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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

言語著作物▶個別事例⑦(取締役会議事録/内容証明文書)

[取締役会議事録]
▶平成171025日大阪高等裁判所[平成17()1300]
本件文書に記載された文章は,取締役会議事録のモデル文集の文例に取締役の名称等を記入しただけのものではないものの,使用されている文言,言い回し等は,モデル文集の文例に用いられているものと同じ程度にありふれており,いずれも,日常的によく用いられる表現,ありふれた表現によって議案や質疑の内容を要約したものであると認められ,作成者の個性が表れているとは認められず,創作性があるとは認められない。
また,開催日時,場所,出席者の記載等を含めた全体の態様をみても,ありふれたものにとどまっており,作成者の個性が表れているとは認められず,創作性があるとは認められない。

[内容証明文書]
▶平成210330日東京地方裁判所[平成20()4874]
本件催告書は,被告サイトに掲載されている本件回答書の削除を,本件回答書の公表権に基づき要求するという内容のものであり,その本文は, 本件第1文から本件第5文までの5つの文章[(注)第1文…被告サイトに,本件回答書の本文が全文記載されているという事実を表現したもの/2文…本件回答書の文章について,原告が公表権を有しているという主張を表現したもの/3文…本件回答書を,被告サイトに掲載することにより公表したことは,本件回答書について原告が有する公表権を侵害する違法行為であるという主張を表現したもの/4文…被告に対して,被告サイトから本件回答書を削除するよう求めることを表現したもの/5文…本件催告書による原告の催告に被告が従わない場合に,法的手段に訴えることを表現したもの]から構成されている。
(略)
本件催告書の構成は,本件第1文において,本件催告書によって中止を求める対象となる被告の行為を指摘し,本件第2文において,原告の権利内容の主張をし,本件第3文において,本件第1文で指摘した被告の行為は,本件第2文で示した原告の権利を侵害する違法な行為であることを主張し,本件第4文において,被告に対して,本件第1文で指摘した行為の中止を求め,本件第5文において,本件第4文の催告に従わない場合に,原告が法的措置を採ることを示すというものである。
被告サイトに掲載されている本件回答書の削除を,本件回答書の公表権に基づき請求するという内容の催告書を作成する場合,種々の構成が考えられるが,上記の構成を採ることは自然であり,実際,代理人催告書も,上記と同じ構成を採っており,各種の催告書の文例にも,上記の構成と同様の構成を採っているものがある。
したがって,本件催告書全体の構成に,原告の個性が現れているということはできないと解される。
これに対し,原告は,本件催告書は,法律上の論点をすべて網羅することはせず,必要な限度において論点を取捨選択し,これを理解しやすい順番に並べたものであり,この点に,創作性が認められる旨の主張をする。
確かに,本件回答書についての公表権に基づき,被告サイトから本件回答書の削除を要求する文章を作成する場合,取り上げるべき論点,記載すべき事項についての選択が可能であり,また,その記載の順序についても,種々のものが考えられるが,著作権法上,言語の著作物として保護されるのは,そのような選択に関するアイデア自体ではなく,具体的な表現であると解すべきである。したがって,素材や表現形式に選択の幅があったとしても,実際に作成された言語上の表現がありふれたものである限り,創作性は認められないと解するのが相当であるから,原告の上記主張は理由がない。

▶平成250628日東京地方裁判所[平成24()13494]
原告文書は,原告が,○○株式会社(通知人)の代理人として,平成23104日,被告Yに宛てて送付した通知書であり,表題,日付等の記載の後に,通知人の代理人として通知を行う旨及び被告Yの作成するブログ内に通知人に関し事実に反する内容の記事が掲載されている旨を記載し,上記記事のURLを表示し,さらに,上記記事の内容が事実に反し通知人の名誉・信用を著しく害し多大な損害が発生しているものである旨,上記記事の削除を求め,削除に応じない場合には仮処分申立てや損害賠償請求等の必要な法的措置をとらざるを得ない旨,以後問合せは通知人本人ではなく通知人代理人にされたい旨を記載したものである。
上記原告文書の本文部分は,上記URLの表示部分を含めても17行,URLの表示部分を除けば13行からなるものである。
原告文書は,前提となる事実関係を簡潔に摘示した上で,これに対する法的評価及び請求の内容等を短い表現で記載したものにすぎない。原告文書の体裁,記載内容,記載順序,文章表現は,いずれも内容証明郵便による通知書として一般的にみられるものであり,ありふれたものというべきであるから,原告文書において何らかの思想又は感情が表現されているとしても,上記思想又は感情が創作的に表現されているものとは認められない。

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