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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

権利濫用▶個別事例[認定例]①(一連の「キューピー関連事件」)

▶平成111117日東京地方裁判所[平成10()13236]
以上認定した事実、すなわち、原告は、一方において、本件著作権を平成1051日に譲り受けたと主張しているにもかかわらず、①正当な権原を取得したとする時期よりはるか前である昭和54年ころから、キューピーの図柄等のデザイン制作、及びキューピーに関する商品の販売等を行い、自らが本件著作権の侵害となる行為をして、利益を得ていたこと、②自らが主催するキューピーに関する団体の活動においても、D[(注)本件人形の著作者であり、本件著作権の原始的取得者]が作成したキューピーの複製品(原告の主張を前提とする。)を製造、販売したこと、③さらに、キューピーに関する原告の商品には原告が著作権を有するかのような表示を付したりしていたこと、④原告は、自己がデザインしたキューピーに関する商品を販売していた取引相手に対して、キューピー商品一般(原告の制作したキューピー商品以外のもの)について、使用許諾料の請求をするなどしている等の事実に照らすならば、自らが本件著作権の侵害行為を行って利益を得ていた原告が、本訴において、被告に対し、本件著作権を侵害したと主張して、差止め及び損害賠償を請求することは、権利の濫用に該当すると解するのが相当である。したがって、この点からも、原告の請求は失当である。

▶平成111117日東京地方裁判所[平成10()16389]
以上認定した事実、すなわち、参加人は、一方において、本件著作権を平成1051日に譲り受けたと主張しているにもかかわらず、①正当な権原を取得したとする時期よりはるか前である昭和54年ころから、キューピーの図柄等のデザインを業として開始して、キューピー商品の販売等により利益を得ていたこと、②自らが主催するキューピーに関する団体の活動においても、C[(注)本件人形の著作者であり、本件著作権の原始的取得者]が作成したキューピーの複製品(参加人の主張を前提とする。)を製造、販売したこと、③さらに、被告との関係では、平成311月、平成42月、3月、参加人の所蔵するキューピーコレクションを用いたロビー展の開催を促し、その対価の支払を受けたり、平成5年から7年に掛けて、被告に顧客配布用の商品を販売し、約12000万円の支払を受けたりしたが、被告と取引が継続していた時期に、被告に対し、キューピーについて第三者が著作権を有していると示唆したことはなく、キューピーに関する参加人の商品には参加人が著作権を有するかのような表示を付したりしていたこと等の事実に照らすならば、参加人は、その主張を前提とすれば、自らが、本件著作権の侵害となる行為を多年にわたって継続し、多額の利益を得ていたばかりか、被告に対して、積極的な著作権侵害行為を誘発していたことになる。このような事実経緯に照らすならば、長年にわたり連綿と被告イラスト等の使用を継続してきた被告に対して、本件著作権を侵害したと主張して、差止め及び損害賠償を請求する参加人の行為は、正に権利の濫用に該当すると解すべきである。したがって、この点からも、参加人の請求は失当である。

▶平成170909日東京地方裁判所[平成17()7875]
被告代表者は,平成1051日にローズ・オニールの著作物に係る著作権を譲り受けたことから,キューピー株式会社によるキューピーの図柄等の複製行為が当該著作権を侵害する等と主張して,同社に対し,複製行為等の差止め及び10億円の損害賠償等を求める訴えを提起したが(東京地方裁判所平成10()13236号),同裁判所は,被告代表者の上記請求は権利の濫用に該当するなどとして,平成111117日,被告代表者の請求をいずれも棄却する旨の判決を言い渡した。
(略)
上記と同様に,被告代表者は,平成1051日にローズ・オニールの著作物に係る著作権を譲り受けたことから,株式会社日本興業銀行によるキューピーの図柄等の複製行為が当該著作権を侵害すると主張して,同社に対し,複製行為の差止め及び10億円の損害賠償等を求める訴えを提起したが(東京地方裁判所平成10()16389号),同裁判所は,被告代表者の上記請求は権利の濫用に該当するなどとして,平成111117日,被告代表者の請求をいずれも棄却する旨の判決を言い渡した。
(略)
上記認定のとおり,ローズ・オニールの著作物に係る著作権の保護期間及び本件契約の内容並びに本件訴訟に至る経緯等によれば,原告は,少なくともローズ・オニールの著作物に係る著作権を業として利用する目的はなかったのであって,むしろ,原告は,被告が著作権の侵害行為を行って利益を得ていたと指摘する判決に目を付けて,その利益を損害賠償金として取得しようとして,これに関する著作権を取得しようとしたものと推認することができる。
そうすると,このような原告の請求は,司法機関を利用しつつ不当な利益を追求するものであって,文化的所産の公正な利用を目的とする著作権法の趣旨に反するものであるから,原告の主張に係る著作権に基づく請求は,権利濫用として許されないというべきである。
[控訴審同旨]
▶平成180131日知的財産高等裁判所[平成17()10113]
控訴人は,あくまでも被控訴人の不正を明確にしたいだけであって,司法機関を利用しつつ不当な利益を追求するような目的を全く有しておらず,そのような誤解を避けるため,不服申立の対象を,原判決のうち10万円の支払請求に係る部分に限定した旨主張する。
しかしながら,原判決認定のとおり,①被控訴人代表者が,ローズ・オニールの著作に係るキューピーについての著作権の侵害行為を行って利益を得ていたと指摘する判決があったこと,②控訴人は,上記著作権の我が国における保護期間が満了するまで残り2か月にも満たない時点で,○○社から上記著作権を譲り受ける旨の契約を締結したものであるが,その譲渡代金の支払は,譲渡対象の権利が我が国の判決により認められることを前提とするなど,不自然な契約内容であること,③控訴人は,上記譲り受けからわずか1か月後に本件訴えを提起していること,④控訴人がローズ・オニールの著作物を利用した事実を認めるに足りないこと等の事情に照らせば,控訴人による上記著作権の取得は,上記著作権を業として利用しようとするものではなく,上記判決で指摘された被控訴人代表者の利益を損害金名目で取得しようとの意図に基づくものと推認されてもやむを得ないというべきであり,控訴人の本訴請求は著作権法の趣旨に反し権利の濫用として許されないものといわざるを得ない。控訴人は,被控訴人に対して全部で6億円の損害金支払請求権を有していることを前提に,その一部請求として1000万円の支払を訴求していたものであるから,控訴人が,原判決に対する不服申立の対象を,10万円の支払請求に係る部分に限定したことは,上記推認を何ら左右するものではない。

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