもごくありふれた方法で要約したものであるから,原告の個性が表れている部分はなく,創作性を認めることはできない。
原告傍聴記には,冒頭部分において,証言内容を分かりやすくするために,大項目(例えば,「『株式交換で20億円計上』ライブドア事件証人・丸山サトシ氏への検察側による主尋問」)及び中項目(例えば,「証人のパソコンのファイルについて」)等の短い表記を付加している。しかし,このような付加的表記は,大項目については,証言内容のまとめとして,ごくありふれた方法でされたものであって,格別な工夫が凝らされているとはいえず,また,中項目については,いずれも極めて短く,表現方法に選択の余地が乏しいといえるから,原告の個性が発揮されている表現部分はなく,創作性を認めることはできない。

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