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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

美術著作物▶個別事例⑥(猫のイラスト/ウサギの擬人化キャラクター/仏画)

[猫のイラスト]
平成31418日大阪地方裁判所[平成28()8552]
原告イラストは,丸まって眠っている猫を上方から描くに当たり,円形状の上部に配された猫の顔のあごの下から片前足を出して,その片前足を片後ろ足や尻尾とほぼ同じ場所でまとめて描くことによって,ほぼ全体を略円形状の輪郭の中に収める一方で,輪郭より外の部分等は描いていないため,全体が一個のマーク(原告は家紋と表現する。)であるかのような印象を与える。
原告イラストの基本的輪郭は円形状であるが,耳や片後ろ足が円から若干突出して描かれているほか,猫の後頭部から肩にかけての部位は若干ふくらむように描かれ,機械的な真円ではないことから,猫がきれいに丸まっているという基本的な印象を維持しつつも,柔らかく自然な印象を与える。
略円形状の上半分には,猫の頭部,片前足,片後ろ足及び尻尾が猫と分かるように描かれているのに対し,略円形状の下半分は,雲を想わせる抽象的な紋様となっているところ,略円形状の輪郭に沿って右回りにたどると,猫の顔や首の白黒の模様が徐々に変化して雲を想わせる紋様となり,さらにたどると,猫の片後ろ足と尻尾になるという形で連続的に変化しており,また,猫の片前足の付け根は渦巻状になっているが,これを白黒反転させた紋様が下半分の雲を想わせる紋様の中に三個存在するため,全体として,猫を描いた部分と抽象的な紋様の部分とが,うまく一体化している。
(略)
原告イラストは,前記で述べたとおり,表現上の特徴を有するところ,これらはありふれたものということはできず,創作性が認められるから,原告イラストは,原告がこれを作成した時点で,美術の著作物として創作されたものと認められる。

[ウサギの擬人化キャラクター]
▶令和539日知的財産高等裁判所[令和4()10100]
控訴人イラストの著作物性
ア 著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいうところ(著作権法2条1項1号)、思想又は感情を創作的に表現したものであるといえるためには、創作者の個性が何らかの形で発揮されていれば足りると解するのが相当である。
イ これを本件についてみるに、証拠によると、控訴人イラストは、控訴人キャラクターのイラストであるところ、頭頂部からウサギの耳のような形状の耳が生え、左側頭部の三つ編みの上部、右側頭部の三つ編みの下部及び左腰部のポケットにそれぞれにんじんが1本ずつ挟まり、首元にウサギを模したマフラーないしショールを身につけているなど、ウサギを擬人化したような特徴的なデザインとなっているものと認められる。そうすると、控訴人イラストは、創作者の個性が発揮されているということができるから、思想又は感情を創作的に表現したものに該当する。なお、控訴人イラストが美術の範囲に属するものであることは、その内容に照らし、明らかである。
以上のとおりであるから、控訴人イラストは、著作物に該当する。

[仏画]
平成241226日東京地方裁判所[平成21()26053]
原告仏画は,いずれも菩薩又は如来を描いた仏教絵画(仏画)であり,描かれる菩薩又は如来の種類に応じて,印相,衣装,装飾品,持物,光背,台座等につき,一定のルールが存在するものと認められる。しかし,例えば,普賢菩薩像又は普賢延命菩薩についてみても,その姿態,持物等について種々の表現がみられることからすれば,そのルールは厳格なものではなく,また,どの時代のどの宗派のものを想定するかによっても,その内容は異なり得るものであることがうかがわれる。そうすると,このように選択の幅がある中において,個々の仏画の具体的表現において,制作者の何らかの個性の発現が認められるものであれば,創作性を認めることができるものと解される。そして,上記創作性の構成要素としては,①絵画の構造的要素(菩薩又は如来とその周辺の台座,光背,背景等の位置関係,菩薩又は如来の姿態,印相,足の組み方・配置,持物の種類・配置,装飾品の形状・配置,着衣・光背・台座の形状等),②色彩,③菩薩又は如来の顔の表情等が考えられるところであるが,これらの要素のうち,どの点を創作性の要素として重視するかについては,描かれる対象である菩薩又は如来の種類等,個々の絵画の具体的表現の内容によって異なるものと考えられるところである。

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