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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

権利濫用▶個別事例[否認例]

▶令和3423日東京地方裁判所[令和2()27196]
本件損害賠償請求が権利の濫用に該当するかについて
証拠及び弁論の全趣旨によれば,被告は,本件サイトにおいて,核兵器禁止条約への日本の参加の当否に関し,本件掲載行為当時の原告の対応に批判的な立場から,「日本は核兵器禁止条約に参加すべきである」との主張を原告が聖教新聞紙上で表明することを求め,これを求める請願書への署名活動を行っていること,本件掲載行為は,B名誉会長の発言等が被告のそのような主張に沿うものであると位置付けて行われたこと,原告は,被告に対し,本件訴訟提起に先立ち,令和2年7月6日付けの通知書によって本件訴訟におけるものと同様の損害賠償及び本件各画像の本件サイトからの削除を求めたこと,被告は,当該通知書を受領しても,本件各画像の削除や損害賠償金の支払に直ちに応じず,SNSに当該通知書の画像をアップロードし,当該通知書の送付が原告による嫌がらせである旨の投稿をしたこと,被告は,その後,プロバイダから削除を求められたとして,本件各画像のうち,本件画像8-2以外のものを同年9月3日に本件サイトから削除したものの,本件画像8-2についてはプロバイダからの指摘がないとして削除しなかったこと,原告は,同年10月27日,本件訴訟を提起したことが認められる。
そして,前記のとおり,被告は,本件掲載行為により,本件各写真,本件各紙面及び本件ファイルに係る原告の著作権及び著作者人格権を侵害したものであるところ,原告の被告に対する損害賠償等の請求は,これらの権利の侵害を理由とするものであって,著作権及び著作者人格権の侵害を伴わない態様で被告が意見を述べることについては,請求の対象とするものではないというべきである。また,上記認定に係る経緯に照らせば,原告は,本件訴訟提起に先立ち,被告に対して本件サイトの本件各画像の削除と損害賠償を求めたが,被告がこれを拒んだことから,本件訴訟を提起するに至ったものと認められる。他方で,聖教新聞に掲載された写真や記事をインターネット上に無断で掲載する者が被告以外にどの程度存在するか,それらの者に対して原告がどのような対応をしているかを確定し得る証拠はない。
以上によれば,被告が,日本の核兵器禁止条約への参加を巡って,原告に対る批判的な言動を行っていたという事情や,聖教新聞に掲載された写真や記事をインターネット上に掲載する者に対して原告が一律に損害賠償請求等をしていない可能性があることを考慮しても,原告が被告を狙い撃ちにし,その言論と表現の自由を抑圧することを目的として,損害賠償請求等を行ったとまでは認められない。そうすると,本件において,原告の被告に対する本件損害賠償請求が権利の濫用に該当するとは認められないというべきであり,その他,本件全証拠によっても,本件損害賠償請求が権利の濫用に該当することを基礎づけるような事情は認められない。 したがって,被告の権利濫用の抗弁は理由がないというべきである。

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