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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

著作者▶個別事例①

▶令和4328日知的財産高等裁判所[令和3()10085]
本件動画の著作者について
控訴人X1は、前記のとおり主張するところ、引用に係る原判決説示のとおり、本件動画は、被控訴人が報道番組等において使用してもらうことを企図して撮影されたものであり、イエメンの難民キャンプや反政府勢力の支配都市等の状況が撮影され、また、被控訴人が現地の住民とのやり取りを取材している様子や、被控訴人がその状況についてカメラに向かって日本語で語りかけている様子等が収められているものである。
被控訴人がイエメンでの入国経験や取材経験もなかったのに対し、控訴人X1は、イエメンでの入国経験があり、難民キャンプも訪れたことがあり、案内人のBとは以前から面識があることから、控訴人X1が、被控訴人から、相談を受けて、訪問先や関係情報等について教示し、また、被控訴人が現地で語っている様子を被控訴人の持参したビデオカメラで撮影したことがうかがわれるものの、本件動画の撮影目的に加え、被控訴人が紛争地域の取材、撮影を行うフォトジャーナリストとして活動していたことからすると、控訴人X1が、訪問先を決定し、撮影する位置を指示したり、撮影中の被控訴人の発言や撮影内容について決定していたとはおよそ考え難く、控訴人X1は本件動画の撮影に当たっての情報提供や補助的な役割を果たしたのにすぎないというべきであるから、控訴人X1が本件動画の全体的形成に創作的に寄与したものと認めることはできない。

▶令和3611日東京地方裁判所[令和1()30491]▶令和3122日知的財産高等裁判所[令和3()10056]
【控訴人[注:原審の「原告」]は本件著作物の著作者であるか】について
(1)ア 本件著作物の冒頭には,本件タイトルに続いて,肩書である「E大学」とともに被告の氏名が記載されている。このように,本件著作物には,著作者名として通常の方法により被告の氏名が表示されているといえるから,本件著作物の著作者は被告であると推定される(著作権法14条)。
イ しかしながら,前記のとおり,被告は,短期間のうちに,被告がACSET[注:「第4回社会,教育及びテクノロジーに関するアジア学会2016」のこと]で発表した内容を英語で記載した原稿を作成する必要があったことから,英語を母国語とする原告及びCに上記原稿の執筆への協力を依頼し,原告及びCは,Googleドキュメントのクラウド上に保存した本件骨子のデータファイルを共同で編集する方法により,被告がACSETで発表した際の資料等を基にして執筆を行い,原告が最後に全体を通読して加除訂正を行って,本件著作物を完成させたものである。
ウ 前記のとおり,本件骨子は,被告がACSETでの発表内容を基にして原告とともに作成したものであるが,証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件骨子は,A4サイズで【約3頁分】のものであり,その冒頭には本件タイトル並びに被告の氏名及び所属が記載され,その本文には複数の見出しが列挙され,これらのうち「Abstract」,「Keywords」及び「Introduction」の各見出しの下には相応の記載があるが,その他の見出しの下にはほとんど記載がないこと,本件著作物は,A4サイズで【約14頁分】のものであり,その冒頭には本件タイトル,被告の氏名及び所属並びにACSET公式会議録である旨が記載され,その本文には本件骨子の本文に列挙された見出しに加えてさらに複数の見出しが挙げられ,各見出しの下には表が引用されるなど相応の記載があること,本件著作物の「Abstract」及び「Keywords」の各見出しの下の記載の約半分(1頁の約5分の1相当)は,本件骨子の「Abstract」及び「Keywords」の各見出しの下の記載と一致するが,その他の見出しの下の記載は異なるか,本件著作物において新たに書き加えられたことがそれぞれ認められる。
上記認定事実によれば,本件著作物は,本件骨子とタイトルや複数の見出しが同一であり,本文の記載の一部が一致するものの,本件骨子の4倍強の分量に至るまで加筆がされており,このうち本文の記載が一致する部分はごくわずかであるといえる。そうすると,原告及びCが,本件骨子に創作的な表現を付加し,これを修正,変更等したことにより,本件著作物においては,本件骨子の表現上の本質的な特徴の同一性が失われているというべきであり,被告の思想又は感情が本件骨子を介して本件著作物に創作的に表現されたと認めることは困難である。
エ そして,他に,本件著作物が完成するまでに,【被控訴人[注:原審の「被告」]が,多少の加除訂正の範囲を超えて,Googleドキュメントのクラウド上に保存された本件骨子のデータファイルにつき実質的な編集作業をした】ことや,原告及びCに対して本件著作物の表現について具体的に指示したことを認めるに足りる証拠はない。
オ 前記イないしエによれば,本件著作物は,その作成に原告,被告及びCといった複数の者が関与したものといえるが,その作成過程における客観的な行為を検討すれば,原告及びCが創作的表現を最終的に確定させる行為を行ったものということができる。したがって,本件著作物は,原告及びCの思想又は感情が創作的に表現されたものであり,被告の思想又は感情が創作的に表現されたとは認められないというべきであるから,本件著作物の著作者に関する前記アの推定は覆滅されるというほかはない。
そして,前記のとおり,主として,Cがその前半部分を,原告がその後半部分を執筆し,原告が最後に全体を通読して加除訂正を行っており,各人の寄与を分離して個別的に利用することができないといえるから,本件著作物は原告及びCの共同著作物であると認めるのが相当である。
(2) これに対して,被告は,本件著作物の内容の最終的な決定権限は被告にあり,原告及びCは補助者にすぎないから,本件著作物の著作者は被告であるか,原告,被告及びCの3名であると主張する。
しかし,被告に本件著作物の内容の最終的な決定権限があったとしても,本件著作物の作成経緯及び内容は前記(1)のとおりであって,本件著作物中に被告の思想又は感情が創作的に表現された部分を認めることはできず,その創作的表現の最終的確定者は原告及びCであると認められる。
したがって,本件著作物の著作者に被告は含まれないと認めるのが相当であり,被告の上記主張はいずれも採用することができない。
(3) 以上のとおり,本件著作物は原告及びCの共同著作物であり,本件著作物の著作者は原告及びCである。

▶令和4330日東京地方裁判所[令和1()25550]
原告が本件企画書等の著作者か否かについて
原告は、本件企画書の作成に際して本件土地の開発計画を立案し、つくば建設設計事務所等から提出された検討結果を総合的に取りまとめ、本件企画書に落とし込む作業を行ったこと、建築計画等の制作において設計図面等の著作権は発注者である取りまとめ会社に帰属する慣例があることから、原告は本件企画書の著作者であると主張する。
しかし、単に計画を立案したというのみではアイデアの提供にとどまるし、他社による検討結果を取りまとめ、本件企画書に落とし込む作業をしたとしても、当該他社の創作的表現を本件企画書に記載したのみでは、当該作業を通じて、本件企画書に原告の思想又は感情を創作的に表現したことにはならないというべきである。そして、本件全証拠によっても、原告が本件企画書等の作成にどのように関与したのかは明らかではないから、本件企画書等が「著作物」に該当するとしても、原告がこれを「創作」したと認めることはできない。したがって、原告が本件企画書等の「著作者」(著作権法2条1項2号)であるとは認められない。
また、原告が主張するような慣例が存在することを認めるに足りる証拠もないから、そのような慣例に基づいて原告が本件企画書等の著作者になると認めることもできない。
以上の次第で、仮に本件企画書等に著作物性が認められるとしても、原告は本件企画書等の著作者であると認めることはできない。

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