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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

美術著作物▶個別事例④(エクササイズ用のクッション/照明用シェード/有名デザイナーによるバッグ等/カスタマイズドール/バニーガール衣装

[エクササイズ用のクッション]
▶令和3217日東京地方裁判所[令和1()34531]▶令和3629日知的財産高等裁判所[令和3()10024]
(1) 本件商品は,前記前提事実によれば,エクササイズやストレッチをする際の補助具に用いるクッションであり,実用上の目的を有する工業製品に属するものであるが,他方で,証拠によれば,一般的なクッションとは異なり,長方形のクッションの四隅が斜め上方に突出することで,X字形の印象を与える形状を有するものであり,また,その突出部分には,細く長いものと短く太いものとの2種があり,突出部分と中央部分に,半球状又は半長球状の6個の突起部分が形成されているなどの特徴を有するものであると認められる。
(2) 本件商品のような実用に供される工業製品であっても,「実用的な機能と分離して把握することができる,美術鑑賞の対象となる美的特性」を備えていると認められる場合には,著作権法2条1項1号の「美術」の著作物として,著作物性を有するものと解される。しかし,そのような美的特性を備えていると認められない場合には,著作物性を有することはないものと解される。以上の点は,著作権法に明文の規定があるものではないが,実用に供される工業製品は,意匠法によって保護されるものであり,意匠法と著作権法との保護の要件,期間,態様等の違いを考えると,「実用的な機能と分離して把握することができる,美術鑑賞の対象となる美的特性」を備えていると認められる場合はともかく,そうでない場合は,著作権法ではなく,もっぱら意匠法の規律に服すると解することが,我が国の知的財産法全体の法体系に照らし相当であると解されるからである。これに反する控訴人の主張を採用することはできない。
(3) 本件商品は,全体として実用に供される工業製品として把握されるものであって,X字形の印象を与える形状は,幅広い体型にフィットさせるという目的で採用されたものであり,突出部分に2種あるのも同様の理由によるものであり,また,6個の突起部分も,エクササイズやストレッチをする際の補助具としての機能から設定されるものである。
控訴人が主張するように,本件商品は,形状に工夫が凝らされていて,これを見た者に美しいと感じさせることがあり,そのために機能的な面で犠牲を払った点があるとしても,エクササイズやストレッチをする際の補助具としての実用的な機能と分離して把握することができる,美術鑑賞の対象となる美的特性を備えていると認めることはできない。
控訴人は,特に,他社製品と類似する旨の指摘を被控訴人から受けてデザインを変更した際,独創性等を最も重視した旨主張するが,その際の企画書に,「改良点のコンセプト」について,「心地良さ(ストレッチ,マッサージ,指圧効果)と姿勢(骨盤)矯正ができる実用性を訴求ポイントとしてアピール」と記載されていることからして,控訴人の上記主張は採用できない。その他控訴人が主張する事情も,いずれも上記認定判断を左右するものではない。】
(4) したがって,本件商品は著作物性を有さず,原告が,その著作権を有すると認めることはできず,本件商品を設計する基礎となった各種図面に対する著作権についても同様である。

[照明用シェード]
▶令和2129日東京地方裁判所[平成30()30795]
原告作品の著作物性について
原告作品は,照明用シェードであり,実用目的に供される美的創作物(いわゆる応用美術)であるところ,被告らはその著作物性を争うが,同作品は後記記載のとおり,内部に光源を設置したフレームの複数の孔にミウラ折りの要素を取り入れて折ったエレメントの脚部を挿入し,その花弁状の頭部が立体的に重なり合うように外部に表れてフレームを覆うことにより,主軸の先端から多数の花柄が散出して,放射状に拡がって咲く様子を人工物で表現しようとしたものであり,頭部の花弁状部が重なり合うことなどにより,複雑な陰影を作り出し,看者に本物の植物と同様の自然で美しいフォルムを感得させるものである。このように,原告作品は,美術工芸品に匹敵する高い創作性を有し,その全体が美的鑑賞の対象となる美的特性を備えているものであって,美術の著作物に該当するものというべきである。

[有名デザイナーによるバッグ等]
▶令和元年618日東京地方裁判所[平成29()31572]
原告商品[注:イッセイミヤケのデザインに係るショルダーバッグ,携帯用化粧道具入れ,リュックサック及びトートバッグ等いずれも物品を持ち運ぶという実用に供される目的で同一の製品が多数製作されたもの]は,物品を持ち運ぶという実用に供されることが想定されて多数製作されたものである。
そして,原告らが美的鑑賞の対象となる美的特性を備える部分と主張する原告商品の本件形態は,鞄の表面に一定程度の硬質な質感を有する三角形のピースが2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて敷き詰めるように配置され,これが中に入れる荷物の形状に応じてピースの境界部分が折れ曲がることにより様々な角度がつき,荷物に合わせて鞄の外観が立体的に変形するという特徴を有するものである。ここで,中に入れる荷物に応じて外形が立体的に変形すること自体は物品を持ち運ぶという鞄としての実用目的に応じた構成そのものといえるものであるところ,原告商品における荷物の形状に応じてピースの境界部分が折れ曲がることによってさまざまな角度が付き,鞄の外観が変形する程度に照らせば,機能的にはその変化等は物品を持ち運ぶために鞄が変形しているといえる範囲の変化であるといえる。上記の特徴は,著作物性を判断するに当たっては,実用目的で使用するためのものといえる特徴の範囲内というべきものであり,原告商品において,実用目的で使用するための特徴から離れ,その特徴とは別に美的鑑賞の対象となり得る美的構成を備えた部分を把握することはできないとするのが相当である。
したがって,原告商品は美術の著作物又はそれと客観的に同一なものとみることができず,著作物性は認められない(。)

[カスタマイズドール]
▶平成241129日東京地方裁判所[ 平成23()6621]
「カスタマイズドール」は,頭部,胴体及び四肢部分で構成された人の裸体の外観形態を模写したヌードボディである「素体」に,自らの好みにあわせ,ウィッグ(かつら),衣類等を組み合わせたり,彩色(アイペイント,メイク等),加工,改造等をすることにより作り上げる人形であることに照らすならば,原告各商品のようなカスタマイズドール用素体を購入する通常の需要者においては,自らの好みにあわせて作り上げた人形本体(カスタマイズドール)を鑑賞の対象とすることはあっても,その素材である素体自体を鑑賞の対象とするものとは考え難く,また,原告が主張するような素体を選択する際に当該素体を見ることは,鑑賞に当たるものということはできない。
また,そもそも,原告各商品は,販売目的で量産される商品であって,一品制作の美術品とは異なるものである。
以上によれば,原告各商品が「純粋美術」として美術の著作物(著作権法1014号)に該当するとの原告の主張は,採用することができない。

[バニーガール衣装]
▶令和31029日東京地方裁判所[令和3()1852]
原告は,原告商品が「美術工芸品」(著作権法2条2項)に当たると主張するが,バニーガール衣装は接客などの際に着用する衣装であり,実用品にほかならない。そして,原告が主張する原告商品の特徴は,前記判示のとおり,その差違を外観上識別することは困難なものや,ありふれた工夫というべきものであり,美的鑑賞の対象となり得る美的特性を備えているということはできない。 したがって,原告商品は,著作権法2条1項1号の美術の著作物には該当しない。

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