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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

言語著作物▶個別事例⑤(短文)

[短文]
平成281226日知的財産高等裁判所[平成27()10123]
①ないし⑧の本件各著作物の台詞自体は,いずれもごく短いものであり,台詞そのものに表現上の創作性があるとはいえず,ありふれたものであって,各台詞はそれ自体で被控訴人の個性が表れているということはできない。
[(注)本件で問題となった「本件各著作物の台詞」は以下の通り]
①「なんて言って休めばいいの?」
②「また襲われてもいいの?」
③「お前ホントは喜んでたんだろ。スリルがあって気持ちいいとか思ってたんだろ」
④「お前みたいな汚れた女とつき合ってやったんだ。感謝しろ!」・「お前みたいな女と付き合ってやってるんだよ」
⑤「頼むから,もう俺のことは忘れて,幸せになってくれ。」
⑥「なんでいまさらそんなこと言うのよ!?あんたの言うこと信じられない!!」・「なんで今さらそんなこと言うの?あんたの言うこと,信じられない!」
⑦「お前は強い子だから,そんなこと(事件のこと)を気にするような子じゃないでしょ」
⑧「あんたが襲われたのはあんたのせいではないけど,私たちのせいでもないんだから,そんなことで私たちを責めないでよね!」

平成27225日知的財産高等裁判所[平成26()10094]
控訴人は,例えば,控訴人書籍の「たすきがけ巻き」についての記述は,そのアイデア自体画期的なだけではなく,「バンドを8の字にして」,「両腕を上げて,バンザイします」などの説明表現がその言葉の選択において個性的であり,画像も独特であると主張する。しかし,バンドを一定の巻き方で巻くということ自体は,控訴人も自認するとおりアイデア(思想)であるから,著作権法上の保護の対象となるものではないし,控訴人書籍の具体的な記述をみても,「バンドを8の字にして,両手首にかけます」,「両腕を上げて,バンザイします」という説明表現は,説明対象となる一連の動作を表現するための表現としては,ごくありふれており,創作性がある表現とはいえない。また,同記述に付された画像も,モデルが両手首にバンドを8の字状にかけたり,その手を頭上に挙げているポーズを撮影したもので,当該巻き方を表現するためのポーズとしてはごくありふれたものであり,ポーズ自体が創作性のある表現とはいえない。したがって,控訴人の主張は理由がない。

平成281110日知的財産高等裁判所[平成28()10050]
本件においては,本件控訴人記載と本件被控訴人記載とは,表現上「重力波と想定される」,「波動による(もの)」との部分が共通性を有するといえる。そして,上記共通性を有する部分は,EMの効果に関する控訴人の自然科学上の学術的見解を簡潔に示したものであり,控訴人の思想そのものであって,思想又は感情を創作的に表現したものとはいえないから,著作権法において保護の対象となる著作物に当たらないと解するのが相当である。

▶平成200212日知的財産高等裁判所[平成19()10079]
原告表現と被告表現において共通するのは,「たった1枚の名刺でキーマンを虜にする」との表現であるが,これは平凡な表現によりなる短文であり,これに創作性を認めることはできない。

▶平成130123日東京地方裁判所[平成11()13552]
「JR中央線・総武線で東京から、特別快速24分、(中略)地下鉄東西線(総武線に乗入れ)で11分。」という記述のように、誰が記載しても異なった記述になり得ないものは、これを選択したことについても、表現形式においても創作性があるものとはいえず、著作物性を認めることができない。

▶平成190830日東京地方裁判所[平成18()5752]
「感謝」,「感激」,「感動」という言葉は,いずれもありふれた表現であり,このように韻を踏んで単語を並べることも特別に個性的な表現方法であるということはできず,これのみによって表現上の創作性を認めることはできず,これを著作物ということはできない。

▶平成230610日東京地方裁判所[平成22()31663]
文A[(注)「左右小数の方で計算し支払いを決める。」というもの]の言語の著作物としての創作性についてみても,文Aは極めて短い1文であり,かつ,一般に使用されるありふれた用語で表現されたものにすぎない。人数が少ないことを「小数」と表現している点についても,「小数」の用語自体は「小さい数。わずかな数。」(広辞苑)を意味するから,当該用語を通常の意味で用いたにすぎず,何ら創作性ある表現とは認められない。したがって,文Aに言語の著作物としての創作性を認めることはできない。

▶平成141115日東京地方裁判所[平成14()4677]
測定テストで利用された本件50問の個々の質問文に著作物性が存在するかを検討すると,11つの質問文は,いずれも前述のとおり短文である上,一般的かつ日常的でありふれた表現が用いられており,特徴的な言い回しがあるとも認められない。(したがって,本件50問の個々の質問文の表現に,作者の個性が表出されているとは認められないから,創作性は認められない。そして,個々の質問文に著作物性が認められない以上,これらの独立した質問文を80問集めたものであるQシートの質問文全体についても,それが編集著作物として著作物性を認められるかどうかという点を別にすると,著作物性は認められない。)
[(注)本件で問題となった「Qシート」中の質問文は、いずれも最小5文字、最大34文字の短文で、疑問文ではなく、肯定文又は否定文であり(以下の例を参照)、これに対し、「はい」・「?」・「いいえ」で回答する欄が作成されていた。]
(質問文の例)
「燃えやすく,冷めやすい」
「少数派になるより,多数派でいることの方が好き」

▶平成210828日東京地方裁判所[平成20()4692]
原告が独自に創作したと主張する歌詞は,「いっぽんといっぽんでにんじゃになって」,「さんぼんとさんぼんでねこさんになって」,「よんほんとよんほんでたこさんになって」,「ごほんとごほんでとりさんになっておそらにとんでった」というものであり,既存の歌詞から1本と1本で「にんじゃ」,3本と3本で「ねこさん」,4本と4本で「たこさん」,5本と5本で「とりさん」と置き換えた部分に創作性があるというものである。
そこで検討するに,原告主張の上記歌詞は,左右の手の指の本数を組み合わせて動物等の動作を一節で表現する手あそび歌である「いっぽんといっぽんで」の趣旨に沿った歌詞の一部であり,1本と1本の指を組み合わせて「忍者」,3本と3本の指を組み合わせて「猫」,4本と4本の指を組み合わせて「たこ」,5本と5本の指を組み合わせて「鳥」というアイデアが決まれば,忍者を「にんじゃ」,「猫」を「ねこさん」,「たこ」を「たこさん」,「鳥」を「とりさん」とそれぞれ表現することは,ありふれたものであると認められる。(したがって,原告主張の上記歌詞は,創作性を有する著作物であるものと認めることはできない。)

▶平成71218日東京地方裁判所[平成6()9532]
本件記事は、いずれも、休刊又は廃刊となった雑誌の最終号において、休廃刊に際し出版元等の会社やその編集部、編集長等から読者宛に書かれたいわば挨拶文であるから、このような性格からすれば、少なくとも当該雑誌は今号限りで休刊又は廃刊となる旨の告知、読者等に対する感謝の念あるいはお詫びの表明、休刊又は廃刊となるのは残念である旨の感情の表明が本件記事の内容となることは常識上当然であり、また、当該雑誌のこれまでの編集方針の骨子、休廃刊後の再発行や新雑誌発行等の予定の説明をすること、同社の関連雑誌を引き続き愛読してほしい旨要望することも営業上当然のことであるから、これら五つの内容をありふれた表現で記述しているにすぎないものは、創作性を欠くものとして著作物であると認めることはできない。

平成28129日東京地方裁判所[平成27()21233]
本件記事は「風水」とは何かということを表現した文章であって,それを「自然科学」だとし,次に,自然科学の定義を記載する二つの文(文字数にして87文字)からなるものである。確かに,用語の選択,全体の構成等はごく簡潔なものではあるが,風水を「自然科学」であると説明する表現として,他に表現の選択の幅がないということはできず,本件記事のひとかたまりの文章には個性が表れていると認められる。

[ツイート]
▶令和31210日東京地方裁判所[令和3()15819]

原告各投稿の著作物性について
ア 原告投稿1について
証拠及び弁論の全趣旨によれば,原告投稿1は,「こないだ発信者情報開示した維新信者8人のログインIPとタイムスタンプが開示された NTTドコモ 2人 KDDI 3人 ソフトバンク 2人 楽天モバイル 1人 こんな内訳だった。KDDIが3人で多数派なのがありがたい。ソフトバンクが2人いるのがウザい しかし楽天モバイルは初めてだな。どんな対応するか?」という内容であることが認められる。
上記認定事実によれば,原告投稿1は,140文字以内という文字数制限の中,発信者情報の仮の開示を求める仮処分手続を経て,著作権侵害と思われる通信に係る経由プロバイダが明らかになった事実に基づき,当該事実についての感想を口語的な言葉で端的に表現するものであって,その構成には作者である原告の工夫が見られ,また,表現内容においても作者である原告の個性が現れているということができる。
そうすると,原告投稿1は,原告の思想又は感情を創作的に表現したものであり,言語の著作物(著作権法10条1号)に該当するものと認められる。
イ 原告投稿2について
証拠及び弁論の全趣旨によれば,原告投稿2は,「@ @@D >あたかものんきゃりあさんがそういった人たちと同じよう 「あたかも」じゃなくて、木村花さんを自殺に追いやったクソどもと「全く同じ」だって言ってるんだよ。 結局、匿名の陰に隠れて違法行為を繰り返している卑怯どものクソ野郎じゃねーか。お前も含めてな。」という内容であることが認められる。
上記認定事実によれば,原告投稿2は,140文字以内という文字数制限の中,意見が合わない他のユーザーに対して,短い文の連続によりその意見を明確に修正した上,高圧的な表現で同人を罵倒するものであり,その構成には作者である原告の工夫が見られ,また,表現内容においても作者である原告の個性が現れているということができる。
そうすると,原告投稿2は,原告の思想又は感情を創作的に表現したものであり,言語の著作物(著作権法10条1号)に該当するものと認められる。
ウ 原告投稿3について
証拠及び弁論の全趣旨によれば,原告投稿3は,「去年の今頃,「@E 」とかいう高校3年生の維新信者に絡まれて勝手にブロックされて「何したいんだ,このガキ?」って事が さっき,あのガキのツイートが目に入ったんだけど受験に失敗して浪人するわ都構想は否決されるわで散々な1年だった様だ 「ざまあ」以外の感想が浮かばない(笑)」,という内容であることが認められる。
上記認定事実によれば,原告投稿3は,140文字以内という文字数制限の中,かつてツイッター上で特定のユーザーとトラブルとなった経緯のほか,その後,当該ユーザーの政治的主張が採用されなかったこと,当該ユーザーが大学入試に失敗したことを端的に紹介した上で,当該ユーザーが不幸に見舞われたことを「ざまあ」の三文字で嘲笑するものであり,その構成には作者である原告の工夫が見られ,また,表現内容においても作者である原告の個性が現れているということができる。
そうすると,原告投稿3は,原告の思想又は感情を創作的に表現したものであり,言語の著作物(著作権法10条1号)に該当するものと認められる。
エ 原告投稿4について
証拠及び弁論の全趣旨によれば,原告投稿4は,「@C アナタって僕にもう訴訟を起こされてアウトなのに全く危機感無くて心の底からバカだと思いますけど,全く心配はしません。アナタの自業自得ですから。」という内容であることが認められる。
上記認定事実によれば,原告投稿4は,140文字という文字数制限の中,原告に訴訟を提起されたにもかかわらず危機感がないと思われる特定のユーザーの状況等につき,「アナタ」,「アウト」,「バカ」,「自業自得」という簡潔な表現をリズム良く使用して嘲笑するものであり,その構成には作者である原告の工夫が見られ,また,表現内容においても作者である原告の個性が現れているということができる。
そうすると,原告投稿4は,原告の思想又は感情を創作的に表現したものであり,言語の著作物(著作権法10条1号)に該当するものと認められる。
オ 小括
以上によれば,原告各投稿には,いずれも著作物性が認められる。
[控訴審同旨]▶令和5413日知的財産高等裁判所[令和4()10060]

▶令和4915日東京地方裁判所[令和4()14375]
著作物性の有無について
原告ツイート[注:原告ツイートの本文には、「私の謎/休憩・仮眠・宿泊目的について国交省は 78 時間寝てもそれは休憩、夜から朝まで寝ても仮眠と見解。/活動反対派は、その行為をしたら宿泊目的で車中泊はダメ!日本語や常識でわかる。国交省の Q&A に記載されている!/えっと、だからその行為や Q&A の見解を国交省は休憩仮眠と言っているのだが」(「/」は改行部分を示す。)と記載されている。]は、車中泊につき原告が得たとする国土交通省の見解及び原告の活動に批判的な者の原告に対する意見を示した上で、この批判的意見に対する原告の見解を示したものである。これらの内容が 1 ツイート当たり 140 文字という文字数制限内に収まるように、原告は、独特の言い回し等を選択して表現したものといえる。このことに鑑みると、原告ツイートは、原告の思想又は感情を創作的に表現したものといってよく、言語の著作物(【著作権法 10 1 1 号】)に該当する。
これに対し、被告は、原告ツイートに芸術性を見いだすことは困難であるため著作物性に疑義があるなどと主張する。しかし、著作物性が認められるためには、思想又は感情が創作的に表現されていれば足り、必ずしも当該表現に芸術性が備わっている必要はない。そうである以上、この点に関する被告の主張は採用できない。
[控訴審同旨]▶令和5417日知的財産高等裁判所[令和4()10104]

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