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カネダ著作権事務所
著作権判例エッセンス
著作権の制限>引用▶適法引用の要件①(引用の意義/公表性/明瞭区別性)
[引用の意義]
▶昭和55年3月28日最高裁判所第三小法廷[昭和51(オ)923]
(旧)法30条1項2[(注)現32条1項に相当]は、すでに発行された他人の著作物を正当の範囲内において自由に自己の著作物中に節録引用することを容認しているが、ここにいう引用とは、紹介、参照、論評その他の目的で自己の著作物中に他人の著作物の原則として一部を採録することをいうと解するのが相当であるから、右引用にあたるというためには、引用を含む著作物の表現形式上、引用して利用する側の著作物と、引用されて利用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができ、かつ、右両著作物の間に前者が主、後者が従の関係があると認められる場合でなければならないというべきであり、更に、(旧)法18条3項[(注)現50条に相当]の規定によれば、引用される側の著作物の著作者人格権を侵害するような態様でする引用は許されないことが明らかである。
[公表性]
▶令和3年12月22日知的財産高等裁判所[令和3(ネ)10046]
⑴ 著作権法32条1項は,「公表された著作物は,引用して利用することができる。」と定め,引用の対象となる著作物の公表を,適法な引用の要件とするところ,前記で引用した原判決の説示するとおり,本件懲戒請求書は,公表されたものと認めることはできないから,その余の点について判断するまでもなく,本件リンクにより本件記事1において本件懲戒請求書を引用することは,同項に該当する適法な引用と認めることはできない。
⑵ この点に関して一審被告Yは,本件懲戒請求書が公表された著作物に該当しなかったとしても,著作権法32条1項該当性を認めるべきであると主張するが,同条項は著作権の個別的制限規定であるから同条項の文言に反してその適用要件を緩和することは相当でなく,引用の対象となる著作物が公表されていない以上,同項該当性を認めることはできないというべきである。
▶平成19年05月31日知的財産高等裁判所[平成19(ネ)10003等]
著作権法32条1項は,「公表された著作物は,引用して利用することができる。」と規定しているところ,本件写真が公表されたものであることについての主張立証はないから,本件写真は「公表された著作物」であるとは認められない。したがって,著作権法32条1項の適用により本件写真の本件書籍への掲載が適法となることはない。
▶平成25年06月28日東京地方裁判所[平成24(ワ)13494]
原告文書2は東京行政書士会における苦情申告手続において提出された苦情申告書であり,原告文書3は,東京弁護士に対する懲戒請求に関し,東京弁護士会綱紀委員会宛てに提出された答弁書であるところ,いずれの手続も,担当委員会内における非公開での審理が予定されているものであるから,このような手続において提出された原告文書2及び3について,「発行」(著作権法3条1項)されたものと認めるに足りる程度の複製物の作成及び頒布(公衆の要求を満たすことができる相当程度の部数の複製物の作成及び頒布)がされたものとは認められない。また,上記のとおり各手続が非公開とされていることに照らし,原告文書2及び3が,原告又はその許諾を得た者によって公衆送信等の方法で公衆に提示されたものとも認められない。そうすると,原告文書2及び3は,いずれも「公表」(同法4条1項)されたものと認めることができず,「公表された著作物」(同法32条1項)に当たらないから,被告の行為が同法32条所定の引用に当たるものとは認められない。
[明瞭区別性]
▶昭和61年04月28日東京地方裁判所[昭和58(ワ)13780]
著作権法32条1項の趣旨に照らせば、引用が同条に定める要件に合致するというためには、少くとも引用を含む著作物の表現形式上、引用して利用する側の著作物と引用されて利用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができること、右両著作物の内容が前者が主、後者が従の関係にあると認められることを要すると解すべきであり、他人の著作物を自己の著作物としてもしくは自己の著作物と誤解されてしまう体裁で自らの著作物中に取り込むことは、適法な引用ということはできない(。)
▶平成14年04月11日東京高等裁判所[平成13(ネ)3677]
著作権法32条1項を根拠に,公表された著作物の全部又は一部を著作権者の許諾を得ることなく自己の著作物に含ませて利用するためには,当該利用が,①引用に当たること,②公正な慣行に合致するものであること,③報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものであること,の3要件を満たすことが必要であると解するのが相当である。
「引用」に当たるというためには,引用して利用する側の著作物(以下「引用著作物」という。)と引用して利用される側の著作物(以下「被引用著作物」という。)とが,明瞭に区別されていなければならないことは,事柄の性質上,当然である。被引用著作物が引用著作物と明瞭に区別されておらず,著作物に接した一般人において,引用著作物中にその著作者以外の者の著作に係る部分があることが判明しないような採録方法が採られている場合には,そもそも,同条にいう「引用」の要件を満たさないというべきである。
▶平成30年2月21日東京地方裁判所[平成28(ワ)37339]
単に「利用することができる。」ではなく,「引用して利用することができる。」と規定していることからすれば,著作物の利用行為が「引用」との語義から著しく外れるような態様でされている場合,例えば,利用する側の表現と利用される側の著作物とが渾然一体となって全く区別されず,それぞれ別の者により表現されたことを認識し得ないような場合などには,著作権法32条1項の適用を受け得ないと解される。
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