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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

地図図形著作物の侵害性▶個別事例①(建築設計図)

平成150226日東京地方裁判所[平成13()20223]
①原告設計図においては,特殊な形状の建物の内部設計について,顧客である被告○○から各専用部分や共用部分の種類,個数,面積,位置関係等に関して詳細な設計条件を付され,これらの設計条件に適合することが必要であるため,設計者が自由に選択できる事項としては,「各部屋及び通路の具体的形状」及び「全体の配置」などに限られていたこと,②原告設計図における表現方法は,極く一般の設計図において用いられる平面的な表現方法であって,表現方法における格別の個性の発揮はないこと,③本件事務所を,南側壁面に沿った3つのエリアと,西側壁面に沿った細長いエリアに分けるという発想は,正にアイディアそのものであって,この点が著作権法上の保護の対象となり得る表現とはいえないこと等の点を総合考慮すると,原告設計図において,創作性のある部分は,FTJ,日本研究所及びエトラリの各専用部分や各部屋及び通路等の具体的な形状及び具体的な配置の組合せにあるということができる。
以上のとおり,原告設計図は,著作権法上の保護の対象となる著作物といえるが,その創作性のある部分は上記の点に限られるというべきである。
そこで,以下,被告設計図が原告設計図の創作性のある部分について,共通するか否かを検討する。
(略)
上記のとおり,被告設計図と原告設計図を対比すると,各専用部分や通路の具体的な形状及び具体的配置の組合せにおいて大きく異なるから,被告設計図は,原告設計図と実質的に同一であるということはできず,また,原告設計図上に表現された創作性を有する特徴的部分である具体的形状及び配置の組合せを感得することもできない。
確かに,被告設計図と原告設計図とは,全体の基本的配置,すなわち,本件事務所の南側部分を,南側壁面に沿った3つのエリア及び西側壁面に沿った南北に細長いエリアとに分け,そのうち西側壁面に沿った部分にショールーム及び会議室を配し,南側壁面に沿った3つのエリアを一番東側から順にエトラリの専用部分,FTJの専用部分,日本研究所の専用部分としたという点において,共通する。しかし,上記共通点は,原告設計図上のアイディア又は創作性を有しない部分であるというべきであるから,前記の認定を左右するものとはいえない。
したがって,被告設計図が原告設計図の複製ないし翻案したものに該当するとの原告の主張は理由がない。

平成27525日知的財産高等裁判所[平成26()10130]
上記住民の希望に沿った建物の全体形状,寸法及び敷地における建物配置並びに建物内部の住戸配置,既存杭を前提とした場合の合理的な位置の選択の幅は狭いとはいえ,各部屋や通路等の具体的な形状や組合せ等も含めた具体的な設計については,その限定的な範囲で設計者による個性が発揮される余地は残されているといえるから,控訴人の一級建築士としての専門的知識及び技術に基づいてこれらが具体的に表現された控訴人図面全体については,これに作成者の個性が発揮されていると解することができ,創作性が認められる。ただし,以上に説示したところからすれば,本件においては設計者による選択の幅が限定されている状況下において作成者の個性が発揮されているだけであるから,その創作性は,その具体的に表現された図面について極めて限定的な範囲で認められるにすぎず,その著作物性を肯定するとしても,そのデッドコピーのような場合に限って,これを保護し得るものであると解される。
そこで,次に,控訴人図面と被控訴人図面とを具体的に比較検討する。
(略)
以上のとおり,控訴人図面と被控訴人図面とを比較すると,建物の全体形状に所以する各階全体の構造や,Aと基本的に同様の配置とすることに所以する内部の各部屋の概略的な配置は類似するものの,各部屋や通路等の具体的な形状及び組合せは異なる点が多くあり,もともと控訴人図面の各部屋や通路の具体的な形状及び組合せも,通常のマンションにおいてみられるありふれた形状や組合せと大きく相違するものではないことを考慮すれば,控訴人図面及び被控訴人図面が実質的に同一であるということはできない。そうすると,控訴人図面と被控訴人図面とが,その基本となる設計与条件において共通する点があるとしても,具体的に表現された図面としては異なるものであるといわざるを得ず,被控訴人図面が控訴人図面の複製権又は翻案権を侵害しているとは認められない。

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