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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

著作権の制限▶法47条の意義と解釈

昭和59120最高裁判所第二小法廷[昭和58()171]
美術の著作物の原作品の所有権が譲渡された場合における著作権者と所有権者との関係について規定する著作権法451項、47条の定めは、著作権者が有する権利(展示権、複製権)と所有権との調整を図るために設けられたものにすぎず、所有権が無体物の面に対する排他的支配権能までも含むものであることを認める趣旨のものではないと解される。

▶平成11006日東京地方裁判所[昭和62()1744]
著作権法47条は、美術の著作物又は写真の著作物の原作品により、第25条に規定する権利を害することなく、これらの著作物を公に展示する者は、観覧者のためにこれらの著作物の解説又は紹介をすることを目的とする小冊子にこれらの著作物を掲載することができる旨規定するところ、その趣旨とするところは、美術の著作物又は写真の著作物の原作品により、これらの著作物を公に展示するに際し、従前、観覧者のためにこれらの著作物を解説又は紹介したカタログ等にこれらの著作物が掲載されるのが通常であり、また、その複製の態様が、一般に、鑑賞用として市場において取引される画集とは異なるという実態に照らし、それが著作物の本質的な利用に当たらない範囲において、著作権者の許諾がなくとも著作物の利用を認めることとしたものであつて、右規定にいう「観覧者のためにこれらの著作物の解説又は紹介をすることを目的とする小冊子」とは、観覧者のために著作物の解説又は紹介をすることを目的とする小型のカタログ、目録又は図録といったものを意味し、たとえ、観覧者のためであっても、実質的にみて鑑賞用の豪華本や画集といえるようなものは、これに含まれないものと解するのが相当である。この点について更に敷えんすると、右の「小冊子」に該当するというためには、これが解説又は紹介を目的とするものである以上、書籍の構成において著作物の解説が主体となっているか、又は著作物に関する資料的要素が多いことを必要とするものと解すべきであり、また、観覧者のために著作物の解説又は紹介を目的とするものであるから、たとえ、観覧者に頒布されるものでありカタログの名を付していても、紙質、規格、作品の複製形態等により、鑑賞用の書籍として市場において取引される価値を有するものとみられるような書籍は、実質的には画集にほかならず、右の「小冊子」には該当しないものといわざるをえない。

▶平成100220日東京地方裁判所[平成6()18591]
著作権法47条所定の観覧者のために美術の著作物又は写真の著作物の解説又は紹介をすることを目的とする小冊子とは、観覧者のために展示された著作物を解説又は紹介することを目的とする小型のカタログ、目録又は図録等を意味するものであり、展示された原作品を鑑賞しようとする観覧者のために著作物の解説又は紹介をすることを目的とするものであるから、掲載される作品の複製の質が複製自体の鑑賞を目的とするものではなく、展示された原作品と解説又は紹介との対応関係を明らかにする程度のものであることを前提としているものと解され、たとえ、観覧者に頒布されるものであっても、紙質、判型、作品の複製態様等を総合して、複製された作品の鑑賞用の図書として販売されているものと同様の価値を有するものは、同条所定の小冊子に含まれないと解するのが相当である。

平成28622日知的財産高等裁判所[平成26()10019]
47条における「小冊子」は,あくまでも「観覧者のためにこれらの著作物の解説又は紹介をすることを目的とする」ものであることを前提としているから,オークションや下見会に参加して実際に作品を観覧する者以外に配布されるものや,著作物の解説又は紹介以外を主目的とするものは,「小冊子」に当たらないと解するのが相当である。
本件カタログは,本件オークションや下見会への参加の有無にかかわらず,被告の会員に配布されるものであるし,その主たる目的は,本件オークションにおける売買の対象作品を特定するとともに,作家名やロット番号以外からは直ちに認識できない作品の真贋,内容を通知し,配布を受けた者の入札への参加意思や入札額の決定に役立つようにする点にあり,観覧者のための著作物の解説又は紹介を主たる目的とするものでもないことが明らかであるから,著作権法47条にいう「小冊子」には当たるとは認められない。

▶平成211126日東京地方裁判所[平成20()31480]
「小冊子」は「観覧者のためにこれらの著作物の解説又は紹介をすることを目的とする」ものであるとされていることからすれば,観覧する者であるか否かにかかわらず多数人に配布するものは,「小冊子」に当たらないと解するのが相当である。

▶平成30619日東京地方裁判所[平成28()32742]
被告は,被告小冊子,被告パンフレット及び被告特別割引券が著作権法47条の「小冊子」に当たると主張する。
そこで検討するに,著作権法47条の「小冊子」とは,観覧者のために展示作品を解説又は紹介することを目的とする小型のカタログ,目録又は図録等をいい,観覧者に頒布されるものであっても,紙質,装丁,版型,展示作品の複製規模や複製態様,展示作品の複製部分と解説・資料部分の割合等を総合考慮して,観賞用の画集や写真集等と同視し得るものは「小冊子」に当たらないと解するのが相当である。また,同条における「小冊子」は,あくまでも「観覧者のためにこれらの著作物の解説又は紹介をすることを目的とする」ものであることを前提としているから,著作物の解説又は紹介以外を主目的とするものや,実際に作品を観覧する者以外に配布されるものは,「小冊子」に当たらないと解するのが相当である。
これを本件についてみるに,被告小冊子は,A4程度の大きさの上質紙に,一竹作品22点を印刷しているところ,そのうち4点は1頁サイズ,1点は2/3頁サイズ,1点は1/3頁サイズとなっており,一竹作品の細部を鮮明に鑑賞できるものとなっている一方,解説部分は小さな文字で,わずかに記載されているだけであり,観賞用の作品集である被告作品集と比較しても,着物作品の掲載の仕方が似ている。また,被告小冊子には,一竹作品のほかにも,一竹美術館の外観や敷地,着物作品以外の展示品等も掲載されており,全体として一竹美術館自体を紹介する要素が強いものと認められる。
そうすると,被告小冊子は観賞用の作品集と同視し得る上,著作物の解説又は紹介以外を主目的とするものといえるから,著作権法47条の「小冊子」には当たらない。
また,被告パンフレットは,一竹作品を表紙デザインとして使用しているところ,作品についての解説や紹介は一切記載されていない。また,証拠によれば,被告パンフレットのうち日本語以外のものについては,被告HP上にアップロードされているものと認められ,実際に作品を観覧する者以外に配布されている。そうすると,被告パンフレットは,「観覧者のためにこれらの著作物の解説又は紹介をすることを目的とする」ものではないから,著作権法47条の「小冊子」には当たらない。
さらに,被告特別割引券は,割引券という性質上,実際に作品を観覧する者か否かにかかわらず,美術館外部で多数人に配布されるものであり,その「お取り扱い店印」欄の記載によれば,現実にも美術館周辺の飲食店等において配布されているものと認められる。そうすると,「観覧者のためにこれらの著作物の解説又は紹介をすることを目的とする」ものではないから,著作権法47条の「小冊子」には当たらない。
したがって,被告の上記主張はいずれも採用できない。

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