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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

プライバシー権・人格権・肖像権・名誉権▶個別事例②(肖像権侵害の認定事例)

▶令和2924日東京地方裁判所[令和1()31972]
人の肖像は,個人の人格の象徴であるから,当該個人は,人格権に由来するものとして,これをみだりに利用されない権利を有する。そして,当該個人の社会的地位・活動内容,利用に係る肖像が撮影等されるに至った経緯,肖像の利用の目的,態様,必要性等を総合考慮して,当該個人の人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超える場合には,当該個人の肖像の利用は肖像権を侵害するものとして不法行為法上違法となると解される。
これを本件についてみると,本件画像は,原告Bを被撮影者とするものである。本件画像が含まれる本件動画の撮影及びそれをインターネット上の投稿サイトに投稿したのは原告Aであり,原告Bは夫である原告Aにこれらの行為を許諾していたと推認され,本件画像の撮影等に不相当な点はなく,氏名不詳者は上記投稿サイトから本件動画を入手したものではある。しかしながら,本件動画は24時間に限定して保存する態様により投稿されたもので,その後も継続して公開されることは想定されていなかったと認められる上,原告Bが,氏名不詳者に対し,自身の肖像の利用を許諾したことはない。原告Bは私人であり,本件画像は原告Bの夫である原告Aが原告らの私生活の一部を撮影した本件動画の一部である。そして,本件画像は,原告Aの著作権を侵害して複製され公衆送信されたものであって,本件投稿の態様は相当なものとはいえず,また,投稿内容に照らし,本件画像の利用について正当な目的や必要性も認め難い。これらの事情を総合考慮すると,本件画像の利用行為は,社会生活上受忍すべき限度を超えるものであり,原告Bの権利を侵害するものであると認められる。 したがって,本件投稿によって原告Bの肖像権が侵害されたことが明らかであると認められる。

▶令和31223日東京地方裁判所[令和3()21014]
1 争点1-1(本件投稿1及び2により原告の肖像権が侵害されたことが明らかといえるか)について
(1) 人の肖像は,個人の人格の象徴であって,当該個人は,人格権に由来するものとして,その肖像をみだりに利用されない権利を有しているというべきである。
そして,当該個人の社会的地位,活動内容,肖像利用の目的,態様,必要性等を総合考慮して,当該個人の人格的利益の侵害の程度が社会通念上受忍の限度を超える場合には,当該個人の肖像の利用は,肖像権を侵害するものとして不法行為法上違法となると解される。
(2) これを本件についてみるに,証拠によれば,本件投稿記事1を含む本件各投稿記事が投稿された本件投稿サイトに立てられたスレッドには,冒頭に,「通称A。実際は思いっきり芋くさい面長顔のそのへんにいる凡顔おばさん。それをアプリで別人加工し盛れる自撮りが大好き。」などとの説明がされ,本件投稿サイトには,匿名の者により,原告を対象とする内容のコメントが多数投稿されており,「親ばかり着飾って子供が貧乏くさい格好している家族って居るよね」,「もうここまできたら,死ぬまで見え張らないと生きていけなくなるね(笑)一種の病気ですね(笑)…顔も容姿も加工(笑)」などの投稿がされており,本件投稿サイトは,原告の容姿や原告のSNS上の投稿記事の内容等に対して誹謗中傷,揶揄する内容の記事が多数含まれていることが認められる。そして,本件投稿記事1は,原告と原告の家族が写っている本件写真1と共に,「長女だけ貧乏かよ」とのコメントが付されており,かかるコメントは,原告に対し,原告や原告の夫だけが着飾り,子供の衣服には構わず,貧しげな恰好をさせる母親であることを指摘して,原告の生活や育児の仕方を誹謗中傷する趣旨のものと認められる。また,本件投稿記事2は,原告とその友人が写っている本件写真2と共に「顔の大きさ統一してあげてよ」とのコメントが付されているところ,原告の顔の大きさが原告の友人らに比べて大きいことを指摘し,かつ,原告が自身が写っている写真を加工することを好んでSNS等に掲載していることを指摘して,原告の容姿を嘲笑し,原告を誹謗中傷する目的で行われた表現であると認められる。そして,本件写真1は原告自身が,本件写真2は原告の友人が自身のインスタグラム等のSNS上に掲載していたものであることが認められるものの,これをもって,原告の容姿を嘲笑し,原告を誹謗中傷する態様での原告の肖像の利用についてまで原告が承諾していたということはできず,他にこれを認めるに足りる証拠もない。原告の社会的地位や活動内容を考慮しても,本件投稿記事1及び2による原告の肖像の利用は,社会通念上受忍限度を超えてされたものというべきである。
(略)
(4) したがって,本件投稿1及び2により,原告の肖像権が侵害されたことは明らかであるというべきである。
2 争点1-2(本件投稿3により原告の肖像権が侵害されたことが明らかといえるか)について
(1) 前記1で認定したとおり,本件投稿サイトは,原告の容姿や原告のSNS上の投稿記事の内容等に対して誹謗中傷,揶揄する内容の投稿が多数含まれているところ,本件投稿記事3は,原告とその夫が写っている本件写真3とともに,「『うわ!今日めっちゃいい天気! 髪の毛セットして~うんうん俺今日もイケてる! A!化粧できたか?髪整えたか? ハイブランドのネックレスつけたか? よし!肩組んで写真撮るぞ!自然にな!いい夫婦感出せよ! カシャ! よし!A早く加工して加工! これでおけ?おけおけ?いける?背景歪んで無い?よし,投稿するぞ!』『天気のいい朝はテンションあがるね』ってやりとりしてるのかな」とのコメントが付されている。かかるコメントの内容及び本件投稿サイトの性質等に照らすと,本件投稿記事3は,原告が自身の写真を頻繁に加工してSNS上に掲載しているとの事実を指摘した上で,原告を誹謗,揶揄する内容の表現ということができる。そして,本件写真3は,原告の夫によってSNS上に掲載され公表されていたものであることが認められるものの,これをもって,かかる態様での原告の肖像の利用についてまで原告が承諾していたということはできず,原告の社会的地位や活動内容を考慮しても,本件投稿記事3による原告の肖像の利用は,社会通念上受忍限度を超えてされたものというべきである。
(略)
(3) したがって,本件投稿3により,原告の肖像権が侵害されたことは明らかであるというべきである。

▶令和4120日東京地方裁判所[令和3()21013]
本件投稿3について
人の肖像は,個人の人格の象徴であるから,当該個人は,人格権に由来するものとして,これをみだりに利用されない権利を有する。そして,当該個人の社会的地位・活動内容,利用に係る肖像が撮影等されるに至った経緯,肖像の利用の5 目的,態様,必要性等を総合考慮して,当該個人の人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超える場合には,当該個人の肖像の利用は肖像権を侵害するものとして不法行為法上違法となると解される。
本件投稿3は,スレッドタイトル「インスタX‘-2 X‐22」に係る50番目の投稿である。
同スレッドの冒頭には,本件投稿2についてのスレッドの冒頭と同一の文言[注:「通称X“。実際は思いっきり芋くさい面長顔のそのへんにいる凡顔おばさん。それをアプリで別人加工し盛れる自撮りが大好き。(顔に映る実像をどうやって脳内変換しているのか教えてくれw)主な収入源は詐欺ステマ。フォロワーを騙しても心痛むことなくブランド品を買い漁りたいがためにステマステマステマのオンパレード。(ステマをしないとエルメスもカルティエも買えません!)上品ぶっていても発言される内容は口が悪いし何様発言が多くてほんとイタイ・・・・・・・・・・・・・・・・突っ込みどころ満載なおもしろX“さんのファンスレをぜひ楽しんでw」との記載をさす]が掲載されており,本件投稿2のスレッドと同様に,スレッド自体が原告の容姿を中傷,揶揄することを目的として設けられたものと認められる(なお,スレッドのタイトルからすると,同様のスレッドが,他に少なくとも21個存在することがうかがえる。)。そして,実際に,同スレッドについての本件投稿3よりも前の投稿も,原告の容姿を中傷,揶揄する投稿が繰り返し行われている。本件投稿3では,原告の横顔が三日月に似ている,鼻を整形していることが明らかであるとの内容の否定的なニュアンスのコメントを付した上で本件写真3を投稿しており,本件投稿3はもっぱら原告の容姿を揶揄するものであることが認められる。
そうすると,原告が多数のフォロワーを有するインスタグラマーであり,原告自身が原告写真3を自身のインスタグラムに掲載し,インスタグラムにおいて同写真が広く一般に閲覧されることを想定し,許容していたことを考慮しても,上記のとおり,電子掲示板上のもっぱら原告を中傷し,揶揄することを目的とし,実際に原告の中傷と揶揄であふれているスレッドにおいて,その一環として自身の容姿が写っている本件写真3が掲載されることは,原告の社会生活上の受忍限度を超えるものであると認めるのが相当である。
よって,本件投稿3は原告の肖像権を侵害することが明らかであると認められる。

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