Kaneda Copyright Agency ホームに戻る
カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

編集著作物▶個別事例⑥(ビジネスソフトの表示画面/間取図作成ソフト/商品宣伝ウェブサイト)

[ビジネスソフトの表示画面]
▶令和3917日東京地方裁判所[平成30()28215]▶令和4323日知的財産高等裁判所[令和3()10083]
(1) 著作権法12条1項は,編集物で素材の選択又は配列によって創作性を有するものは著作物として保護すると規定するところ,原告は,原告製品の表示画面全体をみた場合,当該画面の選択及び配列に創作性があるので,原告製品は全体として編集著作物に当たると主張する。
前記判示のとおり,原告製品のようなビジネスソフトウェアは,一定の業務フローを前提としていることから,単一の画面表示で完結することはなく,業務の種類ごとに複数の画面を有し,画面に表示された特定の項目をクリックすると次の画面に遷移するなど,利用者は同一階層又は異なる階層に設けられた複数の表示画面全体を利用して作業を行うことが想定されている。
かかるビジネスソフトウェアの特性を考慮すると,一定の業務目的に使用される各表示画面を素材と考え,各画面の選択とシステム全体における配置,更には画面相互間の牽連性に創作性が認められる場合には,素材の選択及び配列に創作性があるものとして,当該ソフトウェアの表示画面が全体として編集著作物に当たるとの考え方も一般論としてはあり得るところである。
(2) 本件において,原告は,原告製品の表示画面の最上部にメニュータグを常時表示し,各タグに具体的な業務名を明記した上で,どの画面からも次の業務に移行できるようにしていること,画面の中央にサブメニュー画面を用意し,日,週,月単位の売上情報,他店舗,定期改正,リクエスト管理の情報につき,画面遷移なしに表示することを可能にしていることなどを根拠として,当該表示画面の選択と配列に創作性があると主張する。
しかし,前記で判示したとおり,画面の最上部にメニュータグを常時表示し,そのいずれの画面からも次の業務に移行できるようにすることや,画面の中央にサブメニュー画面を用意し,画面遷移なしに【各種情報を】表示することは,利用者の操作性や一覧性あるいは業務の効率性を重視するビジネスソフトウェアにおいては,ありふれた構成又は工夫にすぎないというべきであり,原告製品における表示画面の選択や相互の牽連性等に格別な創作性があるということはできない。
その他,本件において,原告製品が,これを構成する各表示画面の選択,システム全体における各画面の配置,画面相互の牽連性などの点において創作性を有すると認めるに足りる証拠はない。
(3) したがって,原告製品が編集著作物に当たるとは認められず,被告表示画面が,編集著作物としての原告製品に係る著作権を侵害するということはできない。

平成140905日東京地方裁判所[平成13()16440]
一般にビジネスソフトウェアにおいては,ディスプレイ上に表れる表示画面は,常に一定ではなく,利用者がクリックやキー操作を通じてコンピュータに対する指令を入力することにより,異なる表示画面に転換する。このような一定の画面から他の画面への転換が,特定の思想に基づいて秩序付けられている場合において,当該表示画面の選択と配列,すなわち牽連関係の対象となる表示画面の選択と当該表示画面相互間における牽連関係に創作性が存在する場合には,そのような表示画面の選択と組合せ(配列)自体も,著作物として著作権法による保護の対象となり得るものと解される。
この場合,個々の表示画面自体に著作物性が認められるかどうかにかかわらず,表示画面の選択又は組合せ(配列)に創作性が認められれば,著作物性を認めることができるというべきである。そして,編集物における素材の選択・配列の創作性が著作者により1個のまとまりのある編集物として表現されている集合体を対象として判断されることに照らせば(著作権法121項),このような表示画面の選択と相互間の組合せ(配列)は,牽連関係にある表示画面全部を基準として,選択・配列の創作性の有無を検討すべきものである。

▶令和2319日東京地方裁判所[平成30()33203]
2 原告は,本件において,パソコン画面等で表示される原告商品の親カテゴリーから小カテゴリーに至る「各カテゴリー名」が「素材」であって,その「素材」の選択及び配列に創作性が認められるとして,原告商品が編集著作物(著作権法12条)であると主張する。
しかし,前記認定のとおり,原告商品は,パソコン等において各種の確認や作業等を行うことができるものであり,その確認,作業等を行ったりするためにパソコン等において,様々な内容が表示される複数の画面を表示することができるものである。ここで,原告が素材と主張する「カテゴリー名」は,パソコン等の画面において,原告商品において選択することができる機能に対応する画面を示すために,画面の上部に,ロゴ等表示部分の下のやや太い青みがかった線に,白抜き文字で表示されているものであったり(親カテゴリー名,中カテゴリー名),親カテゴリー名又は中カテゴリー名を選択した場合に,そのカテゴリー名の下に,もとの画面の前面に,表示されるものであったり(大カテゴリー名,小カテゴリー名),各画面において,ロゴ等表示部分及びカテゴリー名を表示するやや太い青みがかった線の下に,示されるものである(小カテゴリー名)。
このような原告商品とそこにおけるカテゴリー名の使用の態様に照らせば,これらの「カテゴリー名」は,原告商品の異なる画面において,他にも多くの記載がある画面の表示の一部として表示されるものであって,原告商品をもって,「カテゴリー名」を「素材」として構成される編集物であるとはいえない。
そうすると,原告商品が編集著作物であり,カテゴリー名自体が原告商品の素材であると主張する原告の主張は,その余を判断するまでもなく理由がない。
3 また,原告は原告商品を編集著作物であると主張し,「カテゴリー名」の選択と配列において創作性を有し,その「カテゴリー名」の選択と配列において被告商品と共通すると主張するところ,原告商品を利用した場合には,前記認定のとおり,パソコン等において,視覚的に認識することができる様々な画面が表示される。それらの各画面は,前記のように,原告が選択したカテゴリー名に対応するものといえ,また,それらはパソコン等の画面において,階層的に配列されているともいえる。他方,被告商品においても,「カテゴリー名」に対応する画面が表示されるといえる。
しかし,原告商品の各画面は,そのカテゴリー名に対応する機能を実現するために表示されるものである。そうすると,原告商品における各カテゴリー名と各画面の表示との関係は,何らかの素材をカテゴリー名やその階層構造に基づいて選択,配列したというものではなく,カテゴリー名に対応する機能を実現するための画面の表示があるといえるものである。そして,カテゴリー名は,結局,それに対応して原告商品が有する機能・利用者が利用しようとする機能を表すものである。そうすると,原告は原告商品はカテゴリー名の選択,配列において編集著作物としての創作性を有し,その点で原告商品と被告商品が共通していると主張するのであるが,それらの選択と配列が共通しているとの主張は,結局,ある商品において採用された機能やその機能の階層構造が共通していると主張しているのに等しい部分がある。ある商品においてどのような機能を採用するかやその機能をどのような階層構造とするか自体は,編集著作物として保護される対象となるものではない。
4(1) さらに,原告は,原告商品におけるカテゴリーの名称そのものについて選択の幅があること,その階層構造などから,カテゴリー名の選択,配列に創作性があると主張する。
前記のとおり,原告商品がカテゴリー名を素材とする編集著作物として保護されることはないが,以下に述べるとおり,原告商品のカテゴリーの名称やその階層構造は,ありふれたものであり,それら自体に著作権法上の創作性があるともいえない。
(略)
(3) LINE@を用いた集客,マーケティング支援ツールという原告商品においてどのような機能を実装するかはアイディアに過ぎず,それ自体は著作権法の保護の対象になるものではない。そして,「素材」たる各カテゴリーの名称の選択についてみると,上記のような原告商品の性質上,各カテゴリーに付す名称は,各カテゴリーが果たす機能を一般化・抽象化し,ユーザーにとって容易に理解可能なものとする必要があるため,その選択の幅は自ずと限定される。そのような視点で選択された原告商品の各カテゴリー名は,それ自体をみてもありふれたものであり,現に,原告商品の「メッセージ」,「統計情報」というカテゴリー名は他社商品でも用いられているほか,原告商品の「メッセージ」の下に設けられた小カテゴリーの各カテゴリー名や「統計情報」の下に設けられた小カテゴリーの各カテゴリー名と同一ないし類似したカテゴリー名が他社商品においても用いられている。また,原告商品において用いられている「基本」や「ホーム」といったカテゴリー名は,他社商品においては用いられてはいないものの,消費者とのコミュニケーションを図るという観点から頻繁に使われる機能を取りまとめたカテゴリーに付されたものであり,上記のような原告商品の性質を踏まえると,カテゴリー名の選択としてはありふれたものである。
したがって,原告商品における各カテゴリーの名称は,各カテゴリーが果たす機能を表現するものとしてはありふれたものといえる。
次に,各カテゴリー名の配列についてみても,原告商品においては,「基本」という最上位の階層に,消費者とのコミュニケーションを図る上で利用可能な機能を取りまとめ,その中でも消費者とのコミュニケーションを図る上で日常的に利用する機能を「基本」の下の階層の「ホーム」に取りまとめるなどされているほか,多種多様な機能を果たす「ホーム」より下のカテゴリーについては,小カテゴリーに至るまで階層を設けてカテゴリー分けがされるなど他社商品に比して複雑な階層構造が採用されており,各カテゴリー名の配列について一定程度の工夫はされていると認められる。
しかし,ユーザーによる操作や理解を容易にするという観点から,実装した機能の中から関連する機能を取りまとめて上位階層のカテゴリーを設定し,機能の重要性や機能同士の関連性に応じて順次下位の階層にカテゴリー分けをしていくというのは通常の手法であり,原告商品の各カテゴリー名の配列は,複数の選択肢の中から選択されたものではあるものの,ありふれたものというべきである。

[間取図作成ソフト]
▶平成190628日名古屋地方裁判所[平成18()3944]
原告は,原告ソフトのパーツの選択について編集著作権が存する旨主張しているが(パーツの配列については,和室,洋室,DK・LDKなどの各種類ごとに,そのサイズの順に並べられているにすぎないから,少なくともその配列に創作性を認めることはできない。),住宅の間取図を簡便に作成するためのものという間取図作成ソフトの性質上,そのパーツは,一般的な住宅において通常用いられる種類,サイズ,形状のものに自ずと限られることになり,例えば和室,洋室,DK・LDKを例にとってみると,その形状には縦横の長短はあるが,四角形を基本とするものに限られている上,畳の数によって3畳,4畳半,6畳,7畳半などと選択できるサイズは限定され,しかも,通常の住宅を想定していることから18畳程度を上限とするものであって,その選択の幅はかなり限定されたものとなっている。原告ソフトにおいて選択されたパーツの個数についてみても,その総数は150点を超える程度であるが,和室,洋室などの種類ごとに見れば,それぞれ3点ないし13点程度であってその数は決して多いものではない。
(略)
そうすると,原告ソフトや他社ソフトにおいて用意されているパーツは,いずれも一般的な住宅において通常用いられる種類,サイズ,形状のものが選択されており,その選択状況に違いがあっても,それは,当該ソフト自体の機能の違いから生じているにすぎず,また,その選択の仕方自体が原告ソフトに特有の個性を表現するまでに至っているとは認められない。
したがって,原告ソフトにおけるパーツの選択は,ごく実用的な観点からなされるものであって,編集者の思想又感情に基づく創作的行為としては評価し難い性質のものである上,間取図作成ソフトの分野においてありふれたものではないと認められる程度の,原告ソフトに特有の個性を帯有するものとは認められないから,原告ソフトは創作性を有する編集著作物に当たるとはいえない。

[商品宣伝ウェブサイト]
▶令和2127日大阪地方裁判所[平成29()12572]
証拠及び弁論の全趣旨によれば,別紙対照表のとおり,原告制作物3である原告作成の被告のウェブサイトには,①トップページの上部に大きく料理の写真を配置し,その下に商品を宣伝するための説明文章を配置していること(なお,麺の茹で方に関する説明書きが配置されていることは認められない。),②トップページの上部に大きく配置した料理の写真は,オリジナルレシピの料理を選択しており,それが別のオリジナルレシピの料理の写真と自動的に入れ替わるように設定していること,③トップページの下部に意図的に余白部分を多く取り,その上で,見出しコピー,説明コピー及び各コンテンツのグラフィック画像を,整理してレイアウトしていることが認められる。 しかし,証拠及び弁論の全趣旨によれば,①~③の特徴は,料理やその素材を販売するウェブサイトにはしばしば見られる構成であることが認められる。そうすると,原告制作物3は,料理の素材を販売するウェブサイトとして,素材の選択及び配列のいずれについても,創作性を有するとはいえず,著作物性は認められない。

一覧に戻る

https://willwaylegal.wixsite.com/copyright-jp