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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

編集著作物▶個別事例①(英単語集/ネーミング辞典/新聞(特定の日付けの紙面全体)/新聞の一部を構成する特集記事/職業別電話帳/音楽アルバム/同一作家の作品集

[英単語集]
▶昭和590514日東京地方裁判所[昭和50()480]
「要語集」は、3000前後の標準的なアメリカ語の単語、熟語、慣用句を使用頻度に従って選び出した上、これらを見出し語としてアルフアベツト順に配列し、各見出し語に続けて、その日本語訳を付し、その大部分のものについて、見出し語を用いた慣用句、文例及びこれらの日本語訳を付し、場合により、見出し語の発音記号、見出し語の各日本語訳に対応する英語による言換え、語法の簡単な説明等をした「註」、「注意」等をも付したアメリカ語に関する英和辞典の一種であること、並びに右の文例は、昭和21年ころから昭和29年ころまでの間にわたり、ニユーズ・ウイーク、タイム、リーダーズ・ダイジエスト、ニユーヨーク・タイムズ等の雑誌、新聞やわが国の大学入試問題等に掲載された文章の中から、原告自身が適切であると考えたものを選択したものであることが認められる。
右の事実によれば、「要語集」は、原告がアメリカ語を素材にしてその選択と配列に創意をこらして創作した一個の編集著作物と認めることができる。
原告は、「要語集」に掲げられたアメリカ語の新しい語法及び文例について著作権及び著作者人格権を有する旨主張するけれども、アメリカ語の新しい語法を示すものとして原告が集録した単語、熟語、慣用句は言語それ自体を表記したに過ぎないものであつて、原告の思想又は感情の表現ではないことが明らかであるし、文例も原告が創作したものではないから、原告の右主張は失当である。
なお、単語、熟語、慣用句、文例等の日本語訳及び見出し語の英語による言換えは、原告の知的活動の結果表現されたものであると考えられるが、いずれも、日常的によく用いられている単語、熟語、慣用句又は短文の英語を日本訳又は他の英語に置き換えたものであつて、長い文章の翻訳と異なり、英語の語意を正しく理解する能力を有する者であれば、誰が行つても同様のものになると認められるから、原告のみの創作的表現ということはできない。

[ネーミング辞典]
▶平成27326日東京地方裁判所[ 平成25()19494]
編集著作物(法12条1項)における創作性は,素材の選択又は配列に,何らかの形で人間の創作活動の成果が表れ,編集者の個性が表れていることをもって足りるものと解される。
そして,原告書籍は,ネーミング辞典であるから,1234語の原告見出し語とこれに対応する10か国語及びその発音のカタカナ表記を主要な素材とするものであって,これを大,中,小のカテゴリー別に配列したものであると認められるところ,原告従業員らは,こうした素材,とりわけ見出し語の選択及び配列を行うに当たり,幻想世界に強い興味を抱く本件読者層が好みそうな単語を恣意的に採り上げて収録語数1000から1200語程度のコンパクトで廉価なネーミング辞典を編集するという編集方針の下,収録語の取捨選択を行い,構成等を適宜修正しつつ自ら構築したカテゴリー別に配列してネーミング辞典として完成させたものであるということができる。
したがって,原告書籍は,原告従業員らが素材の選択と配列に創意を凝らして創作した編集著作物に当たると認められる。

[新聞(特定の日付けの紙面全体)]
▶平成61027日東京高等裁判所[平成5()3528]
被控訴人新聞の紙面は、報道記事、社説・論評が主要な部分を占め、その他に各種相場表、広告等によって構成されているところ、被控訴人の従業員である編集担当者は、そのもとに集められた多数の記事等の中から、被控訴人新聞の一定の編集方針に従い、またニュース性を考慮して、情報として提供すべきものを取捨選択し、その上で各記事等の重要度や性格・内容等を分析し、分類して紙面に配列しているものであって、被控訴人新聞のこのような紙面構成は、編集担当者の精神的活動の成果の所産であり、また被控訴人新聞の個性を形成するものであるから、特定の日付けの紙面全体は、素材の選択及び配列に創作性のある編集著作物と認めるのが相当であ(る。)

[新聞の一部を構成する特集記事]
▶令和4531日東京地方裁判所[令和3()4081]
本件座談会記事は原告を著作者とする編集著作物に当たるかについて
証拠によれば、原告の職員は、本件座談会記事[注:原告は、聖教新聞(「本件新聞」)4 面に、「座談会㉗ 皆が前進!皆が人材!」、「『青年の月』7 月を新たな決意で」、「わが地域の『立正安国』を!」などの見出しを付して、原告のB会長らが参加した座談会の内容等を記載した記事(「本件座談会記事」)を掲載した。]の作成に当たり、会員の信心の深化や確立を図り、日蓮大聖人の仏法を基調に平和・文化・教育運動を推進するという原告の日刊機関紙としての性格や編集方針を踏まえつつ、原告の会員以外の読者がいることも念頭に置いて記事に掲載する素材を検討し、座談会の出席者の発言内容を記載した本文のほか、「座談会㉗ 皆が前進!皆が人材!」、「『青年の月』7 月を新たな決意で」、「わが地域の『立正安国』を!」、「10 日から『記念上映会』が開始」などの見出し、座談会の出席者5名の顔写真、九州南部の大雨被害を受けて救援物資の輸送に当たる会員らの姿を写した写真、記念上映会の会場となる会館を使用する際の注意事項リスト等を素材として選択した上で、全体の見やすさ等に配慮してそれらの配置を検討し、上記各見出しは記事の最上段や右上部等に分散させると共に、出席者らの上記顔写真は記事の左上部に、会員らの上記写真や上記注意事項リスト等は本文の内容に応じて本文中に埋め込むように、それぞれ配置したことが認められる。
これによれば、本件座談会記事は、その素材の選択・配列について原告の思想又は感情が創作的に表現されているといえるから、著作権法上保護の対象となる編集著作物(著作権法121項)に当たる。
また、本件座談会記事は本件新聞の一部を構成するものであることに鑑みると、本件新聞の場合と同様に、原告は、その著作者として本件座談会記事に係る著作権を有すると認められる。これに反する被告の主張は採用できない。

[職業別電話帳]
▶平成120317日東京地方裁判所[平成8()9325]
タウンページの職業分類は、検索の利便性の観点から、個々の職業を分類し、これらを階層的に積み重ねることによって、全職業を網羅するように編集されたものであり、原告独自の工夫が施されたものであって、これに類するものが存するとは認められないから、そのような職業分類体系によって電話番号情報を職業別に分類したタウンページは、素材の配列によって創作性を有する編集著作物であるということができる。

[音楽アルバム]
▶平成70222日東京地方裁判所[平成6()6280]
「アルバム」は、複数の曲が一定の数だけ集められ、特定の順序で配列されて収録されたものであるが、これは、アルバム製作者が、一定のコンセプト、イメージ等に基づいて、複数の曲の中から、収録する一定数の曲を選択し、その配列の順序を決定した上で製作するものであって、編集著作物となりうるものである。

[同一作家の作品集]
▶平成28127日知的財産高等裁判所[平成27()10022]
本件書籍は,故甲Ⅰの作品合計125編を,「Ⅰ 創作(詩・小説)」,「随筆」,「評論・感想」,「アンケート」,「自作関連」,「観戦記」の6項目に分類配列したものであり,各項目内における作品の配列は,「ツエペリン飛行船と默想」を除き,初出あるいは執筆の時期(推定を含む。)により年代順に配列するという方針に沿ったものである。
本件書籍は,故甲Ⅰの未発表,全集未収録作品から構成され,「一般の読者を対象とし,故甲Ⅰの新たな面に光を当て,全集収録作品等の読み直しを促すような,資料的でありながら読み物として読むこともできる単行本とする」という編集方針の下,収録作品が選択され,各作品の内容に応じて6項目に分類され,配列されたものであると認められる。
ところで,本件書籍を構成する故甲Ⅰの作品125編の選択は,未発表,全集未収録作品であることという観点でされたものであって,収集された作品(原稿)は,判読不能なもの,未完成のもの,一部しかなく完全でないもの,全集と重複するものや対談等の記事を除き,本件書籍を構成する作品として本件書籍に収録されている。上記作品の収録及び除外基準は,ありふれたものであって,本件書籍は,素材の選択に編者の個性が表れているとまでいうことはできない(なお,本件書籍を構成する作品は,その多くを,故甲Ⅰの著作権承継者の子である控訴人が収集し,被控訴人に提供したものであると認められるが,控訴人が被控訴人にいかなる作品を提供するか選択したことは,著作権者が編集物に収録を許諾する作品を選択する行為,すなわち,素材の収集に係るものであって,創作行為としての素材の選択であるとはいえない。)。
これに対し,「Ⅰ 創作(詩・小説)」,「随筆」,「評論・感想」,「アンケート」,「自作関連」,「観戦記」の分類項目を設け,特に,上記の分類項目を独立させたこと,さらに選択された作品をこれらの分類項目に従って配列した点には,編者の個性が表れているということができる。なお,個々の分類項目の中で年代順に配列したことは,ありふれたもので,編者の個性が表れているとまでいうことはできない。
したがって,本件書籍は,作品を6つの分類項目を設けそれに従って配列したという素材の配列において創作性を有する編集著作物に該当するというべきである。

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