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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

プライバシー権・人格権・肖像権・名誉権▶個別事例③(肖像権侵害の否認事例)

▶令和4719日東京地方裁判所[令和2()33192]▶令和5419日知的財産高等裁判所[令和4()10077]
肖像権侵害の成否について
肖像は、個人の人格の象徴であるから、当該個人は、人格権に由来するものとして、みだりに自己の容ぼう等を撮影等されず、又は自己の容ぼう等を撮影等された写真等をみだりに公表されない権利を有すると解するのが相当である (最高裁昭和44年12月24日大法廷判決、最高裁平成17年11月10日第一小法廷判決、最高裁平成24年2月2日第一小法廷判決各参照)。他方、人の容ぼう等の撮影、公表が正当な表現行為、創作行為等として許されるべき場合もあるというべきである。そうすると、肖像等を無断で撮影、公表等する行為は、撮影等された者(以下「被撮影者」という。)の私的領域において撮影し又は撮影された情報を公表する場合において、当該情報が公共の利害に関する事項ではないとき、公的領域において撮影し又は撮影された情報を公表する場合において、当該情報が社会通念上受忍すべき限度を超えて被撮影者を侮辱するものであるとき、公的領域において撮影し又は撮影された情報を公表する場合において、当該情報が公表されることによって社会通念上受忍すべき限度を超えて平穏に日常生活を送る被撮影者の利益を害するおそれがあるときなど、被撮影者の被る精神的苦痛が社会通念上受忍すべき限度を超える場合に限り、肖像権を侵害するものとして、不法行為法上違法となると解するのが相当である。
これを本件についてみると、証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件写真は、元プロテニス選手で当時社会的地位もあった原告が、いずれも、著名人と並んで笑顔で握手等をしている場面を撮影したものであるから、公的領域において撮影されたものと認めるのが相当である。そして、本件写真の上記の内容によれば、原告を侮辱するものではなく、【また、控訴人[注:原告のこと]によれば、本件写真はいずれも控訴人のブログにおいて公開されていたと思われるとのことであり、そうであれば、本件写真の内容は相当程度の範囲の者に知られていたものといえる上、控訴人も本件写真が広く公開されることを許容していたものといえることからすれば、本件写真が本件雑誌に掲載されることにより、】平穏に日常生活を送る原告の利益を害するものともいえない。仮に、本件写真が私的領域において撮影されたものと認定したとしても、証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件写真は、原告と著名人との親交を示すものであり、A(丙)をして原告が億単位の出資をするに足りる人物であると思わせて、A(丙)が原告に出資する理由の一つとなったものと認められることからすると、本件写真は、原告が社会的に強い非難の対象とされる行為を犯した旨を摘示する本件記事を補足するものであるから、公共の利害に関する事項であるといえることは明らかである。そうすると、仮に上記のとおり認定したとしても、上記の結論を左右するものとはいえない。
したがって、被告が本件写真を原告に無断で本件雑誌に掲載する行為は、肖像権を侵害するものとして不法行為法上違法であるということはできない。
以上によれば、肖像権侵害をいう原告の主張は、採用することができない。
[控訴審同旨]

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