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カネダ著作権事務所
著作権判例エッセンス
著作権の制限>引用▶適法引用の要件③(非著作物への引用の可否/挙証責任/その他の留意点)
[非著作物への引用の可否]
▶平成10年02月20日東京地方裁判所[平成6(ワ)18591]
本条項の立法趣旨は、新しい著作物を創作する上で、既存の著作物の表現を引用して利用しなければならない場合があることから、所定の要件を具備する引用行為に著作権の効力が及ばないものとすることにあると解されるから、利用する側に著作物性、創作性が認められない場合は、引用に該当せず、本条項の適用はないものである。
▶平成22年05月28日東京地方裁判所[平成21(ワ)12854]
著作権法32条1項の立法趣旨は,新しい著作物を創作する上で,既存の著作物の表現を引用して利用しなければならない場合があることから,所定の要件を具備する引用行為に著作権の効力が及ばないものとすることにあると解されるから,利用する側に著作物性,創作性が認められない場合は「引用」に該当せず,同項の適用はないというべきである。
▶平成29年1月12日大阪地方裁判所[平成27(ワ)718]
法32条1項は,公正な慣行に合致し,報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われる限りで,著作権者の許諾を得ることなく,公表された著作物を自己の作品に採録して利用することができるとしているが,その趣旨は,新たな表現行為を行う上で,その内容上,既存の著作物を利用する必要があることを考慮した点にある。
▶平成22年10月13日知的財産高等裁判所[平成22(ネ)10052]
被控訴人は,著作権法32条1項における引用として適法とされるためには,利用する側が著作物であることが必要であると主張するが,「自己ノ著作物中ニ正当ノ範囲内ニ於テ節録引用スルコト」を要件としていた旧著作権法30条1項2号とは異なり,現著作権法32条1項は,引用者が自己の著作物中で他人の著作物を引用した場合を要件として規定していないだけでなく,報道,批評,研究等の目的で他人の著作物を引用する場合において,正当な範囲内で利用されるものである限り,社会的に意義のあるものとして保護するのが現著作権法の趣旨でもあると解されることに照らすと,同法32条1項における引用として適法とされるためには,利用者が自己の著作物中で他人の著作物を利用した場合であることは要件でないと解されるべきものであって,本件各鑑定証書それ自体が著作物でないとしても,そのことから本件各鑑定証書に本件各コピーを添付してこれを利用したことが引用に当たるとした判断が妨げられるものではなく,被控訴人の主張を採用することはできない。
▶平成26年5月30日東京地方裁判所[平成22(ワ)27449]
旧著作権法とは異なり,現行著作権法32条1項における「引用」として適法とされるためには,利用者が自己の著作物中で他人の著作物を利用した場合であることは要件ではないと解すべきである。
[挙証責任]
▶平成30年2月21日東京地方裁判所[平成28(ワ)37339]
当該利用行為が「公正な慣行」に合致し,また「引用の目的上正当な範囲内」で行われたことについては,著作権法32条1項の適用を主張する者が立証責任を負担すると解される(。)
[控訴審も同旨]
▶平成30年8月23日知的財産高等裁判所[平成30(ネ)10023]
著作権法32条1項は,飽くまで著作権行使の制限規定である以上,その適用については,基本的に適用を主張する側が要件充足の主張立証責任を負うものと解するのが相当である。
[その他の留意点]
▶平成30年8月23日知的財産高等裁判所[平成30(ネ)10023]
著作権法32条1項は著作権の制限規定であって,これによって認められる引用はそもそも著作権者の許諾がなくとも適法とされるのであるから,適法引用に当たるかどうかを判断するのに当たって,権利者が著作物の利用を許諾したかどうかや,許諾しなかった場合のその理由が考慮の対象になる余地はないというべきである。
▶平成7年12月18日東京地方裁判所[平成6(ワ)9532]
編集物の素材として他人の著作物を採録する行為は、引用に該当する余地はないものと解するのが相当である。即ち、著作権法32条1項の第一文は、「公表された著作物は、引用して利用することができる。」と定めているから、引用した側の著作物の複製等の利用の際に必然的に生ずる引用された著作物の利用に、その引用された著作物の著作権は及ばないことは明らかである。
これに対し、同法12条は、1項において、データベースに該当するものを除く編集物でその素材の選択又は配列によって創作性を有するものは、著作物として保護する旨を定めた上、2項において、「前項の規定は、同項の編集物の部分を構成する著作物の著作者の権利に影響を及ぼさない。」と定めているから、1項の要件を充足し著作物として保護されるいわゆる編集著作物の複製等の利用の際に必然的に生ずる編集物の部分を構成している素材の利用に、その素材の著作物の著作権が及ぶことを意味することも明らかである。してみると、編集物の素材として他人の著作物を採録する行為を引用にあたるものとして、編集物の複製等の利用の際の素材の著作物の利用に、その著作権が及ばないものとする余地はないものというべきである。
▶平成24年09月28日東京地方裁判所[平成23(ワ)9722]
本件においては,引用する側の表現であると主張する本件記者会見における(配布資料を含む)説明,批判,反論等と被告が引用される表現であると主張する本件各霊言及びその活字起こしファイルとは,同時ではなく1日又は数日の時間的間隔を置いて伝えられたものであり,また伝達媒体としても異なるところから,これらを理由として,著作権法32条1項の「引用」に当たらないと解する余地もあると考えられるが,以下においては,仮に「引用」に当たるものとして,同項の他の要件について検討する。
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