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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

著作者の権利・著作権総論▶権利失効理論との関係

▶平成130530日東京高等裁判所[平成11()6345]
権利を有する者が久しきにわたりこれを行使せず、相手方においてその権利はもはや行使されないものと信頼すべき正当の事由を有するに至ったため、その後にこれを行使することが信義誠実に反すると認められるような特段の事由がある場合には、上記権利の行使は許されないとして、いわゆる失効の原則が適用される場合のあることは、判例とするところである(最高裁昭和301122日第三小法廷判決、同昭和4046日第三小法廷判決)。
しかしながら、本件において、被控訴人は、被控訴人が現在に至るまで70年以上にわたり被控訴人商標等を使用し続けてきたこと、ローズ・オニール及びその承継人が、その間、本件著作権の行使をしなかったことなどを主張するが、それだけでは、上記法理の適用により本件著作権の権利行使の不許ないし権利の消滅を根拠付けるに足りる事情ということはできないから、被控訴人の主張は採用の限りではない。

▶平成180227日知的財産高等裁判所[平成17()10100]
一審被告は,本件の事情にかんがみれば,本件においては,一審被告が一審原告の氏名表示権に基づく権利行使が行なわれないと信頼すべき正当な事由が存在するというべきであって,権利失効の原則に基づき,あるいは権利濫用(民法13)として,一審原告の著作者人格権に基づく各請求は否定されるべきであると主張する。
しかし,氏名表示権については,著作者の自由な処分にすべて委ねられているわけではなく,むしろ,著作物には真実に即した著作者の氏名表示をすることが公益上の要請から求められていることにかんがみると,一審原告が本件各銅像に一審被告の署名が入っていたことを当初より認識していたにもかかわらず30年以上の間何ら異議を述べていなかった等の事情があるとしても,一審被告は依頼者から本件各銅像の制作について高額の報酬を受領しながら,原告に対し何らの制作報酬も支払わないまま今日まで経過してきたこと,その後,一審被告とその元妻との離婚に関する給付金請求訴訟の過程で,平成1458日ころ一審被告が一審原告を助手呼ばわりし,一審原告の名誉感情を毀損したことを発端として本訴に至ったこと等の事情を総合考慮すれば,本件においては,一審被告が一審原告の氏名表示権に基づく権利行使が行われないと信頼すべき正当な事由が存在するとまでは認められず,また,一審原告の本訴請求が権利濫用に該当するということもできない。

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