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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

言語著作物▶個別事例⑧(租税論の入門的教科書/司法書士試験受験対策本/法律論文/不動産鑑定書

[租税論の入門的教科書]
▶平成190528日東京地方裁判所[平成17()15981]
既に明らかとされている原理・原則・定説を解説する場合についても,これをどのような文言,形式を用いて表現するかは,各人の個性に応じて異なり得ることは当然である。したがって,原理・原則・定説を内容とする租税論の入門的教科書であっても,わかりやすい例を用い,文章の順序・運びに創意工夫を凝らすことにより,創作性を有する表現を行うことは可能であり,記述中に公知の事実等を内容とする部分が存在するとしても,これをもって直ちに創作性を欠くということはできず,その具体的表現に創作性が認められる限り,著作物性を肯定すべきものと解するのが相当である。

[司法書士試験受験対策本]
▶平成240928日東京地方裁判所[平成23()14347]
原告書籍は,司法書士試験合格を目指す初学者向けのいわゆる受験対策本であり,同試験のために必要な範囲で民法の基本的概念を説明するものであるから,民法の該当条文の内容や趣旨,同条文の判例又は学説によって当然に導かれる一般的解釈等を簡潔に整理して記述することが,その性質上不可避であるというべきであり,その記載内容,表現ぶり,記述の順序等の点において,民法の該当条文の内容等を簡潔に整理した記述という範囲にとどまらない,作成者の独自の個性の表れとみることができるような特徴的な点がない限り,創作性がないものとして著作物性が否定されるものと解される。

[法律論文]
平成27327日東京地方裁判所[平成26()7527]
被告らは,原告表現1は証拠文献を要約して引用したものにすぎず,創作性がないと主張する。しかし,著作権法2条1項1号所定の「創作的」に表現されたというためには,厳密な意味で独創性が発揮されたものであることは必要ではなく,作者の何らかの個性が表れたものであれば足りるというべきであるところ,原告表現1は,9頁にわたる証拠文献を,「再送信同意の基本原則」,「具体的な技術要件」,「再送信同意の手続き」の3部に分けて簡潔に要約したものであり,各部において証拠文献の該当項の冒頭部分を中心に抜き出してはいるものの,必ずしも冒頭部分をそのまま抜き出したものでないことが認められるから,そこには選択の範囲,記述の順序,文章の運び及び具体的な文章表現等の点において原告なりの工夫がされていると認めることができ,その限度で作者の個性が表れていると認められるのであり,表現上の創作性がないということはできない。
(略)
被告らは,原告表現2には創作性がないから,原告の氏名表示権の対象となるべき表現が存在しないと主張する。しかし,原告表現2のうち共通部分は,2003年改正後の英国著作権法6条の規定について説明するものではあるものの,単に同条の規定をそのまま引用したものではなく,「有線番組サービス」等の独自の訳語を用いながら,記述の順序,文章の運び及び具体的な文章表現等の点において原告なりの工夫をしながら,同条の改正内容を分かりやすく解説した文章であると認めることができ,その限度で作者の個性が表れていると認められるから,全体としては表現上の創作性がないということはできない。
[(注)控訴審も同旨]
平成27106日 知的財産高等裁判所[平成27()10064]
被告らは,原告表現1及び同2の創作性は否定されるべきと主張する。しかし,接続詞の有無等,明らかに表現の本質的部分とはいえない部分を除くと,被告らが,原告表現1及び同2における創作性がない根拠として具体的に指摘するのは,原告表現1が,証拠文献の重要部分をありふれた方法で選別,要約,加工したものである,原告表現2が,英国著作権の条文の客観的な説明にすぎない,という点である。これらは,いずれも原告表現の創作性の低さを指摘するものではあるが,特定のまとまりのある文章から重要と考える部分を選別,要約,加工したり,特定の法律の条文の内容を説明したりする表示方法として,多様な選択の幅がある以上,上記の主張では,原告表現1及び同2に個性の発揮がなくありふれたものといえるほどの事情を指摘できておらず,原告表現1及び同2の創作性は否定できない。

[不動産鑑定書]
▶平成131220日東京高等裁判所[平成13(行コ)67]
不動産鑑定書は,不動産鑑定士がその専門的知識と経験に基づき不動産の価格を評価し,評価の前提事実,評価の過程,評価の結論等を記載するものであり,その記載内容は,基本的には客観的事項であるものの,創作的な表現部分も含まれているから,全体として,著作物性を否定することはできない。

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